『earth.nullschool.net』より台風12号の可視化された風速(元画像はアニメ動画。2019年10月12日19時00分現在)

狩野川台風級 19号 直撃。
それぞれの「防災行動計画」

大型台風第19号に備えよ――
15号の反省、計画運休からマイ・タイムラインまで、台風余波

【 2つの台風からの教訓のルーティン化で今後の備えに 】

タイトルカット画像:『earth.nullschool.net』に見る台風19号の伊豆半島上陸時点の可視化された風速(2019年10月12日19時00分現在)。同サイトでは、地球上のあらゆる場所の風・海流・気温・湿度・水温・大気汚染状況などが3時間ごとに可視化される

『earth.nullschool.net』

異例の急発達台風が中部・関東・東北に大雨をもたらし、駆け抜けた

 台風第19号は10月12日19時前に大型で強い勢力で伊豆半島に上陸した後、関東地方を通過し、13日未明に東北地方の東海上に抜けた。台風本体の発達した雨雲や台風周辺の湿った空気の影響で、静岡県や関東甲信地方、東北地方を中心に広い範囲で記録的な大雨となった。10日からの総雨量は神奈川県箱根町で1000mmに達し、関東甲信地方と静岡県の17地点で500mmを超えた。

 この記録的な大雨により、気象庁は大雨特別警報を、12日15時30分に静岡県、神奈川県、東京都、埼玉県、群馬県、山梨県、長野県の7都県に、続いて12日19時50分に茨城県、栃木県、新潟県、福島県、宮城県の5県、13日0時40分には岩手県に発表した。東京都江戸川臨海では観測史上1位の値を超える最大瞬間風速43.8mを観測するなど、関東地方の7カ所で最大瞬間風速40mを超える暴風となったほか、東日本から北日本にかけての広い範囲で非常に強い風を観測した。また、12日には千葉県市原市では竜巻とみられる突風が発生した。石廊崎では13mを超える波高を観測するなど猛烈なしけとなった。また、静岡県や神奈川県、伊豆諸島では、過去最高潮位を超える記録的な高潮を観測した……

 以上は、内閣府「防災情報のページ」にある非常災害対策本部発表の「令和元年台風第19号に係る被害状況等について」(10月13日13時現在)からの引用・要約である。
 台風19号(アジア名:ハギビス/Hagibis、命名:フィリピン、意味:すばやい)は、10月6日3時にマリアナ諸島の東海上で発生、フィリピン語の名前どおり、急速に発達して大型で強い台風になった。ちなみに気象庁は台風の勢力を、風速(10分間の平均)をもとに「強さ」と、風速15m以上の強風域の「大きさ」で区分している。風速33m以上になると「強い台風」、44m以上は「非常に強い台風」、54m以上は「猛烈な台風」となり、強風域が半径500km以上を「大型」、800km以上を「超大型」と表現する。

 台風はその後急速に発達し、7日18時には、同時刻までの24時間の気圧低下77hPa(ヘクトパスカル)を記録。発生からわずか39時間で中心気圧915hPaとなり、「猛烈な勢力」に発達した。勢力を維持したまま小笠原諸島に接近、10日21時に「非常に強い勢力」へ、12日18時に「強い勢力」となって同日19時前に静岡県伊豆半島に上陸した。
 その後は関東地方と福島県を縦断、13日12時に三陸沖東部で温帯低気圧に変わった。

P2 1b 10月12日21時27分、「気象特別警報発表中」(気象庁資料より) - 台風19号 「反乱」する河川 VS. それぞれのタイムライン
気象庁 台風19号 特別警報発表 状況

気象庁の警戒呼びかけが奏功? 連休週末もあって市民の備えも

 気象庁は10月9日に早期警戒を呼びかける第1報を発出して以降、連日、警戒を呼びかけ、10月11日の臨時の記者会見では「狩野川(かのがわ)台風に匹敵する記録的な大雨となる」おそれもあるとした。
 政府は、10月8日13時に情報連絡室を設置。以後関係閣僚会議を実施、12日15時30分、情報連絡室を官邸対策室に改組、安倍晋三首相は関係閣僚に指示を行った。13日、非常災害対策本部に改組した。内閣府は10月8日13時に情報連絡室を設置。関係都道府県に災害救助法関連情報などの通知を発出、災害救助法は13日13時現在、1都12県の自治体に適用されている。

 台風19号は広域で河川の氾濫、土砂災害ほか、風水害のあらゆる被害を発生させ、被害は現在も拡大中であり、河川氾濫地ではいまも人命救助が続けられている。人的被害は、直近の報道(NHKニュース/14日12時)によれば、37人死亡、17人行方不明となっている。また、河川の決壊は21河川24カ所、越水は延べ142河川(13日20時56分)となっており、まさに広域・ゲリラ的”河川の反乱”の様相を呈している。
 台風19号は、台風15号(去る9月9日上陸)の主な被災地である千葉県南房総にとっては1カ月に2度目の台風の襲来で、屋根に張られていたブルーシートの多くがはがれるなど再び大きな影響を及ぼしている。まさに自然災害の過酷な側面であり、人間社会の都合などはまったく関係がないのだ。ちなみに、台風19号が伊豆半島に上陸する寸前の12日午後6時22分頃、千葉県南東沖を震源とする最大震度4(千葉県鴨川市)の地震が発生、東京区部も震度3を観測した。台風と地震という同時多発の複合災害を想起させるできごとではあった。

