国立映画アーカイブと国立情報学研究所
関東大震災100年の2023年9月1日までに
すべての所蔵映画フィルムを公開
国立映画アーカイブ(National Film Archive of Japan, NFAJ)と国立情報学研究所の共同研究として構築・開設し、国立映画アーカイブが運営する「関東大震災映像デジタルアーカイブ」(Films of the Great Kanto Earthquake of 1923)が、本年9月1日(関東大震災発災日、「防災の日」)、公開された。同アーカイブは、「巨大災害の実態と社会の変容を、現在の共有知にするためのウェブサイト」と銘打たれている。
関東大震災は、1923(大正12)年9月1日午前11時58分、相模湾を震源とする地震(推定M7.9)によって引き起こされた。関東地方を中心に激しい揺れに見舞われ、地すべり、土砂災害やがけ崩れによる建物の倒壊・流出、東京市や横浜市など都市部での同時火災延焼により、10万5千人に及ぶ死者・行方不明者、200万人を超える住居焼失者・避難者を生み出した巨大災害だ。
国や被災地の行政が救護・救援、治安維持に取り組むなか、地方府県は避難者の受入れや救護団の派遣を行い、民間団体やメディアによる救援や義捐金募集も活発に行われた。いっぽう、流言を背景に、住民の自警団や軍隊、警察の一部による殺傷事件が生じた。
流言は地震前の新聞報道をはじめとする住民の予備知識や断片的に得られる情報を背景に、流言現象に一般的に見られる「意味づけの暴走」として生じた。3日までは軍隊や警察も流言に巻き込まれ、また増幅した。
ちなみに「意味づけの暴走」とは、ある伝聞の状況を理解するために意味づけを試みることで、その意味づけが反復的に連鎖し拡大するコミュニケーションのひとつの形態だと言え、その段階では情報の正誤の判断はむずかしい――つまり、当時の情報入手手段が限られた状況で(主要情報源であった日刊新聞が発災からほぼ3日間、実質的に発行不能となった)、「流言」と「情報」とを分けること自体が困難であったことがある。
地震発生直後から政府内で議論が始まった復興計画は、紆余曲折を経たものの、都市機能を大きく変貌させることになり、今日の東京の原型はこのときに形成されたとも言える。いずれにしても、戦前日本において、社会のさまざまな領域に多大な変容をもたらすきっかけを与えたのが、関東大震災という大災害だった。
「関東大震災映像デジタルアーカイブ」では当時の文部省が監修し、全国規模での普及を図った長篇記録映画『關東大震大火實況』(1923年、文部省社會教育課製作・配給、64分)の全篇を観ることができる。また、震災発生の1923年9月1日から100年の節目を迎える2023年9月1日までに、2年をかけて、国立映画アーカイブで所蔵する関東大震災関連のすべての映画を公開していく予定とのことである。
国立映画アーカイブ:WEBサイト「関東大震災映像デジタルアーカイブ」
〈2021. 10. 08. by Bosai Plus〉