日本防災士会、防災士研修センターなど
関係組織との連携強化、「地区防災計画」に参画
【 社会の信認を得て 地域防災の各レベルで多様な役割 】
●「防災士、防災士制度」とはなにか 「自助・共助・協働」の理念の誕生
認定特定非営利活動法人 日本防災士機構はこのほど、本年(2020年)11月に986人の新防災士が認証されたことにより、防災士認証者数の累計が20万0022人になったと発表した。防災士制度が発足後、防災士第1号認証が2003年10月で、ほぼ17年で20万人の大台に達したことになる。
防災士制度は、わが国で災害ボランティアの気運が本格化することになった阪神・淡路大震災の教訓を契機として構想された。「民間防災=地域防災」の発想を原点とする「志」のもとで、「防災士制度」という民間資格を通じて防災人材の養成を実現しようとするひと握りの有志がこのプロジェクトの核となった。その呼び掛けに共鳴する各界の篤志がまさにボランティアの精神で次々と制度発足事業に参画、防災士制度の創成に向けて連携が形成され、当初は任意団体(のちNPO法人)防災情報機構(会長:石原信雄・元内閣官房副長官 *当時)で構想が集約され、この構想は、のちの日本防災士機構(のちNPO法人)の創設に結びつく。
防災情報機構は2001(平成13)年4月に「防災士制度検討委員会」(委員長:廣井脩東京大学教授 *当時)を設置し、「防災士」がなぜ必要なのかという原点から制度検討を行った。そして同年12月、同委員会は検討内容をとりまとめ、災害に立ち向かうためには「自助」「共助」「協働」を理念とする防災士という仕組みが必要とされていると結論づけ、防災情報機構に対して以下の骨子からなる答申書を提出した。
- 防災士制度を推進するために、防災をはじめとする各分野の指導者に幅広く呼びかけて民間による国民運動を形成していくこと
- 防災士資格を認証する条件を明確にすると共に、防災士教本の編纂、防災士養成カリキュラムの構成、防災士資格取得試験の実施を行うべきこと
- 防災士養成事業の公共性を高めるために、新しく「防災士」に特化した新しい独立した組織の設立を行うべきであること
この答申を受けて、防災情報機構は防災士制度全般を管理・運営する組織として、新たに「日本防災士機構」を2001(平成13)年12月に設立した(設立時会長:石原信雄 *前出)。
ちなみに、ここまでの「防災士 小史」において、防災士構想を発案し、事業の進展とともに大きなソーシャルプロジェクトにまで具体化させた現・日本防災士機構専務理事である玉田三郎氏が果たした役割は大きく、“防災士制度の生みの親”とする関係者が少なくないことを特筆しておく。
日本防災士機構は、防災士養成事業の発足にあたっては、その運用骨子を、①防災士・防災士を養成する団体を認証する機関「防災士認証委員会」を設置する。②「防災士教本」を制定、2003(平成15)年版を編集し創刊する。③防災士養成事業は機構が直接行わず、自治体、大学等の教育機関、及び民間の防災教育運営法人を対象として防災士養成機関にて認証して実施する。――とした。
これにより、「防災士研修センター」という民間による防災士養成研修のモデル機関が確立され、防災士制度は本格的に始動することになった。なお、2002(平成14)年7月、日本防災士機構は東京都から特定非営利活動法人として認証され、現在に至る日本防災士機構が誕生、法人設立時会長に貝原俊民氏(前・兵庫県知事)、法人設立時理事長・玉田三郎氏(前出)が就任している。
●「防災士」が社会的信認を得て急成長 その背景に「災害大国 日本」
防災士研修センターが運営する初の防災士養成研修講座は2003(平成15)年9月、全国特定郵便局長会(現・全国郵便局長会)の全面的協力を得て東京都千代田区の憲政記念会館で実施された。養成講座は防災士養成ガイドラインが規定する12講目のカリキュラムを3日間の行程で実施され、最終日に第1回防災士資格取得試験が実施された。この結果、防災士216名が認証され、初めての防災士を世に送り出した。
防災士制度がスタートした防災士養成事業初年度(2003年度)の防災士認証登録者数は、男性1499名、女性82名の1581名であった。
いっぽう、2003(平成15)年の防災士誕生に始まり、防災士が活動する組織となる任意団体「日本防災士会」が、防災士第1号の誕生から約1年後の2004(平成16)年10月、防災士有志によって設立された。防災士として活動し、地域に貢献するためには、一人ひとりではその働きに限界があるが、防災士相互の協力関係を強くすることで、自治体や防災関係機関との連携を深め、地域防災力の向上に大きく貢献しようという設立趣旨が掲げられた。当初2000名程度であった会員は今日、約1万名を数える。
防災士数が近年飛躍的に伸びた背景には、東日本大震災をはじめとする近年の災害頻発があり、自治体や大学が地域防災力の向上のため、あるいは社会貢献のために、民間資格ではあっても、あえて市民・学生の取得費用を公費で支援するという決断をしたことにある。この動きは、災害救援のプロである消防官や警察官、日本赤十字社員などの公的機関における防災士資格取得費用の補助特例制度等にも反映されており、防災士資格の質とレベルの高さの信認性が確立されたということでもある。
防災士はいま、さらなる高みをめざしている。防災士累計10万人達成には、防災士第1号誕生から12年8カ月を要したが、20万人の達成はわずか5年弱であった。30万人の達成をめざすなかで、防災士の視界に新しい展望が拓かれることはまちがいない。
〈2020. 12. 15. by Bosai Plus〉