P3 1 線状降水帯の発生(気象庁資料より、3時間降水量 2024年09月21日10時40分) - 能登半島 “多重複合災害”に負けない<br>「防災文化」確立を

私たちの居住地はすべて“未災地”(被災可能性地)。
「防災への志」を“わがこと化”する

 2024年9月21日から22日にかけて、石川県能登半島は記録的な豪雨に見舞われた。この豪雨は、線状降水帯の発生によるもので短時間で大量の雨が降り注いだ。
 気象庁は21日10時50分、石川県輪島市、珠洲市、能登町に大雨特別警報を発表。「これまでに経験したことのないような大雨」とし、「とくに浸水想定区域などでは、何らかの災害がすでに発生している可能性が極めて高く、警戒レベル5に相当。命の危険が迫っているため直ちに身の安全を確保しなければならない状況。また、土砂災害警戒区域などでも厳重な警戒が必要」、さらに「特別警報を発表する市町村が増える可能性があり、特別警報の発表を待つことなく、避難情報に直ちに従い身の安全を確保する」よう呼びかけた――

P3 1 線状降水帯の発生(気象庁資料より、3時間降水量 2024年09月21日10時40分) - 能登半島 “多重複合災害”に負けない<br>「防災文化」確立を
線状降水帯の発生(気象庁資料より、3時間降水量 2024年09月21日10時40分)

気象庁:石川県に大雨特別警報発表

 翌22日10時10分、特別警報は大雨警報に切り替えられたが、能登半島では多くの河川が氾濫し、広範囲にわたって浸水被害が発生した。とくに輪島市や珠洲市、能登町では、住宅や道路などインフラが大きな被害を受けた。
 総務省消防庁とりまとめ(9月30日9時00分現在)によると、この大雨での石川県での死者は輪島市で8人、珠洲市で3人、行方不明者は1人(能登町。この期間、熊本県大津町でも死者1人)となっている。

P3 2 防災クロスビュー(防災科研)より「斜面崩壊・土石流・堆積分布」(国土地理院 9月23日撮影写真から判読) - 能登半島 “多重複合災害”に負けない<br>「防災文化」確立を
防災クロスビュー(防災科研)「令和6年9月21日 大雨特別警報」より「斜面崩壊・土石流・堆積分布」(国土地理院 9月23日撮影写真から判読)

総務省消防庁:9月20日からの大雨による被害及び消防機関等の対応状況(第20報)

●捜索・救助・救援活動、浸水した仮設住宅の住民への避難所手配も

 被災地での捜索・救助・救援活動は自衛隊や消防、警察が、地元住民やボランティアの協力を得ながら、また自らの安全を確保しながら着実に実施されている。とくに行方不明者の捜索が急がれるところだが、奥能登広域圏事務組合消防本部はこれまで71名を救助、26名を救急搬送(9月29日17時00分時点)している。

 また、石川県内の消防応援隊の活動状況によれば、石川県消防相互応援協定に基いて金沢市消防局、七尾鹿島消防本部、小松市消防本部、加賀市消防本部、かほく市消防本部、能美市消防本部、津幡町消防本部、内灘町消防本部、羽咋郡市広域圏事務組合消防本部、白山野々市広域消防本部が県内の災害現場で活動中(合計33隊102人)が21日の活動で42人を救出、22日は33人を救出したという。こうした緊急消防援助隊及び石川県内消防応援隊の活動により、計147人を救助、55人を救急搬送したとしている。

 いっぽう、今回の大雨災害では、年初の能登半島地震での被災者仮設住宅も浸水被害を受けているが、そうした住民には、再び新たに避難所が提供され、食料や生活必需品の支援が行われている。政府・自治体は緊急支援金の支給を決定し、また、ボランティア団体やNPOも現地での支援活動を改めて再展開しており、物資の提供や心理的サポート、とくに仮設住宅に住む高齢者や障害者への支援が重要視されているとのことだ。

P3 3 気象庁資料より「能登半島地震に伴う基準水位の暫定運用」 - 能登半島 “多重複合災害”に負けない<br>「防災文化」確立を
気象庁資料より「能登半島地震に伴う基準水位の暫定運用」
P3 4 空飛ぶ捜索医療団による「能登半島豪雨緊急支援サイト」より - 能登半島 “多重複合災害”に負けない<br>「防災文化」確立を
空飛ぶ捜索医療団「能登半島豪雨緊急支援サイト」より。空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”は、1月1月の能登半島地震発生後から現在まで珠洲市内に拠点を設け、復興に向けた支援を続けてきた。現地駐在員は今回の記録的な大雨による被害状況の情報収集とともに各避難所や仮設住宅に住む被災者の安否確認に奔走、避難所の支援も開始しているという

●地震・水害(+土砂災害)の「多重被災」 今後の生活再建・復興への影響は

 地震被災に加えて豪雨災害に見舞われた能登地方の被災地の復旧・復興が、今後の最大・最優先課題となる。だが、これまでの各種の災害被災地でも、大なり小なり「多重複合災害」的側面は起こっているはずである。例えば、地震では建物倒壊、土砂崩れ・地盤崩壊に加えて火災、液状化、長周期地震動、都市部では帰宅困難者の発生などがある。いま、災害から逃れている私たちの居住地はすべて、いわば“未災地”(被災可能性地)なのだ。

 ひとつの災害は多様な複合災害を引き起こすが、今回の能登半島豪雨のように、大地震被災地の復旧過程を襲った豪雨災害となると、「復興対策」への影響は甚大なものになる。一般的な被災地の復旧・復興対策とは見なせない“複合的・パラレル的タイムライン”の同時進行が、今回の「多重複合災害」の“不条理”だと言える。

 人知を超えた自然の脅威には立ち向かえないとしても、災害の多いわが国を生き延びてきた私たちには、こうした試練を乗り越える「防災への志」が確固としてあること、被災者自身の生活再建に向けた強い意志を励まし、寄り添う心は失ってはならないだろう。そして、国・自治体が全力で被災地の復興計画を策定し、住民の、国民の「防災への志」を支え、後押ししなければならない、それこそが「災害大国の防災文化」だろう。

〈2024. 10. 01. by Bosai Plus

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