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文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)
宮城県沖を震源とした地震と津波をもたらした「東日本大震災」(2011年3月11日)は、広大な被害範囲と膨大な犠牲者数で日本や世界を震撼させた災害でした。この地震は国の同規模の地震被害想定をはるかに超え、多くの地方自治体が地震対策への見直しを迫られることとなりました。
愛知県もこれを契機に「南海トラフ地震」(東海地震、東南海地震、南海地震)への防災・減災対策に関して「地震から県民の生命・財産を守る強靭な県土づくり」を目標に掲げた「第3次あいち地震対策アクションプラン」(以下、第3次アクションプラン)を策定しました(愛知県ホームページ、以下HP 危機管理・国民保護「第3次あいち地震対策アクションプラン」参照)。
南海トラフ地震の長期評価(2018年1月1日現在)は、南海トラフ領域においてマグニチュード8~9クラス規模の地震が10年以内は30%程度、30年以内では70~80%発生すると算定したものです。愛知県では2002年に地震防災対策の強化地域が58市町村(当時)と増えたことから、まとまった行動計画として第1次アクションプランを、次いで2007年に具体的な減災目標を掲げた第2次アクションプランを策定しました。そして第1次、2次のアクションプランに東日本大震災の教訓を取り入れ、リニア中央新幹線の開業(2030年頃)も見据えて発表されたのが第3次アクションプラン(計画期間は2015年~23年)です。
具体的な減災目標は、
死者数 約6400人 → 約1200人(約8割減を目指す)
建物の全壊・焼失棟数 → 約94000棟→約47000棟(約5割減を目指す)
とし、達成するために4つの視点に分けて重点テーマを設定しています。
視点1「被害予測調査の結果を踏まえ、減災効果を高める」
住宅・建物の耐震化や家具固定、ゼロメートル地帯がある本県における浸水・津波からの迅速な避難、河川・海岸堤防などの耐震化促進が挙げられています。
視点2「東日本大震災における課題等への対応を充実する」
災害時の行政機能の維持や防災活動拠点の充実、避難所の運営、支援物資の円滑な供給や配送などがテーマです。
視点3「日本の成長をリードするあいちの産業を守る」
産業活動維持・継続の確保や復旧・復興のための事前準備の推進がポイントです。
視点4「防災・減災の主流化・日常化を進め、防災協働社会を構築する」
防災協働社会の形成の促進、消防団の充実強化といった自助・共助・協働の地域防災がテーマとなっています。
愛知県は、東日本大震災の発生後には職員を派遣し、現地で実務に当たった職員から聞き取りをして得た教訓を第3次アクションプランに反映させています。南海トラフ地震への危機感もあり、日本で一、二を争う防災・減災意識が高い県として有名です。
●料理名:味噌煮込みうどん(愛知県)
赤褐色の豆味噌:八丁味噌を使用した「味噌煮込みうどん」は名古屋ならではの郷土料理で農林水産省の郷土料理百選にも堂々と選ばれています。八丁味噌の伝統製法を守って造っているのは「カクキュー」と「まるや八丁味噌」の2社です。カクキューのHPによれば「八丁味噌は、岡崎城から西へ八丁(約870m)の距離にある岡崎市八帖町(旧・八丁村)で、江戸時代初期より、旧東海道を挟んで向かい合った2軒の老舗が伝統製法で造り続けている豆みその銘柄です。大豆と塩のみを原料に、大きな杉桶に仕込み、天然の川石を山のように積み上げて重石とし、天然醸造で二夏二冬(ふたなつふたふゆ)以上の間熟成させます」とあります。色の濃さだけを見るといかにもしょっぱそうなのですが、舐めてみると驚くほどまろやかなのは長期熟成をさせるからです。
仕込みは現在でも手作業が多く大変で、まるや八丁のHPでは石積み職人の方たちが円錐形に積む作業風景を見ることができます。また2社とも海外にも出荷し、今や八丁味噌は世界的にとても有名な味噌となりました。
八丁味噌が生まれた背景は①矢作大豆と呼ばれる良質な大豆、②美味しい天然水、③吉良地方の塩 の3つが揃っていたためだといわれています。水分が少なく長期保存に優れ、三河武士の兵糧としても愛されたとカクキューHPでは紹介しています。
★味噌煮込みうどんと鍋焼きうどんの違い
家庭料理だった味噌煮込みうどんがお店で出されるようになったのは、明治時代だとされています。私は昔、名古屋出張だった際にお店に入り、待望の味噌煮込みうどんを頼みました。運ばれてきたグツグツと煮える濃い赤味噌の色にまずは驚き、食べてみてうどんの腰の強さに二度びっくりしました。なぜ、あれほどにうどんの腰が強いのか!長年謎でしたが調べてみると、味噌煮込みに使ううどんは小麦と水のみで塩を使わないことが分かりました。塩を入れないとゆでても柔らかくなりにくいのです。鍋焼きうどんは柔らかいうどんが特徴ですが、あれはお塩入りのうどんだからなのです。小麦と水だけのうどんを使用するのは、山梨県の「ほうとう」や以前ご紹介した群馬県の「おっきりこみ」も一緒だそうです(愛知県めんるい組合HP参照)。
今回のレシピは愛知県HP、食育ネットあいちの味噌煮込みうどんレシピを参考にしました。
八丁味噌とだし汁、砂糖を加えて煮立てた後、具を入れて煮込み、最後は卵を落とします。私は今回卵を入れませんでしたが卵無しでも十分優しいまろやかな味わいでした。
塩分が他の味噌より高めに思われがちな八丁味噌ですが、実は他の味噌の塩分濃度は12%程度、八丁味噌は11%程度で少ないのです。他の味噌よりも大豆が多くうまみ成分のアミノ酸が多く含まれているので味は濃く感じます。しかも上記でご紹介した2社はもちろん無添加。体によく、美味しい八丁味噌をお味噌汁にも入れて日常的に取り入れたいものです。2社ともに通信販売で購入できますし、デパートの地下や自然食のお店で取り扱っているところも多く比較的手に入りやすいといえます。
〈2018.12.07〉
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