負の連鎖を止めるまちづくり
「資源」として活用の道を探る
空き家激増は新築一戸建て重視政策の破綻?
少子高齢化で“老いるマンション”―住宅『終活』とは?
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●増える空き家 この20年で約1.5倍に
持ち家率が高い団塊世代が後期高齢者になる25年以降、急増も
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全国で空き家が増えている。総務省の住宅・土地統計調査(5年ごと/2018年調査)によれば、空き家の総数はこの20年で約1.5倍(576万戸→849万戸)に増加している。
いっぽう国土交通省の調査では、賃貸用や売却用などを除いて、人が長い間住んでいない住宅は349万戸。少子高齢化、人口減の時代を迎え、空き家は今後はさらに増えると見込まれている。このまま相続放棄などで空き家が放置され続けると、防犯(放火なども含めて)上も問題が大きく、周辺環境の悪化や自然倒壊などにもつながる。ひいては大地震などでの倒壊・火災延焼の要因ともなるから、防災まちづくりにおいてももはや放置できない状況となっている。
国は管理状態が悪い空き家の修繕や建替えを促すため、固定資産税の優遇措置を見直し、早ければ来年度中に税負担を増やすという。2015年に空き家対策特別措置法が施行され、空き家が危険な状態にある場合は自治体が略式代執行で取り壊すことができるようになった。相続放棄物件は、自治体が民法の「相続財産管理人」などの仕組みを使って売却することもあるが、資産価値が小さい家は放置されがちだという。
国はこれまで、住宅ローン減税などの優遇措置で新築重視の政策をとってきた。少子高齢化対策も然り、人口減時代の到来がわかっていたのに目先の経済成長・票田を優先してきた政治のツケを、次世代へ先送りをしようというのか――
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●旧耐震基準(1981年5月以前)マンション 約40万戸
孤独死やゴミ屋敷などの社会的な問題も
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いっぽう、老朽化マンションについては、国土交通省によると2020年時点で築40年以上のマンションが約130万戸あり、全マンション数の約20%を占める。このうち約40万戸が旧耐震基準(1981年5月以前)のものだ。老朽化マンションは、建物自体が劣化しており、耐震性や耐火性が不十分と推定される。また、管理組合が機能しておらず、修繕積立金が不足していたり管理費が滞納されていたりする場合も多い。さらに、住民の高齢化や空き家化によって、孤独死やゴミ屋敷などの社会的な問題も発生している。
2018年に「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」が改正された。老朽化マンションの建替えや修繕を促進するために、建替え決議の要件を緩和したり、反対者への金銭買取り制度を導入することで、合意形成を容易にすることを目的とする。また、「特定区分所有建物」に指定されると、建替え決議要件がさらに緩和されることになった。
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●空き家も老朽化マンションも、「災害に弱い」
地域防災のテーマとして、適切な管理で地域活性化の資源にできないか
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空き家と老朽化マンションは、それぞれ異なる特徴を持つが、共通して災害に弱いという問題を抱えている。空き家は、耐震性や耐火性が低く、地震や火災などの際に倒壊や延焼の危険性が高い。また、周辺環境や景観を損なうだけでなく、不法投棄や不法占拠などのトラブルの温床ともなりうる。さらに、所有者が不明であったり遠隔地に住んでいたりする場合も多く、緊急時に迅速な対応が困難である。老朽化マンションについては「マンションの建替え等の円滑化に関する法律」に基づく建替えや修繕の促進は、“まだ期待される段階、今後の実践にかかる”という段階だ。
空き家や老朽化マンションの防災対策は、国や自治体が積極的に支援や指導を行えるかにかかっている。そのいっぽう、地域防災においては、地道ではあるが、地域活動で空き家や老朽化マンションの周辺住民や地域社会と協力して、防災意識を高め、見守り活動を継続することが重要となる。
同時に、空き家や老朽化マンションを活用する場合、地域の特性やニーズに応じた多様な形態を検討し、住宅や福祉施設、コミュニティスペースなどとして再生を検討するなど、新しい時代・社会を展望した大きな視点も望ましい。空き家や老朽化マンションを適切に管理・活用することで、防災対策だけでなく、空き家バンクや空き家情報公開制度など、住宅供給や地域活性化に貢献できる可能性もある。
空き家や老朽化マンションの防災対策は、単なる負の遺産の処理ではなく、ポジティブに資源活用としてとらえることも、地域防災のテーマとなり得るのではないか。
〈2023. 06. 15. by Bosai Plus〉