P2 1 「みんな元気になるトイレ」HPより - 助けあいジャパンの<br>「 みんな元気になるトイレ」

コレクティブ・インパクト 稼働、
避難所トイレを明るく衛生的に

助けあいジャパンの「災害派遣トイレネットワーク
みんな元気になるトイレ」で、“トイレを我慢しない”!

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●みんなの力を結集して社会課題を解決=コレクティブ・インパクト
 全国1741市区町村が1台ずつトイレトレーラーを常備・災害時派遣
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 災害時におけるトイレ問題は、被災者の健康と衛生を守るために極めて重要であることは言うまでもない。地震や台風などの自然災害が頻発するわが国で、災害時におけるトイレの確保は、健康に関わるだけではなく災害関連死も惹起しかねない大きな課題となっている。そんななか、全国の自治体が協力して取り組む「災害派遣トイレネットワーク『みんな元気になるトイレ』」が注目を集めている。

P1 「みんな元気になるトイレ」 - 助けあいジャパンの<br>「 みんな元気になるトイレ」
一般社団法人助けあいジャパンを中心に進行中の「災害派遣トイレネットワーク『みんな元気になるトイレ』」の「参加自治体の住民に、トイレは我慢させない」より。助けあいジャパンは「助けあい」の理念に立ち、日本から「災害死」「災害関連死」ゼロをゴールに活動している。平時・緊急時・復旧復興期のあらゆるフェーズでコレクティブ・インパクト(Collective Impact:行政や企業、NPOなどによる社会課題の解決に向けての協働)で取り組む

 「みんな元気になるトイレ」は、一般社団法人助けあいジャパンが企画したプロジェクトで、全国の1741市区町村が1台ずつトイレトレーラーを常備し、大規模災害時にこれを被災地へ派遣することで、トイレ不足を解消することを目的としている。このトイレトレーラーには、1台あたり4部屋の洋式水洗トイレが付いており、災害時に迅速に設置・使用することができる。また、移動が容易であり、被災地に迅速に派遣することが可能となる。さらに、トイレトレーラーには換気扇や洗面台も備えられており、衛生的な環境を提供することから、“きれいで、明るく、衛生的、安全なトイレ”となっている。

 これまで被災地避難所などでは避難者数に対してトイレの絶対数からして足りず、衛生環境が悪化し、感染症のリスクが高まることが懸念された。そして、汚い、暗い、(女性が利用するのが)こわい、(高齢者が利用するのが)使いづらいなど、悪評ふんぷんたるものがあった。こうした問題を払拭・解決するために、「みんな元気になるトイレ」プロジェクトが立ち上げられたのである。

P2 2b 静岡県富士市の支援出動実績より - 助けあいジャパンの<br>「 みんな元気になるトイレ」
P2 2a 静岡県富士市の「岡山県倉敷市」への支援出動実績より - 助けあいジャパンの<br>「 みんな元気になるトイレ」
上・下写真:静岡県富士市の「岡山県倉敷市」への支援出動実績より。西日本豪雨(平成30年7月豪雨)の被災地である倉敷市へ派遣。避難所体育館前にトイレトレーラーを設置。管理は現地の職員、掃除は避難者たち自らが行った

 「みんな元気になるトイレ」プロジェクトを運営する助けあいジャパンは、東日本大震災直後に設立され、当初から災害支援を目的とした官民連携の民間プロジェクトとして活動を開始している。これまで多くの被災地にトイレトレーラーを派遣し、避難者や支援者のトイレ環境改善に貢献しており、また、災害派遣情報人材ネットワーク「WAA ReSCue」を構築して、災害発生時に必要な情報を迅速に収集・共有し、効果的な支援活動を実現するための情報支援を担っている。
 近年、このような官民連携による社会的課題の解決に向けて協働する取組みは“コレクティブ・インパクト(” Collective Impact)と称されているが、本項の大見出し「コレクティブ・インパクト 稼働」はこのコンセプトを援用したものだ。

