日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震
――岩手県が津波被害想定調査報告書、
――国は「後発地震注意情報」発表へ
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●沿岸部 12市町村で津波死者数 最悪7000人
久慈市4400人、宮古市2100人――早期避難で犠牲者ゼロを
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岩手県防災会議(会長:達増拓也知事)の地震・津波被害想定調査検討部会(部会長:戸舘弘幸県復興防災部長))は、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震など最大級の地震と津波が発生した場合の被害想定をまとめた「岩手県地震・津波被害想定調査報告書案」をとりまとめ9月20日に公開、これを受け同月22日に開かれた県防災会議はこれを承認した。
報告書は、効果的な減災に役立てるため、マグニチュード(M)9クラスと最大級の地震が起きる想定で試算。具体的には、日本海溝・千島海溝沿いで起きる巨大地震や2011年3月の地震と同様の東北地方太平洋沖地震をモデルに選定。津波被害の予測には岩手県が本年3月に公表した津波浸水想定を活かし、市町村ごとの人的被害や建物被害などを割り出している。
避難のしやすさや避難の際の人の流れは季節や時間帯によって異なり、それに応じて被害規模も変化するため、①就寝中の津波発生で避難準備に時間を要し、暗闇や積雪で避難速度も下がる「冬の深夜」、②日中の社会活動が盛んで自宅以外での被災が多い「夏の正午ごろ」、③住宅や飲食店などで火気の使用が最も多く、地震火災が増える「冬の午後6時ごろ」――の3ケースに分類して検討。その結果、人的被害は日本海溝沿いの三陸・日高沖の北寄りで巨大地震が起きた場合に最大で、「冬の午後6時ごろ」に発生するケースでは、津波による死者数が沿岸部の12市町村で7000人に達する。市町村別では、久慈市が4400人、宮古市が2100人と突出。
県としてはあらゆる主体と連携しながら、「何としても命を守る」ことを主眼とした津波防災対策に全力を挙げる。自助による取組みだけでなく、地域による共助、行政による公助を組み合わせ、犠牲者数ゼロを目指す取り組みが必要で、共助の課題としては、住民相互による助け合いの意識醸成、防災リーダーの育成、地域内の避難行動要支援者の有無と関係者の確認―などを例示している。
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●想定震源域でM7クラスの地震発生で「後発地震注意情報」
南海トラフ地震の「臨時情報」とは異なるが…
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中央防災会議「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループ」では、日本海溝・千島海溝沿いの大規模地震の発生時期や場所・規模を確度高く予測することは困難だが、巨大地震の想定震源域及びその周辺でM7.0以上の地震が発生した場合には、後発の巨大地震への注意を促す情報発信が重要だとし、検討を続けてきた。
去る9月27日の第3回検討会で、マグニチュード(M)7クラスの地震が起きた場合、その後の巨大地震の発生に注意を呼びかける情報の名称を「北海道・三陸沖 後発地震注意情報」とする案を了承した。内閣府は今後、とるべき対応などについてのガイドラインを作成し、本年12月に運用を始める方針だ。
同注意情報はおおむね2時間後をめどに発表するとし、情報が発表された際には、住民に対して事前の避難などは呼びかけず、発表から1週間程度は日常の生活を維持しつつ、津波が想定されるなど迅速な避難が必要な場合にはすぐ行動できるよう備えておくことなどを求める方針を確認した。
また、自治体や地域、住民、それに企業の対応についてガイドラインを作成し、SNSなども活用して広く周知していく。
内閣府(防災担当):日本海溝・千島海溝沿いの後発地震への注意を促す情報発信に関する検討会
〈2022. 10. 06. by Bosai Plus〉