P1 『防災新視点』HPより 781x350 - 「防災新視点」に応募しよう!

例えば、避難所の「少女」へのケア
例えば、災害関連死は「人災」…

岩手日報、福島民報、電通の「防災 新視点」募集プロジェクト、
あなたの応募が新視点

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■ 当然のことながら災害教訓には事欠かない、しかし…
■ 災害は想定内でも想定外でも起こる、しかし…
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P1/P2 1 『防災新視点』HPより - 「防災新視点」に応募しよう!
『防災新視点』HPより。岩手日報社(岩手県盛岡市)、福島民報社(福島市)、電通の3者が、備えるべきなのに見落とされている防災上の課題などを全国から募集する企画「防災新視点」の提案を専用サイトで来年・2025年1月31日まで受け付けている。結果は、2月以降にサイト上で順次発表、3月24日に東京都内で開く「防災新視点サミット」で展示する予定。まるで本紙読者の応募を期待するかのようなプロジェクトでは……(画像クリックで『防災新視点』HPへ)

 「災害は夜にも起こるのに、避難訓練は昼だけだった」、「ご近所付き合いは、もしもの時に命を救う」、「プライバシーのない『段ボール雑魚寝』は、先進国で日本だけ」、「女性は避難所で下着を干しづらい」、「防災バッグの中身、33%は期限切れ」、「エレベーター内での被災。そこにトイレはない」、「災害の少ない国から来た人は、避難訓練の経験がない」、「小学校の避難訓練、生徒がつくれば自分ごと化する」、「カギを置かずに逃げると、車は救命の妨げになる」……

 これらの“視点”は、「備えられてない視点が、防災を強くする」という「防災新視点プロジェクト」ホームページに掲げられた“新視点”の事例だ。同プロジェクトを主催するのは、株式会社岩手日報社(岩手県盛岡市)、株式会社福島民報社(福島市)、株式会社電通(東京都港区)の3者。
 備えるべきなのに見落とされている防災上の課題などを全国から募集する企画「防災新視点」の提案を専用サイトで来年・2025年1月31日まで受け付け、2月以降にサイト上で順次発表、3月24日に東京都内で開く「防災新視点サミット」で展示する予定となっている。

 同プロジェクトでは、世の中に十分広まっていない防災対策の考え方や課題、解決事例などの新視点に重きを置いて提案を募集する。応募は、専用サイトを通じて、名前や所属、メールアドレスを明らかにしてエントリーして「新視点」提案を応募する。

防災新視点:備えられてない視点が、防災を強くする。防災新視点

 主催3者が合同で推進する「災害から国民の『命』を守るプロジェクト『未来防災イニシアチブ(Future Bousai Initiative)』(2024年3月11日始動)」の一環企画でもある。
 『未来防災イニシアチブ(Future Bousai Initiative)』は、過去の災害経験から見えた課題をもとに、より多くの国民の命を守るための新しい制度や習慣、仕組み、サービスの創造を目的に、東日本大震災での被災経験がある福島民報と岩手日報を中心に立ち上げられた。新聞社、民間企業、自治体、学校など広く参加企業・団体を募り、防災に関する発信などを通じて地域ごとの課題解決をめざす趣旨となっている。

P2 2 「Future Bousai Initiative」のイメージ図 - 「防災新視点」に応募しよう!
「Future Bousai Initiative」のイメージ図

災害から国民の「命」を守るプロジェクト「Future Bousai Initiative」始動

 わが国はこれまでさまざまな災害の経験から、当然のことながら災害教訓に事欠かない。しかしそれでも、不意を突いて起こる災害は常に社会の脆弱性を狙い、“想定外”とされる側面(被害要因)を私たちの目の前に晒す。ならば、未然に備えるべきなのに見落とされている防災の課題はもとより、防災対策(災害への備え)における新発想など、事前の新しい視点での備えが必要となる。

 『未来防災イニシアチブ(Future Bousai Initiative)』は、備えるべきなのに見落とされている課題や、世の中に十分に広まっていない防災対策における考え方、誰かにとっての「いい気づき」となる事例・ナレッジなどを全国から集め、それらを「防災新視点」としてまとめ、公式サイトや「防災新視点サミット」における展示を通して、防災の主流化を志す社会で共有するプロジェクトだ。
 「防災新視点」は全国の新聞社41社42紙の協力も得ており、この企画を通して、企業や行政から防災啓発や防災教育に関するさまざまなアクションが生まれ、各地域の防災力が向上していく未来をめざす、としている。

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■ 国策の視点では総論的な「45の最悪の事態」も
■ 市民防災・地域防災、人権保護の視点では「スフィア基準」と照合も
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 わが国は、「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」に基づき、2014年6月に「国土強靱化基本計画」を閣議決定、同日開催した国土強靱化推進本部において「国土強靱化アクションプラン2014」を決定した。
 そして「アクションプラン2014」で、基本計画を策定する際に設定した45の「起きてはならない最悪の事態」を回避するための施策群(「プログラム」)のうち、15のプログラムを重点プログラムとして選定し、重点化を図った。この45の「起きてはならない最悪の事態」と15のプログラムは、当時の国の防災政策の、いわば「新視点」だったろう。

P2 3 「起きてはならない最悪の事態を想定した取組み」より - 「防災新視点」に応募しよう!
起きてはならない最悪の事態を想定した取組み」より(内閣官房資料より)
P2 4 スフィアハンドブック(スフィア基準) - 「防災新視点」に応募しよう!
「人道憲章と人道対応に関する最低基準(通称:スフィア基準)」は、1997年に NGOグループと国際赤十字・赤新月運動が開始したスフィアプロジェクトにて策定された被災者の権利と被災者支援の最低基準を定めた国際基準

 ひるがえって、話は飛躍するが、米国で起こった「9.11テロ」の後、その真偽は不明だが、米国国防省はインターネットで起こり得るテロの手法を募集したという。いまならSNSで匿名可での募集になるだろうが、わが国では“権威ある”土木学会が、大規模災害が起こればわが国はアジアで最貧国になると2018年公表の「技術評価報告」で想定し、15年以内での対策を促していた。
 東日本大震災は1000年に一度だったのかもしれないが、想定外に満ち溢れる大災害だった。直近の令和6年能登半島地震での数々の想定外は、事前にある程度想定されながらも、その規模において想定を超えていた。エネルギー基本計画での原発への回帰・新増設への前のめりの姿勢は、安全神話の復活を匂わせる……などなど。

 旧聞に属するが、本紙は2021年4月1日号で、「リップル~想定外防災のシナリオ・プラニング」と題して、テロ・原発管理から「地球防災」まで想定外の起こり方への想定・想像力について取り上げた。同企画は、NHK総合テレビで「リップル~もしも○○が起きるとしたら?~小惑星衝突? 一体何を備えたらいいの?」という番組に触発されたものだった。

 だが、「防災の新視点」ではまず、地域防災の視点で“新視点”を探るべきと考える。言い換えれば市民防災の視点――その意味では、わが国ではとくに人権・ジェンダー尊重に根ざした視点がポイントか。
 例えば国際的な災害・紛争被災者を支援する「スフィア基準」に照らしたわが国の被災者支援のあり方の検証。例えばスフィア基準が避難所での「少女」へのケアに注意を促す視点などは、わが国の避難所運営のひとつの死角例ではないか。

〈2024. 12. 01. by Bosai Plus

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