災害リスクからの戦略的撤退、災害を受け流す街づくり
日経BP専門記者らによる“覚醒的”新刊と、
不動産取引プロのマイホーム選びのアドバイス
株式会社日経BP(東京都港区)が、書籍『私たちはいつまで危険な場所に住み続けるのか』を発行した。そのサブタイトルには「自然災害が突き付けるニッポンの超難問」とある。こうしたタイトルは刺激的ではあるが、むしろ“覚醒的”と言っていいだろう。
本紙もこれまで、災害リスクのある地域での都市化・人口増を問題視してきたが、防災白書冒頭に記載されているように、もともと、日本は台風、豪雨、豪雪、洪水、土砂災害、地震、津波、火山噴火などによる災害が発生しやすい国土であり、日本の立地そのものが“いつでも危険となり得る場所”であることは言うまでもない。
同書は、自然災害の取材を担当する建築・住宅・土木分野の専門記者が、気候変動で今後さらに激しくなると予想される水害や土砂災害の最前線を現地取材をもとに綿密にリポートし、被災者を襲った「想定外」の出来事の裏側や「その後」を詳しく解説したもの。また、政策や技術の最新動向を踏まえつつ、これからの住まいづくりや街づくりを語るうえで欠かせない新たな考え方も提示している。
具体的には、「災害リスクの高い土地からの撤退を戦略的に進める」ことと、「撤退がむずかしい場所では“災害を受け流す”まちづくりに投資する」ことで、すでにいくつかの先進的な自治体や企業が、こうした考えのもとに動き始めているという。
2016~20年の5年間に毎年起こった水害による被害額は、全国で計5.2兆円にものぼる。いのちはもちろん、いかに財産を守り抜くか。あるいは、企業活動への影響を少なくするか。日経BPではとくに、建築・住宅・土木の専門家、自治体・企業の防災担当者、家づくりを考えている人、自宅や自分の土地が抱える災害リスクに関心がある人、防災分野で事業を考えているビジネスパーソンなどにお薦めとしているが、気候変動の世紀を生きる現代人にとって見逃せない情報が満載で、地域防災の活動家にも大いに参考になることは言うまでもない。
▼同書の構成――はじめに/第1章:水害事件簿/第2章:狙われた臨海部/第3章:土砂災害頻発列島/第4章:危険な土地からの撤退/第5章:耐水都市への挑戦/第6章:防災テックに商機/資料編:近年の主要な水災害の記録
・価格:1980円(税共) 発行日:2021年10月25日
・著者:木村 駿、真鍋 政彦、荒川 尚美(著)、日経アーキテクチュア(編)
日経BP:私たちはいつまで危険な場所に住み続けるのか
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
“自然災害に弱い土地”を見極める方法を不動産プロが伝授
「自宅の災害リスク『調べていない』70.6%!」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
一級建築士兼宅地建物取引士として建築や不動産、土地選びなどについていろいろなノウハウを伝えている印南和行氏が代表を務める株式会社南勝が、戸建てを所有する25歳以上60歳未満の男女全国490人を対象に「土地選び」について調査した――
その結果、自宅を購入・建築する際、その土地に自然災害リスクがあるかどうかを調べたか聞いたところ、「とくに何も調べなかった」(56.7%)が最多で、「先祖代々の土地だから調べなかった」(13.9%)と合わせると70.6%にもなり、多くの人が土地や家を購入する際になにも調べていないという。
いっぽう、災害リスクを調べた人は「ハザードマップで調べた」(17.6%)、以下「不動産会社や住宅メーカー、建築士等専門家に聞いた」(7.1%)、「地盤調査データを調べた」(6.1%)、「地盤調査した」(5.1%)、「地歴(古地図)を調べた」(4.1%)、「地名(旧地名)の由来を調べた」(3.9%)などとなった。
印南氏は、自然災害リスクを見極めるための4つの方法を提案。
①ハザードマップは中小河川、内水氾濫もチェック、②古地図で土地の履歴をチェック、③雨の日に現地を歩いて地盤、傾斜地をチェック、④長く暮らすマイホームは安心安全を第一にチェック
南勝:「自宅の災害リスク調べていない」! “自然災害に弱い土地”を見極める方法
〈2021. 11. 04. by Bosai Plus〉