P3 0 奥利根湖と利根川源流の山々(2023年4月3日撮影/関東地方整備局資料より) - 洪水⇔渇水のリスク

地球温暖化の影響か
豪雨洪水⇔渇水・砂漠化のリスクが高まる

気候変動への適応策や軽減策を検討し実施することがますます重要

 地球温暖化の影響で雨量の変動幅が大きくなっている。大雨の頻度が増えるいっぽう、雨が降らない日も増えていて、渇水のリスクも同時に高まっているというのだ。それは世界的にだけではなく、日本国内でもその傾向があり、国や自治体は危機感を高めているようだ。
 去る4月20日に開かれた利根川水系渇水対策連絡協議会の幹事会(流域1都5県と国の担当者で構成)で、国土交通省関東地方整備局広域水管理官が次のように注意を呼びかけたという。

 「昨年度からの少雨で、3月には上流のダム群の貯水率が36%に低下した。過去に取水制限へ踏み切った貯水率に迫る水準。山間部の積雪も少なく、水源地の尾瀬沼地点では平年の半分程度。雪解けも早いため、関東の広い範囲で今後の水不足が懸念される」と。そして、「地球温暖化の影響とみられる」と結論づけた。豪雨被害が相次いでいるのに対し、1日の雨量が1mm未満の「無降水日」も増える傾向にあり、降雪量の減少や高い気温による雪氷・水の蒸発なども渇水のリスクを高めていることになる。

P3 0 奥利根湖と利根川源流の山々(2023年4月3日撮影/関東地方整備局資料より) - 洪水⇔渇水のリスク
奥利根湖と利根川源流の山々(2023年4月3日撮影/関東地方整備局資料より)

関東地方整備局:利根川水系渇水対策連絡協議会幹事会 開催結果

 国土交通省が2018年に発表した報告書「気候変動の影響について」によると、気候変動に伴って降雨量や洪水発生頻度が増加する傾向があり、気温が2℃上昇した場合は、平均で降雨量が1.1倍から1.15倍に増え、洪水発生頻度が1.3倍から1.6倍に増える、気温が4℃上昇した場合は、平均で降雨量が1.2倍から1.4倍に増え、洪水発生頻度が1.7倍から2.3倍に増えるという。これは、気候変動によって大気中の水蒸気量が増え、強い対流活動や前線の発達などによって局地的な豪雨が発生しやすくなるためだと考えられる。

P3 1 大雨の年間発生回数の経年変化(1976年~2021年)(気象庁資料より) - 洪水⇔渇水のリスク
大雨の年間発生回数の経年変化(1976年~2021年)(気象庁資料より)

 また、科学技術振興機構によれば、2040年代には、現在よりも気温が1℃上昇することで、日本周辺の強い雨の激しさは平均で10%増加、とくに夏季には、15%以上増加する地域もあるとする。温暖化によって大気中の水蒸気量が増え、降水効率が高まるためだと考えられる。
気象庁もまた、大雨の年間発生回数が1980年ごろと比較して、概ね2倍程度に頻度が増加しているとしている(左図参照)。

 いっぽう、地球温暖化によって、わが国では降水量は全国的に増加するものの、季節や地域によっては減少する場合もあり、また降水パターンは集中豪雨や乾期の長期化などに変化することで、河川流量やダム貯水量などの水資源管理に影響を与えることがあるという。利根川水系の渇水対策はまさにこの事象を対象としている。

国土交通省:気候変動の影響について

 地球規模の視点で言えば、乾燥地の脆弱な生態系の中で、その許容限度を超えて行われる人間活動――例えば、農地拡大、家畜による過放牧、都市の拡大、インフラ開発、鉱山開発などの持続不可能な土地管理などの人為的な要因は、人口増加、土地所有の変化、移住、消費需要の増加、市場経済の進展、貧困などから生じると考えられている。

P3 2 乾燥地における人口(現在と2050年の推定値/環境省資料より) - 洪水⇔渇水のリスク
乾燥地における人口(現在と2050年の推定値/環境省資料より)
P3 3 砂漠化と気候変動の関係(模式図/環境省資料より) - 洪水⇔渇水のリスク
砂漠化と気候変動の関係(模式図/環境省資料より)

 こうした砂漠化の要因ともなる人間活動による土地への圧力は、乾燥地に住む人口にも密接に関わっている。左図の「乾燥地における人口(現在と2050年の推定値/環境省資料より)」は、各大陸の乾燥地に住む人口を示しているが、とくにアフリカやアジアの割合が高い。乾燥地に住む多くの人びとの農業や生活などの人間活動が、脆弱な土地への圧力となり、さらに土地の劣化を進行させるという悪循環となっている。

環境省自然環境局:砂漠化する地球-その現状と日本の役割-

 こうした事例や現象から、地球温暖化の影響で雨量の変動幅が大きくなるとともに、洪水だけでなく、渇水のリスクも高まっていることがわかってきた。渇水のリスクについては、NPO法人国際環境経済研究所が「地球温暖化で気圧配置や風向・風速などが変化することで、季節風や前線などの降水システムが変動しやすくなり、集中豪雨が増えることで、河川やダムなどの水資源管理が困難になり、水不足や水質悪化などの問題が派生する可能性がある」という分析も発表している。

 これらのリスクに対応するためには、気候変動への「適応策」や「軽減策」を検討し実施することがますます重要となる。

P3 4 「温暖化を抑えるには緊急に温室効果ガスの排出削減が必要」(IPCC資料より) - 洪水⇔渇水のリスク
「温暖化を抑えるには緊急に温室効果ガスの排出削減が必要」(IPCC資料より)

〈2023. 06. 12. by Bosai Plus

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