東京都多摩府中保健所「女性に配慮したAEDの使用方法について」(表面より)

AED 女性への使用にためらい? 女性に配慮した使用法

女性にAEDを使うときの注意事項――
異性に衣類を脱がされることにも理解を 妊娠中の女性でもためらわず…

●AEDの救命効果は、なにもしない場合よりも4倍高い

 AED(エー・イー・ディー)は、Automated(自動化さた)External(体外式の)Defibrillator(除細動器)の略で、日本語では「自動体外式除細動器」となる。痙攣(けいれん)し、血液を流すポンプ機能を失った状態(心室細動)になった心臓に対して電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器だ。

 電気ショックが1分遅れるごとに救命率は10%ずつ低下すると言われ、救急車が到着する前に、心臓マッサージ(=胸骨圧迫)とともに使えば、なにもしない場合よりも救命率が4倍上がるともされていることから、2004年7月から、医療従事者ではない一般市民でも使用できるようになった。AEDを備える施設が増え、その使用率も年々増加しており、一般人が行える最善の応急手当のひとつとして認知されつつある。防災士も資格取得要件としてAEDを使っての救命講習の受講は必須となっている。

●女性への配慮を大切にしつつ、適切にAEDを使用しよう

P4 1 東京都多摩府中保健所「女性に配慮したAEDの使用方法について」(表面より) 1 - 女性に配慮したAEDの使用方法
P4 2 東京都多摩府中保健所「女性に配慮したAEDの使用方法について」(裏面より) - 女性に配慮したAEDの使用方法
東京都多摩府中保健所作成の「女性に配慮したAEDの使用方法」(ちらし・表裏より)

 ところが、2019年5月に、京都大学などの研究グループから、AEDの使用率に男女差が生じているという分析報告がなされた。全国の学校構内で心停止となった子ども232人について、救急隊が到着する前にAEDのパッドが装着されたかどうかの調査で、小学生と中学生では男女に差はなかったが、高校生になると大きな男女差が出た。

 その背景には、女性の服を脱がせることへの抵抗感があるという。しかし、心肺停止からの蘇生は1分1秒を争うので、傷病者が女性でもためらわず、適切にAEDを使用することが大切だ。AEDは電源を入れて2枚のパッドを素肌に貼るが、服をすべて脱がせる必要はなく、下着をずらして貼ることでも対応できる。また、パッドを貼ったあと、 その上から服などをかけて肌を隠すようにしても、AEDの機能に影響はない。
 このような女性に配慮したAEDの使用方法が、一般人には十分に浸透していないと思われることが問題となる。

 ただ、緊急時とはいえ、異性に衣類を脱がされることに抵抗を感じる女性が多いことも事実。ブラジャーをはずさずに電極パッドを貼る、余裕があれば上からタオルや衣類をかけるなど、女性への配慮も忘れないように。また、心肺機能停止した女性が妊娠中だった場合、電気ショックが胎児に悪影響を及ぼすのではと不安になるが、母体が助からなければお腹の赤ちゃんの命も危険にさらされる。心停止が疑われる場合は、たとえ女性が妊娠中でもAEDを積極的に使用すべきだ。

 東京都多摩府中保健所が、女性に配慮したAEDの使用方法、さらにAEDの使用に対する心理的抵抗感を軽減できるよう普及啓発資材を作成しているので参考に供する。

東京都多摩府中保健所:女性に配慮したAEDの使用方法について

〈2021. 10. 18. by Bosai Plus

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