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障がいを乗り越える新たな解決策への取組み

明成孝橋美術が推進する「社会課題を解決する印刷製品」をテーマに

《本紙特約リポーター:片岡 幸壱》

①佐藤ゼミ生の皆さんの集合写真 1024x768 - Sカレ2024<br>甲南大学佐藤ゼミ【sesame】<br>× 明成孝橋美術
佐藤ゼミ生の皆さんの集合写真

 甲南大学経営学部・佐藤圭ゼミに所属する学生3人が【sesame】のチーム名で「災害時の迅速な避難とコミュニケーションを助ける、聴覚障がい者のためのサポートウェア」をコンセプトにした商品企画に半年間取り組んだ。

 これは、株式会社明成孝橋美術(めいせいたかはしびじゅつ/大阪市)が推進する「社会課題を解決する印刷製品」をテーマに、未来のマーケターを育成する趣旨で企業と学生が共同で新商品開発に取り組む大学ゼミ対抗のインターカレッジ「Sカレ」(Student Innovation College)に向けた取組みのひとつ。

 2024年は30大学37ゼミ506名の3回生による159チームが参加。ゼミ対抗で12テーマの商品企画をFacebookで公開し、「いいね!」で支持を集め、コメントで改善し、発売をめざす。
 10月5日に「秋カン」(法政大学主催のオンライン・カンファレンス)でコンセプトを競い、12月14日に「冬カン」(会場は福岡大学)で商品化権を最終プランで競い合い、翌年の「秋カン」で発売実績に基づき総合優勝を争奪する。

■ チームの取組み、インタビュー、発表――
 ピクトグラムを採用した「ゆびナビウェア」を考案

 チーム名の【sesame】(セサミ)は、アラビアンナイトに登場する「Open sesame seeds!」(開けゴマ!)という呪文から取った。困難や障がいを乗り越えるための新たな解決策を発見し、社会に貢献したいという思い、またメンバーの名前の頭文字が入っていることも含めて名前を決定した。
 国内で災害が増加している現状を受け「防災」について、阪神・淡路大震災記念人と防災未来センターや兵庫県立聴覚障害者情報センターへの訪問調査を進めるなかで、要配慮者が避難時に補助を求めにくい状況を知って、この課題に取り組むことになった。

②佐藤ゼミ生の学生さんと(右:片岡)1回目のインタビュー 1024x806 - Sカレ2024<br>甲南大学佐藤ゼミ【sesame】<br>× 明成孝橋美術
佐藤ゼミ生の学生さんと(右:片岡)1回目のインタビュー

 阪神・淡路大震災をきっかけに防災の知識や技能を持つ人材を養成するために創設された民間資格「防災士」を持つ聴覚障がい者・片岡(本稿リポーター)や、聾の人1人に2回インタビューを実施し、アドバイス・フィードバックした。また明成孝橋美術の訪問・ミーティングも2回行った。
 その成果として、障がい者用ゼッケンとコミュニケーションボードの要素を組み合わせた「ゆびナビウェア」の商品を考案した。紙の両面に避難時・避難所で「身振りで教えてください」など様々な場面のピクトグラム(情報や注意を示すために表示される案内記号)が記載されていることなどが特徴だ。

 「冬カン」の発表では「顧客や企業とのコミュニケーション、企画の独自性・実現可能性、プレゼンの完成度」を評価基準として審査が行われ、【sesame】チームは惜しくも1位を獲得するには至らなかった。しかし、「阪神・淡路大震災から30年が経ち、さらに地震が頻発する今の時代だからこそ、障がい者向け防災対策の重要性を感じた。災害時だけでなく、日常生活における安心感の追求が高く評価できる商品案だった」など、審査員からの高く評価するコメントがあった。

■「Sカレ2024」を終えて
 『福祉・防災』の視点でさらにさまざまなアイデアを

 【sesame】のチームメンバーはこの結果を受けて、次のように語っている。
 一宮咲季さん(甲南大学経営学部3回生)は「社会の困りごとに自ら目を向けていくことの大切さ、そして人びとの役に立つ商品・サービスを生み出す難しさを学んだ。親身になって話してくださる防災士の方や各施設の職員の方にお話を聞くなかで、聴覚障がいを持っている人たちの不安や難しさは、その方たちにとって日常であることを改めて感じた。社会人を志す立場として『誰もが安心した日常を送るためのモノを形にすること』を目標に今後も励んでいきたい」。

 北川詠子さん(甲南大学経営学部3回生)は「普段意識する機会の少なかった防災や聴覚障がいについて深く考えるきっかけとなった。優勝に至らなかったのは残念だが、企画を通して多くの知識が得られ、貴重な経験を積むことができたと思う。この学びを今後の成長や活動に活かしていきたい」。

 名村彩花さん(甲南大学経営学部3回生)は「聴覚障がいの方がたの日常や緊急時のニーズに寄り添い、より実用的で役立つ製品づくりをめざす大切さを痛感した。また防災士の方がたから現場のリアルな意見をいただくなかで、自分たちでは気づけなかった新たな視点を得られた。優勝は叶わなかったが、この取組みで得た学びを大学生活、さらには社会に出ても活かしていきたいと思う」。

③佐藤ゼミ生の学生さんと(右から2番目:片岡)2回目のインタビュー 1024x630 - Sカレ2024<br>甲南大学佐藤ゼミ【sesame】<br>× 明成孝橋美術
佐藤ゼミ生の学生さんと(右から2番目:片岡)2回目のインタビュー

 インタビューに協力した本紙・片岡は、「聴覚障がいの日常生活で困ること・感じていることが伝わったと思う。また商品案についていろいろ考えることができてよかった」、「今後、阪神・淡路大震災を体験していない学生さんから、『福祉・防災』の視点でさらにさまざまなアイデアが出てくることを期待したい」と感じた。

※掲載写真については主催者の掲載承諾を得ています(片岡幸壱、編集部)。

▽本紙特約リポーター:片岡 幸壱
神戸市在住。中学2年のとき阪神・淡路大震災に遭遇、自宅は全壊したが家族は全員無事避難。学生時代より取り組んでいる防災を仕事と両立しながら、ライフワークとして、ユニバーサルデザイン(UD)などのイベント・ボランティア参加を続けている。聴覚障がいを持つ防災士としても活躍中。

▼参考リンク:
甲南大学

・甲南大学 経営学部 佐藤ゼミ instagram

・甲南大学佐藤ゼミ×明成孝橋美術【sesame】 Facebook

・株式会社 明成孝橋美術

Sカレ

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