適切な治療を受けていれば救えた人の死
――布施明・日本医科大教授が定義

 内閣府や東京都による被害想定では、人的被害発生の要因として①建物の倒壊、②火災、③津波、④地盤被害、などを挙げ、発生直後から72時間に停電やシステム障害、断水、燃料不足、病気・ストレス、広域災害、複合災害などが起きるとされる。

P4 4 NPO法人ピースウィンズ・ジャパン「野外病院のイメージ」より - 「未治療死」とは
NPO法人ピースウィンズ・ジャパン「野外病院のイメージ」より

 南海トラフ巨大地震で被災した各都府県の医療機関では、建物被害やライフライン機能などの障害が発生し、対応がむずかしくなる患者は最大で入院が約12万人、外来が約13万人にのぼるとされる(内閣府「南海トラフ巨大地震の被害想定について」/2019年6月)。
 しかし、そうした想定には、「直接死を免れた負傷者で適切な医療が受けられずに急性期に死に至るケース」には触れられていない。

 そこで日本医科大の布施明教授(災害医療)の研究チームは、それを「未治療死」と定義して、独自に開発した災害医療活動シミュレーションシステムを使って分析した。その試算によれば、「未治療死」は首都直下地震で「約6200人」、南海トラフ巨大地震では「約8万人」という膨大な数字になるという――

ARROWS:首都直下地震と南海トラフ巨大地震発生時の未治療死

〈2025. 02. 21. by Bosai Plus

コメントを残す