報道機関として唯一「指定公共機関」
――防災情報を正確・迅速に伝える責務を負う
“災害報道のNHK”
●地域防災と連携を強めるNHK 日本防災士会各地支部との協定締結進む
直近の報道に、NHK千葉放送局と日本防災士会千葉県支部が、千葉県内の防災・減災への取組みや災害時の情報共有を連携して進めるため、新たに協定を結んだというものがあった。千葉市にあるNHK千葉放送局で去る8月3日に協定締結式が行われた。協定では、素早い避難など県民の的確な防災行動につなげるため、台風の接近や大雨が予想される場合の地域の「事前の備え」や、地震や津波などの「災害発生時の地域の状況」、それに被災後の各地域の「被害状況や必要な支援」といった情報を、防災士からNHKに提供することなどが盛り込まれているという。
防災士制度を推進する日本防災士機構によれば、防災士資格取得者は全国で23万5437人(累計。2022年8月末現在)を数える。社会の信認性の高まりを背景に、NPO日本防災士会(会員数:9284名。2022年8月末現在)の各地支部ではNHK(日本放送協会)の各地方放送局との連携も積極的に進めており、同会資料によれば、情報提供などの協力協定締結は46道府県に及んでいる(2021年4月現在)。これは防災士がもともと日常活動で地域防災に尽力していて、地域のリスクやコミュニティを熟知していることから、非常時に防災・減災に向けた情報提供が期待できるからにほかならない。
こうした動きに応えるように、NHKは8月23日、「災害が予想されるとき、災害が起きたとき、命を守るためにどう呼びかけたらよいか?」として、災害報道に備えてNHKアナウンサーが改善を重ねてきた呼びかけの文言データを公開した。
NHKニュース:NHKアナウンサーが災害報道に備えて改善を重ねてきた「呼びかけの文言」を公開 命を守る「防災の呼びかけ」
●まず、大雨や氾濫に備える「防災の呼びかけ」を公開
NHKは、「防災の呼びかけ」文言公開データの利用にあたって、「本データは、地域の防災減災のために活用していただくことを想定している。地域コミュニティ、公的機関、教育施設、事業所などでの防災減災の取組みに活用してほしい。災害が起きそうなときや実際に起きたとき、大切な命を守るために、本データを活かしてほしい」としている。
災害が予想されるとき、災害が起きたとき、命を守るためにどう呼びかけたらよいか?――災害報道に備えてNHKアナウンサーが改善を重ねてきた呼びかけの文言、および音声の公開は、まず、大雨や氾濫のおそれがあるときの「防災の呼びかけ」が公開されている。NHKは今後、ほかの災害についての「呼びかけ」の公開も検討していくという。
また、NHKは9月1日、アナウンサーの伝える技術をA(I 人工知能)に学習させることで、大雨での災害が想定されるときにアナウンサーが住民などに向けて警戒や避難を促す「呼びかけ」の音声データを複数作成して公開した。これもNHKのウェブサイトから誰でもダウンロードできる。前段の呼びかけに関するテキストデータと合わせてダウンロードが可能だ。
NHK:NHKアナウンサー 命を守る「防災の呼びかけ」(見本)
NHKは、災害対策基本法で報道機関として唯一、指定公共機関に定められ、大規模な災害が起きたときは、被災者の生命と財産を守るため、防災情報を正確・迅速に伝える責務を負う。気象業務法の規定で気象、地象、津波、高潮、波浪および洪水の警報が出た時、そして南海トラフ地震の「情報」が発された場合、また、震度6弱以上の地震が確認された場合は、NHKは報道特別番組を開始し、開始前の番組内容は中断となる。まさに公共放送として“災害報道のNHK”の本領を発揮することになる。
南海トラフ巨大地震、首都直下地震をはじめ想定される大規模災害がラインアップし、激甚気象災害も相次ぐいま、大手マスメディアは東日本大震災以降、それぞれ防災に関する“スペシャルシリーズ企画”を打ち出している。“災害報道のNHK”はその先駆者として今後も、防災・減災に向けて、ニーズを踏まえた地域防災との協働、工夫・改良を重ねていくとしている。
〈2022. 09. 20. by Bosai Plus〉