令和6年能登半島地震 建築物構造被害の原因分析
「中間とりまとめ」―“新耐震”改修の有効性を確認
「地震地域係数」の見直しが視野に…
国土交通省国土技術政策総合研究所(国総研)と国立研究開発法人建築研究所(建研)による令和6年能登半島地震における建築物構造被害の原因分析を行う委員会の「中間とりまとめ」が公表された。木造建築物、鉄筋コンクリート造等建築物、基礎地盤、鉄骨造建築物等の被害の特徴と要因の分析、分析を踏まえた対策の方向性をとりまとめたもの。
■ 令和6年能登半島地震の概要
▽地震の規模:2024年1月1日に発生した能登半島地震は、最大震度7を観測。この地震は、能登半島北側の海底に存在する活断層がもたらした内陸地震。
▽建物被害:この地震では、多くの建物が倒壊し、特に木造建築物の被害が顕著だった。いっぽう、新耐震基準導入以降の木造建築物は、倒壊・崩壊の防止に効果的であった。
▽津波の影響:能登半島地震では津波被害も確認された。特に珠洲市では、多くの建物が津波によって流失し、外壁や開口部の損傷が見られた。
▽液状化現象:内灘町やかほく市では、液状化現象による地盤変状と住宅への大きな被害が確認された。
▽耐震改修の効果:耐震改修を行った建物では、倒壊や崩壊の被害が確認されず、耐震改修の有効性が確認された。特に免震構造の建物では、構造体の損傷が防止され、機能継続が可能であった事例が報告されている。
■ 被害状況・要因分析
△木造建築物の被害
木造建築物の被害は、建築時点における耐震基準の違いによる傾向が見られた。特に、1981年以前の旧耐震基準の建物は倒壊・崩壊の割合が高く、新耐震基準導入以降の建物は被害が少ないことが確認された。2000年以降の建物では、接合部の仕様が明確化されたことにより、倒壊率がさらに低くなっている。
△鉄筋コンクリート造建築物の被害
鉄筋コンクリート造建築物では、柱のせん断破壊や柱はり接合部の破壊が確認された。特に、1984年以前に建設された建物では、杭基礎の短期荷重に対する設計が不十分であったため、転倒被害が発生した。
△基礎・地盤の被害
内灘町やかほく市では、液状化による地盤変状と住宅への大きな被害が確認された。特に、砂丘と干拓地の境界部に位置する地域で顕著だった。これらの地域では、杭状改良による傾斜被害を免れた事例もあった。
■ 調査結果を踏まえた総括
○木造建築物の耐震安全性の確保
旧耐震基準の木造建築物は、新耐震基準導入以降の建物と比較して高い倒壊率を示した。新耐震基準は、旧耐震基準と比較して、今回の地震に対する倒壊・崩壊の防止に有効であったと認められる。
木造建築物の倒壊率は旧耐震基準が19.4%。新耐震基準は5.4%、さらに強化された2000年6月基準では0.7%。能登半島での木造建築物の耐震化率は50%未満で、全国の耐震化率は90%近いことから、一層の耐震化を図る。
○鉄筋コンクリート造建築物の耐震安全性の確保
旧耐震基準の鉄筋コンクリート造建築物では柱のせん断破壊や柱はり接合部の破壊が確認された。杭基礎の短期荷重に対する設計が不十分で、転倒被害が発生した。
○地震地域係数と建築物被害
新耐震基準導入以降に地震地域係数を用いて建築された建物については、地震地域係数を要因とする倒壊等の被害は確認されていないが、地域の地震活動に応じて建物の耐震強度を割り引く「地震地域係数」を、全国一律にすることも含め見直すことを検討。
国土交通省:令和6年能登半島地震 建築物構造被害の原因分析「中間とりまとめ」
〈2024. 11. 20. by Bosai Plus〉