P2 3 「みんな元気になるトイレ」プロジェクトのしくみより - 助けあいジャパンの<br>「 みんな元気になるトイレ」
みんな元気になるトイレ」プロジェクトのしくみ
P2 4 「トイレトレーラー」の特長 - 助けあいジャパンの<br>「 みんな元気になるトイレ」
「トイレトレーラー」の特長

助け合いジャパン:みんな元気になるトイレ 災害派遣トイレネットワーク

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●プロジェクト参加第1号は富士市(2017年、本紙既報)
 現在、全国22自治体が参加、クラウドファンディングも活用
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P2 5 静岡県富士市「みんなのトイレネットワーク」参加説明パンフより - 助けあいジャパンの<br>「 みんな元気になるトイレ」
2017年当時の静岡県富士市「みんなのトイレネットワーク」参加説明パンフより

 本紙は2017年7月20日付け(旧サイト)で、助けあいジャパンの災害派遣トイレ・プロジェクトの立ち上げを紹介しつつ、静岡県富士市が同プロジェクトに参加する全国自治体の第1号となることで市民の防災意識を高めたいとして、小長井義正・富士市市長と助けあいジャパン・石川淳哉代表理事がトイレトレーラー(当日利用可)を前に共同記者発表を行ったことを伝えた。

防災情報新聞(旧サイト)2017年7月20日付け:『トイレネットワーク』に富士市 名乗り

 富士市はトイレトレーラーの購入資金は、共同記者会見の同日から始めるクラウドファンディングで全国から寄付を募り、不足分は市費を充てるというもので、トイレトレーラーの購入目標資金は1000万円としていた。
 助けあいジャパンによれば、現在、全国22自治体がこのプロジェクトに参加しており、さらに多くの自治体が導入を検討中だ。トイレトレーラー導入の動きを支援するものとして、総務省消防庁の「緊急減災・防災事業債」もあり、その活用も行われている。
 富士市のように、クラウドファンディングを通じて資金を集め、トイレトレーラーの導入を進めている自治体は少なくないようだ。例えば、東京都調布市や三重県志摩市などがクラウドファンディングを実施し、プロジェクトの拡大に貢献している。

 「みんな元気になるトイレ」プロジェクトは、災害時のトイレ不足を解消するだけでなく、被災者の健康と衛生を守るために重要な役割を果たすことから、トイレトレーラーの迅速な派遣により、避難所での衛生環境が改善され、感染症のリスクが低減されることは疑いない。また、被災者が安心してトイレを利用できる環境が整うことで、肉体的・精神的な負担も軽減され、ひいては災害関連死の減少につながる大きな効果も期待できる。

 「みんな元気になるトイレ」プロジェクトは、さらに、多くの自治体がこのプロジェクトに参加することで、災害時のトイレ問題を解決し、被災者の健康と衛生を守るための取組みが一層強化されることが期待される。
 「みんな元気になるトイレ」プロジェクトの今後の課題としては、トイレトレーラーの平時の活用法や、そのメンテナンスにかかる自治体の資金・人員の調達など安定的な維持・継続に向けた課題がある。また、災害時に迅速にトイレトレーラーを派遣するためには、自治体間の連携・ネットワークの強化が不可欠だ。さらに、避難所での運用訓練、災害発生時に迅速にトイレトレーラーを派遣するための体制整備(交通インフラが被災した場合でも、トイレトレーラーを迅速に被災地に届けるための計画等の作成)がある。

 そして、避難所で避難者がトイレを適切に利用できるように、避難所運営を担うボランティアの確保、また、ボランティアにその使い方の説明や清掃活動の運用サポートなどの教育・養成体制も必要となるだろう。防災士や自主防災ボランティアも、「みんな元気になるトイレ」に関わる機会を持てるのだ。

〈2024. 09. 15. by Bosai Plus

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