 このように、上陸前から社会を不安に陥れ、大雨・暴風で脅かし、通過中・通過後も被害を拡大させている台風19号の災禍ではあったが、台風15号からひと月の首都圏では、台風19号の襲来がたまたま連休となる週末であったこともあって、15号からの教訓を活かす試み――交通機関のタイムライン(防災行動計画)実施の改善や、職場・家庭レベルでの備えも行われたようである。
 関東甲信地方を発着する公共交通機関、空港などを中心に、広く計画運休が実施された。 また鉄道関係では運行再開についても被害確認後の発表とすることで、台風通過後の混乱を避けるべく周知を図っていた。

P2 2a ウェザーニューズ『台風19号被害リスク予測』広報資料より - 台風19号 「反乱」する河川 VS. それぞれのタイムライン
ウェザーニューズの実証実験より (出所:同ニュースリリース)

2つの台風の教訓をルーティン化しよう 民間の取組み事例から

 台風19号被害が進行中であることから、本紙ではその被害概要の詳細や検証は後の検証記事に譲ることとし、本号では視点を変え、この2つの台風から見え始めた「台風教訓のルーティン化」を取り上げてみよう。
 株式会社ウェザーニューズ(千葉市)は、東海から関東への直撃が予想されている台風19号による被害を最小限とするため、スマホアプリ「ウェザーニュース」で、台風19号による身の回りの被害リスクを事前に知らせる『台風19号被害リスク予測』の配信を開始した。その有効性は台風15号ですでに停電リスクの予測が評価されているが、『台風19号被害リスク予測』では、生活レベルにおける具体的な被害リスクがわかるよう、停電をはじめ、家屋への影響、徒歩移動における飛来物によるけがや道路冠水の可能性、車移動における車両の横転や車の浸水のおそれなど、台風19号の暴風・大雨による被害の可能性を一覧で確認できる。
 被害予測は浸水想定区域・低位地帯などの地形情報と、これまでに届いたウェザーニュース会員からの台風被害報告、そして今後の気象予測に基づき、ウェザーニュースが独自に分析、作成したもの。周辺の被害リスクを把握することで、台風による被害を少しでも軽減できる可能性があり、事前の台風対策に役立てられる。

>>ウェザーニューズ:『台風19号被害リスク予測』を配信開始

 ウェザーニューズはまた、トヨタ自動車株式会社と、ウェザーニューズが持つ気象データとトヨタのコネクティッドカー(インターネットへの常時接続機能を備えた車)から得られる車両データを活用して、気象観測・予測精度の向上やドライバーの安全、車両被害軽減をめざす共同研究の一環として、道路冠水のリアルタイム検知に関する実証実験を東京都・大阪府・愛知県の3都府県を対象に、10月より開始した。
 両社は今夏、車両データと気象データを学習させた冠水検知のAIアルゴリズムを開発、昨年夏に都内で発生したゲリラ豪雨を対象にした事例検証では、車両が通行した道路で、車両の故障や立ち往生につながる深さの冠水箇所の推測に成功している。実証実験では、アルゴリズムをより広域の道路で検証し、さらなる精度の向上をめざす。なお、実証実験期間中、対象地域において冠水を伴う大雨が予想される際には臨時サイトをオープンし、推測された冠水箇所をリアルタイムで公開する。ちなみに、台風19号でも同サイトは稼働したようだが、まだ実装とまではいかないようだ。しかし、気象データとコネクティッドカーから得られる知見を「いざという時に役に立つ」情報として社会に還元すること、そしてその結果として、ドライバーのさらなる安全に寄与することが期待される。

>>ウェザーニューズ:道路冠水リアルタイム検知の実証実験を開始

 大型台風19号の接近を受けて、「タイムライン」実施の一環で各種団体・企業によるイベントの中止・延期や店舗などの臨時休業が目立った。そうしたなかで、団体・企業を主な顧客としてプレスリリース(広報)配信サービスを提供する株式会社PR TIMES(東京都港区)が、備えや対策、安全確保のために寄与するとして、台風19号の接近に関連したプレスリリースについて、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」の利用を無料とした。企業、団体問わず、また、これまでの同サービスの利用有無を問わずに活用できるというもの。すでに配信された利用企業には、遡及して無料とした。

 無料の対象は、台風19号接近によるイベント開催中止、延期に関する情報、台風19号接近による休業、営業時間変更に関する情報、台風19号接近によるサービスの提供内容変更に関する情報、台風19号接近に伴う避難に関連した情報、台風19号接近に伴う公共公益設備や、通信設備、交通、物流など日常生活を送るうえで必要な諸設備に関する情報など。

>>PR TIMES:台風19号の接近に伴うプレスリリースについて「PR TIMES」を無料提供

P3 2 シェアダインが公開した災害食レシピ - 台風19号 「反乱」する河川 VS. それぞれのタイムライン
台風に伴うライフラインの遮断に備え、シェアダインシェフが考案した「災害食」

 この「PR TIMES」の“特例”を利用して、出張シェフサービスの株式会社シェアダイン(SHAREDINE/東京都港区)は台風19号接近に伴う臨時休業のお知らせを「PR TIMES」で配信したが、その“ついで”に、台風に伴うライフラインの途絶に備え、シェアダインシェフが考案した「災害食レシピ」をプレスリリースで公開した。

>>シェアダイン:シェアダインシェフ考案の「災害食レシピ」公開

 いっぽう、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワン(東京都千代田区)は台風19号への対策を伝える『4コマですぐわかる 新みんなの防災ハンドブック』の一部を無料公開し、「PR TIMES」でその情報を配信した。

>>『4コマですぐわかる 新 みんなの防災ハンドブック』(ダウンロードページ)

〈2019. 10. 15. by Bosai Plus

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