「マイ・タイムライン」普及に向け、
講師役を担う防災士に研修
日本防災士機構、日本防災士会と連携、
ワークショップで講師を担う防災士を対象に、オンライン研修会を開催
「タイムライン(防災行動計画)」とは、台風や大雨の水害などで想定される災害に対し、事前に防災関係機関が連携して状況を予め想定・共有したうえで、「いつ」、「誰が」、「なにをするか」を明確化し、防災行動とその実施主体を時系列で整理した計画だ。2012年に米国ニューヨーク市を襲ったハリケーン・サンディの際、被災した自治体が住民避難対策で「タイムライン」を適用して被害を最小限にとどめたことから注目され、日本でも2016年に国土交通省が指針をまとめ、普及が進んでいる。
いっぽう、「マイ・タイムライン」は、わが国では2015年9月の関東東北豪雨災害を教訓に、被災地・常総市で住民一人ひとりのレベルで、家族構成や生活環境に合わせて、「いつ」「誰が」「なにをするのか」をあらかじめ時系列で整理した「自分自身の防災行動計画」づくりが提唱されたことを機に、これも有効な事前防災・避難対策として全国的に注目され、自主防災と自治体の連携のもとで普及が進んでいる。
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全国各地・各コミュニティで活躍する防災士
地域特性に応じた『マイ・タイムライン』作成講師として期待
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国土交通省(水管理・国土保全局)は10月9日、「マイ・タイムライン」の普及・啓発に向け、「マイ・タイムライン」ワークショップ講師を担う防災士を対象とした研修会をWEB会議形式で開催した。これは昨年(2020年)10月から、同省とNPO法人日本防災士機構が共催、NPO法人日本防災士会が協力して昨年は3回開催、今回午前の部の奈良県・大和川は4回目。午後の部は福島県いわき市・夏井川を想定した作成ケーススタディで、参加防災士(視聴者)はそれぞれ約200名・約100名だった。
研修会(本紙は午前の部を取材)では冒頭、甘中繁雄・日本防災士会常務理事が挨拶、「水害が多発するわが国で防災・減災対策が急がれる。防災士は自ら率先避難者となり、地域の避難誘導や避難所開設に貢献することが期待されるところから、『マイ・タイムライン』の作成支援は防災士にとっても重要」とした。
続いて、西川雅規・国土交通省水管理・国土保全局河川環境課課長補佐が研修会の趣旨を説明、「国土交通省では、流域全体で水害を軽減させる治水対策『流域治水』という新しい考え方でソフト・ハード両面で防災・減災対策に取り組み始めている。『マイ・タイムライン』はソフト対策の重要なひとつ」とし、「全国で活躍する防災士にはそれぞれのコミュニティでの講師として、地域特性に応じた『マイ・タイムライン』作成の取組みを進め、地域住民の災害から命を守る適切な行動につなげてほしい」と述べた。
ワークショップは、「大規模水害に備える~マイ・タイムラインの普及~」と題して鮎川一史・一般財団法人河川情報センター参事が講演、午前の部は奈良県河井町の洪水ハザードマップ、河川は大和川など、午後の部は福島県いわき市の洪水ハザードマップ、河川は夏井川などの事例で「マイ・タイムライン」作成のポイント等を解説した。
国土交通省では「マイ・タイムライン」普及・啓発を図るため、全国展開の取組みを推進し、これまで380を超える市町村の自主防災組織で、防災担当役員などの住民を対象とした「マイ・タイムライン」作成ワークショップ開催を支援してきた。
その一例として、地方自治体の職員や地域のリーダーなどが、「マイ・タイムライン」の意義や重要性を住民等に分かりやすく伝えられる、「マイ・タイムラインかんたん検討ガイド」を公表。“基本のキ”として、3つのステージ――「(洪水に対して)基本的な逃げ方」、「(洪水に対して)複数の逃げ方」、「(洪水以外のリスクに対して)複数の逃げ方」のほか、常総市根新田地区の成功事例をもとに作成された完成イメージ(見本イメージ)を紹介。また、付録として、小学生でも自主的に理解し、作成できる「逃げキッド」やその解説動画のダウンロードサイトも紹介している。
下館河川事務所:マイ・タイムラインを作る(「逃げキッド」)動画紹介
〈2021. 10. 17. by Bosai Plus〉