とにかく捨てないで!⇒迷った際はすぐに連絡を 古い記録、
古文書、写真…家庭でできる簡単な被災資料保全法

 阪神大震災で被災した歴史資料保全のために、歴史資料保全情報ネットワークとして「歴史資料ネットワーク」(代表委員:奥村 弘・神戸大学人文学研究科教授)が、1995年2月、開設された(1996年4月に「歴史資料ネットワーク」と改称)。関西に拠点を置く大阪歴史学会、日本史研究会、大阪歴史科学協議会、京都民科歴史部会、神戸大学史学研究会、神戸女子大史学会などの歴史学会を中心に構成され、若手を中心に大学教員や院生・学生、史料保存機関職員、地域の歴史研究者などがボランティアとして参加する団体で、神戸大学文学部地域連携センター内に事務局を置いた(2002年5月改組後の正式名称も「歴史資料ネットワーク」)。

 規約によれば、歴史資料ネットワークの活動内容は、つぎのようだ。
・阪神・淡路大震災後の保全歴史資料の保存と活用
・被災地を中心とする市民の歴史研究活動の援助
・大規模自然災害についての史料保全・歴史研究についての提言
・大規模自然災害の際の歴史学会の史料保全活動の暫定的なセンター的役割
・市民社会の中での歴史資料のあり方についての研究

 同ネットワークは発足当初は、民間所在の歴史資料を救出・保全するため、京阪神の歴史学研究者を中心に発足したものだったが、歴史研究者は大災害時になにができるのかという問題意識が議論され、歴史学者個人の研究のためではなく、被災者の生活復興の一環として活動すべきということとなり、歴史研究者と市民とがともに認識を深めていく活動へと進化していく。
 その後は、大規模災害時に際して、市民とともに地域の歴史文化・歴史資料を守り伝えていくことを理念とし、市民と日常的にも関係性を保ちながら活動することを通じて日常的な関係を災害時にも活かすことをめざしている。

P5a 2018年西日本豪雨被災史料の乾燥処置 - 「歴史資料ネットワーク」と市民協働<br>「被災資料保全」<br> 市民との協働を 災害時に活かす
2018年西日本豪雨被災史料の乾燥処置

 2004年以降は、風水害対応の活動を開始し、被災資料修復ワークショップを始めるとともに、史料保全活動の担い手を広げる活動を展開。その基本的な考え方としては、「被災資料保全活動は誰にでもできる」、「水に濡れた資料は乾かすことができる」という考え方の普及と資料保全技術の普及に力を入れている。
 現在は、全国各地に約25の「史料(資料)ネット」が存在し、各史料ネットはそれぞれ固有の活動を展開、相互にネットワークを結ぶ。

歴史資料ネットワーク

資料の修復方法――とにかく捨てない、迷ったら連絡を!

P5 1 写真の洗浄手順(広島県立文書館資料より) - 「歴史資料ネットワーク」と市民協働<br>「被災資料保全」<br> 市民との協働を 災害時に活かす
写真の洗浄手順(広島県立文書館資料より)

 以下、歴史資料ネットワークによる一般市民による、家庭でできる資料(古い記録、古文書、写真など)の修復方法の冒頭部分(一部抜粋)を紹介する(詳細は下記リンクで)。

▼やってはいけないこと
・冊子を無理にこじあけない
・天日やアイロン・ドライヤーなどで急激に乾燥させない。電子レンジでの乾燥も歴史資料を傷めるので要注意
・とにかく捨てない ⇒迷った際はすぐに連絡を!
▼作業を行うにあたっての留意点
・エプロンか作業着を着用。あるいは汚れてもいい服装で
・マスクは必ず着用すること。また、エタノールを扱う際にはゴム手袋を着用
・常に換気を行うこと(可能であれば除湿機の作動、扇風機での送風を加える/空気清浄機を作動させることができればなおよい)
・30分に1回は必ず休憩(長時間連続で作業に従事しない)
・作業終了後、うがい、手洗いを必ず行うこと
・指輪・時計・ブレスレット・ネックレス・ヘアピンなど、史料に損傷を与える危険のあるものははずしておく。袖の釦(特にカフス等)が気になる場合は、腕まくりを

P5 2 写真の乾燥(広島県立文書館資料より) - 「歴史資料ネットワーク」と市民協働<br>「被災資料保全」<br> 市民との協働を 災害時に活かす
写真の乾燥
P5 3 写真の洗浄作業の流れ(広島県立文書館資料より) - 「歴史資料ネットワーク」と市民協働<br>「被災資料保全」<br> 市民との協働を 災害時に活かす
写真の洗浄作業の流れ

歴史資料ネットワーク:資料の修復方法

〈2022. 02. 08. by Bosai Plus

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