全国足紋普及協会資料より足紋シンボルマーク

東日本大震災から11年、いまなお続く身元捜査
全国足紋普及協会「ぼうさいこくたい 2021」で“足紋採取会”

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歯型、指紋、DNA型鑑定――
被災場所推定「マッピングポインティング」も駆使

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 東日本大震災では、多くの身元不明遺体が出た。警察白書(2012年度版)によると、発生10日後には身元不明遺体は約4500体にのぼったとされる。東日本大震災から11年、この震災で死亡し、身元がわからないままの遺体がいまも岩手、宮城両県で53体あるという。新たな身元判明はこのところ年間数人にとどまる。発生から10年以上を経過しDNA型鑑定などのための試料入手が困難になってきたことなどが背景にある。

 岩手・宮城両県警では、新たな身元の特定方法も試みており、最後の一人を特定するまで捜査は終わらない覚悟だという。身元確認の科学的方法は、基本的には、①歯牙(歯型)鑑定、②指紋、③DNA型鑑定などがあるが、それぞれ課題もあり、完璧に特定できずに身元不明になるケースもある。いっぽう、遺体のレントゲン写真や、火葬前の顔つきから生前の表情を推定した似顔絵をつくり、地域の病院に聞き込みの結果、可能性のある遺族のDNA型が決め手となり、身元判明につながった例もある。

 また、細胞内にあるミトコンドリアDNAを使った鑑定法もある。DNA鑑定では一般的には、細胞内の核のDNAを使うが、ミトコンドリアは数十から数万含まれるため、損傷が激しい遺体でも採取しやすく、捜査にも広く使われているという。報道によれば、「震災時、岩手県内では大規模な火災が発生。遺体の損傷が激しく、県警が昨年4月時点で保管していた身元不明の遺体48体のうち、30体は核からDNAが採取できていなかった。そこで県警は今年度から3年計画で、この30体を対象にミトコンドリアによる鑑定を始め、10年余りの捜査で蓄積した情報とすりあわせて結論を導き出した。この手法で身元が特定されたのは岩手県内では初めて」という(朝日新聞 2022年1月29日付け)。

 新たな捜査方法としては、遺体発見場所から被災場所を推定する「マッピングポインティング」という手法も注目されている。これは、過去に海で見つかり、その後身元が特定された事例をデータベース化して蓄積し、海流なども加味して、「この海域ならこの沿岸」というふうに被災場所を絞り込む。とくに海上で見つかった身元不明の遺体について、陸地のどこで被災したかを推定する捜査手法で、「10年間のデータの蓄積を生かせる」という。海上保安庁は発災直後から行方不明者が多い沿岸部を中心に捜索活動を続けていて、潜水捜索は延べ1230回以上、巡視船による捜索も含めて20年3月までに計409遺体を発見したという。
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「足紋」は、警察捜査と切り離した身元特定の手段
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 特定非営利活動法人全国足紋普及協会(東京都品川区、2020年5月発足)は、簡便でコストもそれほど要しない「足紋」の活用を提案、全国的に啓発活動を展開している。
 同協会では、昨年(2021年11月)岩手県釜石市で開催された内閣府主催の「ぼうさいこくたい(防災推進国民大会) 2021」で、足紋が身元確認に有用であることを国民に広く知ってもらうためにブースを初出展し、「足紋採取会」を行っている。来場者のなかから希望者の足紋を約100例採取して「足紋証明書」を発行するなど、足紋が個人識別に有効であることを体験してもらうイベントだ。

P4 2 足紋分類上の名称(全国足紋普及協会資料より) - 被災者身元確認 最後の一人まで
足紋は新たな身元特定の手段になり得る
P4 1 全国足紋普及協会資料より足紋シンボルマーク - 被災者身元確認 最後の一人まで
全国足紋普及協会のロゴマークとそのコンセプト説明

 災害被災者、事件・事故遭遇者、認知症徘徊者など、生死に関わらず、足紋は指紋と同様に、身元確認に資する科学的根拠となり得る。同協会は、震災から生命・身体を守る防災・減災活動には直接的にはあたらないが、被災者の身元確認が、簡便かつ即時に可能で、警察の身元確認作業が軽減され、誤りなく遺族の元へ遺体の早期返還が可能となることから、その社会的な意義は大きいとしている。

 私たちにとっても、警察への指紋提供となると市民には抵抗を感じる人が多いと思われるが、足紋はその意識が薄いうえに指紋と同じ要領で個人の特定ができるので、ハードルは低い。また、普段は靴を履いているので足紋への損傷が少なく、水死体であっても鑑定しやすいという。全国足紋普及協会では、「警察捜査と切り離した身元特定の手段として浸透してほしい。登録が進めば災害発生時の身元特定が容易になる」と期待を寄せている。

P4 3 ぼうさいこくたい2021で「足紋採取会」(全国足紋普及協会資料より) - 被災者身元確認 最後の一人まで
全国足紋普及協会が「ぼうさいこくたい 2021 釜石」でブース出展。足紋採取会を催し、約100人の協力を得た

全国足紋普及協会

〈2022. 02. 01. by Bosai Plus

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