「アクションプログラム」の成果、10年で人的被害 8割減
ハードとソフト対策の相乗効果――最悪10万5千人の死者想定が2万2千人に
さらに防災・減災をめざす
静岡県は10年前の2013年6月に、南海トラフ巨大地震を引き金に、富士山噴火や中部電力浜岡原子力発電所の事故が重なる“複合災害”を初めて盛り込んだ「静岡県第4次地震被害想定(第一次報告)」を公表した(「第4次」とあるのは、同県による過去1978年、1993年、2001年の3回の地震被害想定実施に次ぐことによる)。
東日本大震災での東京電力福島第1原発事故を踏まえ、複合災害による「最悪のシナリオ」を想定したもので、地震については、駿河トラフ・南海トラフ沿いと相模トラフ沿いで発生するレベル1(発生頻度が比較的高い。駿河・南海トラフでは約100〜150年に1回のM8クラス)と、レベル2(発生頻度は極めて低いが、最大クラス。南海トラフ巨大地震のM9クラス)の地震・津波による震度分布や津波高、浸水域等の自然現象の想定結果と人的被害・物理的被害の想定結果を示し、災害対策を行ううえで重要な視点・タイミングを明らかにした被害・対応シナリオをとりまとめた。
この想定での人的被害は、最悪のケースで約10万5千人が犠牲となると試算。この「第一次報告」で推計された被害軽減のために、防災・減災の具体的な行動目標「地震・津波対策アクションプログラム2013」を合わせてとりまとめた。
この「アクションプログラム」の実践から10年を経て、県は先ごろ、防潮堤整備や津波避難ビルの指定などを進めた結果、2023年3月末時点で人的被害を約2万2千人に減少させたと発表。これは、目標としていた8割減少を達成したことを意味する。川勝平太知事は記者会見で、「防災・減災インフラの整備や避難訓練などの取組みが実を結んだ」と述べている。
想定死者数の減少の根拠としては、次のような要因があげられる。
▼防潮堤や堤防などの防災・減災インフラの整備により、津波浸水域が縮小
▼ 津波避難ビルや高台への避難路などの避難施設・設備の整備により、避難可能人口が増加
▼避難訓練や防災教育などにより、国民の防災意識や自助・共助の精神が高まった
▼防災マップや防災アプリなどにより、情報発信や伝達手段が充実
静岡県では「アクションプログラム2023」を策定、今後さらに防災・減災インフラや避難施設・設備のさらなる充実や更新を図り、被災者支援体制や復旧・復興体制の強化を図る、情報発信の多言語化や防災におけるデジタル技術の活用を進める、国や他の都道府県との連携や協力を深めることを通じて、防災・減災効果を高めるとしている。
〈2023. 07. 10. by Bosai Plus〉