介護職員向け防災研修――防災士講師への期待も
2020年7月の熊本豪雨で熊本県を流れる球磨川水系で氾濫が発生し、球磨村の特別養護老人ホーム(以下、「特養」)「千寿園」では、水没した施設で入所者14人が犠牲となった。千寿園のある球磨村渡地区では浸水の深さが最大9mに達したとみられている。これを受けて厚生労働省などが同年、全国の特養を対象に実施した災害時の対応について調査、多くの施設で災害時の対応担当を置いているにもかかわらず防災知識が十分に普及していない可能性があることがわかった。
そこで厚生労働省は、地域の医療と介護を充実させるために各都道府県に設けて財政支援する地域医療介護総合確保基金に、防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心確保の一環として、「介護施設での防災リーダー養成等支援事業」を追加した。施設の災害対応力向上をめざして、都道府県にその活用を呼びかけている。
厚生労働省によれば、その背景・具体策として、次の4項目をあげている――
① 介護施設等は、自力避難困難な人が多く利用していることから、利用者の安全を確保するため、災害に備えた十分な対策を講じることが必要
② 介護施設等の介護職員については、災害発生時において、現場で避難のタイミングなどを判断することが必要となるため、防災知識の習得などが求められる
③ そのため、介護職員向けの防災研修を都道府県が行うことや、公益団体などが実施する介護職員向けの防災研修の受講を支援する
④ 都道府県において、介護施設などから、防災に関する相談を受けるための「防災相談窓口」を設置することを支援する
研修は、特養やグループホームの施設長、介護主任らリーダー級の職員を主な対象に想定。研修内容は地域特性を活かしつつ、地元の防災士や災害に詳しい学識経験者らが災害と防災の基礎知識、自治体や気象庁が発表する各種情報の理解など。また、避難対応、入所者の要介護状態に応じた移動方法などの実践的なノウハウを確認することも含まれる見通しだ。
厚生労働省:2020年度 厚生労働省第三次補正予算案(参考資料/P. 6に「介護施設等における防災リーダー養成等支援事業」)
〈2021. 09. 24. by Bosai Plus〉