100年前の関東大震災から学び、再来に備える
「災害は忘れたからやってくる」――
揺れ・津波・土砂災害・群集災害、そして不可測の事態も…いまもその要因が
本年2023年は、首都圏に甚大な被害をもたらした1923年関東大震災から100年にあたる。本紙は直近記事で「関東大震災から100年」を特集した(2023年1月4日付け~)。過去の大災害から学び、地震・津波を含む大規模複合・都市災害の様相を呈した関東大震災の再来に想像力をもって備えるために、本年は通年で各種啓発イベントが行われることになる。
気象庁もまた本年1月4日、そのホームページ内に「関東大震災から100年」特設サイトを開設した。気象庁によれば同サイトは、関東大震災について知り、地震・津波への備えに活用してもらうことを目的に開設。とくに、中学生・高校生にも知ってもらえるよう、以下の内容について整理して紹介しているとし、学校や家庭での日頃の災害対策の見直しや、地域の防災教育等に活用されることを期待している――
「関東大震災の概要」、「気象庁が保管する当時の被害写真や実際の地震波形の写真」、「首都直下地震等の関東地方で起こりうる地震の特徴」、「地震・津波に備えるための知識、イベント情報」、「関連する情報や関係機関ホームページへのリンク」。
ちなみに「目次」は、「関東大震災の概要」「観測データ・解析結果」「関東大震災の記録」「関東大震災以降の地震津波業務の変遷」「関東地方で起きる地震の特徴」「地震・津波に備えるための知識」「地震・津波に備えるイベント情報」「リンク集」「コンテンツの利用について」となっている。
当時の震度分布図や気象庁が保管している当時の被害写真、波形データについては、気象庁ホームページでの初めての公開だという。今後も関東大震災が発生した9月1日(「防災の日」)に向けて、地震津波に備えるイベント情報など、随時、内容をアップデートする予定だ。
【 関東大震災の概要 】( 気象庁「関東大震災から100年」特設サイトより *一部編集)
「大正関東地震」(関東大震災を引き起こした地震名)は、1923年(大正12年)9月1日11時58分、神奈川県西部の北緯35度19.8分、東経139度08.1分、深さ23kmを震源とするマグニチュード7.9の地震。この地震により、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県で震度6を観測したほか、北海道道南から中国・四国地方にかけての広い範囲で震度5から震度1を観測(※当時の震度階級は震度0から震度6までの7階級だが、家屋の倒壊状況などから相模湾沿岸地域や房総半島南端では、現在の震度7相当の揺れであったと推定されている)。
この地震の発生が昼食の時間と重なり、多くの火災が起きて被害が拡大した。また、津波、土砂災害なども発生し、死者・行方不明者は10万5千人余(理科年表より)にのぼった。また、関東南部の山地や丘陵地・台地の縁辺部で、地震による強い揺れによって崩壊や地すべり、土石流などによる土砂災害が多数発生した。土砂災害が多発した理由として、前日にかなりの降雨があったことが要因の一つと考えられている。
また、大正関東地震は、震源域が相模湾内にあったため、三浦半島から伊豆半島東岸に高さ数m以上の津波をもたらした。早いところでは地震後5分程度で津波が襲来し、津波の高さは静岡県の熱海で12m、房総半島の相浜で9.3mを観測した。この地震によって生じた災害全般が「関東大震災」と呼ばれる。
なお、気象庁は関東大震災の概要説明のクレジットとして内閣府「災害教訓の継承に関する専門調査会報告書〜2006年7月『1923 関東大震災』」をあげている。本紙は、前号特別構成のなかで「災害史上最悪の教訓」として「流言被害(朝鮮人ほかの虐殺)」を取り上げたが、その根拠もまた同報告書にある。
気象庁としては災害科学的な視点での大正関東地震(関東大震災)の啓発ではあるが、あえて社会科学的視点での「流言災害」の教訓もリマインドしておきたい。
内閣府:災害教訓の継承に関する専門調査会報告書「 1923 関東大震災」
〈2023. 01. 10. by Bosai Plus〉