Photo by くにろく
文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)
愛知県は日本の中央に位置し、人口748万4094人(2015年10月1日現在)と全国で第4位(東京、神奈川、大阪の次に多い)、中でも名古屋市は232万2250人(2018年12月1日現在)と中部地方最大の人口を誇る大都市です(名古屋市ホームページ、以下HP 「名古屋市の人口」参照)。また、トヨタ自動車など日本を代表する大企業があり、「ものづくり」が盛んな土地でもあります。今回は、そんな愛知の過去の災害の中から被害が大きい地震と風水害を取り上げます。
1891(明治24)年10月28日、日本の内陸では最大級の地震「濃尾地震」が発生しました。震源地は本巣郡根尾谷(現 岐阜県本巣市根尾 ルビ:ぎふけんもとすしねお)でマグニチュード(以下、M)は8.0、愛知県尾張地方と岐阜県美濃地方を震度6の強烈な地震が襲い、北海道を除く全国で揺れたと記録されています(内閣府防災情報のページ「1891 濃尾地震」参照)。内陸活断層の地震は断層の真上が激しく揺れる特徴があり、濃尾平野の地盤が軟弱だったことから愛知県では犠牲者2638名(全国では7237名)、家屋全壊8万5511棟、家屋半壊5万5655棟の被害が出ました(愛知県HP「過去の災害情報」参照)。愛知県防災局防災危機管理課が作成したHP「歴史地震記録に学ぶ 防災・減災サイト」には、濃尾地震によって犬山城(1537年天文6年建立)の石垣、櫓、天守閣が崩壊したことや、名古屋地区では地割れ、火災、江川の氾濫が相次ぎ、鳴海町の井戸水は2m以上も増水し、岩塚町の井戸水は微温湯となったと紹介されています。
一方、風水害で濃尾地震を超える被害を出したのが1951年(昭和34年)9月26日の「伊勢湾台風」でした。上陸時の中心気圧は日本の台風史上3番目の929.6hPa(ヘクトパスカル)、伊勢湾周辺では最大風速が秒速40m以上の暴風となり、三河山間部では200mm以上の大雨が降りました。また伊勢湾に面した名古屋港が3.89mの高潮を記録し、海水は堤防を乗り越え、あるいは決壊させて日本最大の海抜ゼロメートル地帯(名古屋市とその周辺)を直撃して未曾有の大災害を引き起こします。愛知県の犠牲者は3168名(全国では5098名)、行方不明92名、負傷者5万9045名となり、家屋全壊は2万3334棟、床上浸水5万3560棟と被害額は3224億円にものぼりました(内閣府防災情報のページ「1959 伊勢湾台風」)。1930年(昭和5年)の室戸台風(911.8hPa)や1945年(昭和20年)の枕崎台風(916.6hPa)より小さい規模であったにもかかわらず、伊勢湾台風の人的被害はそれらの犠牲者数を超える明治以降最大でした。多くの命を奪った伊勢湾台風により、国や地方自治体はそれまで脆弱だった高潮対策に積極的に取り組むようになりました。そしてこの台風災害を契機に「災害対策基本法」が制定されるなど日本災害史上にとって大きな転換期となった巨大災害だったのです。
●料理名:鬼まんじゅう(愛知県)
愛知県といえば三英傑と呼ばれる織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の出身地として有名です。そして名古屋市が発展を遂げたのは1600年に関ヶ原の戦いで勝利した家康が清須にあった町を名古屋へ移転したのが始まりとされています。経済が発展するにしたがい文化が花開き、特色ある郷土料理が数多く生み出されました。味噌カツや味噌煮込みうどん、ひつまぶし、きしめんは名古屋を代表する料理です。さらに今回ご紹介する「鬼まんじゅう」通称「鬼まん」は、愛知県はもとより東海地方で非常に愛されているソウルフードなのです。鬼まんじゅうの名前の由来は角切のさつまいもが飛び出している様子が鬼や金棒をイメージさせるからという説があります(名古屋観光情報 名古屋コンシェルジュ参照)。また愛知県HPの「食ネットあいち 鬼まんじゅう」には、「飢えをしのぐだけでなく、鬼を封じ込めて食べてしまえ」との願いが込められていると書いてありました。愛知県は戦前からさつまいもの栽培が盛んで、お米が貴重な時代に鬼まんじゅうを主食として食べていたこともあるそうです。レシピは上記の愛知県HP 食ネットあいち 鬼まんじゅうを参考にしました。
★別名「芋ういろ」の鬼まんじゅう
鬼まんじゅうをつくる前のイメージは「フワフワの蒸しパンみたいなおまんじゅう」でした。ところが、さつまいもの角切りと粉類、水を合わせたものを粉気がなくなるまで混ぜ続けると粘りがどんどん出てきてねっとりとしてきます。もう、この辺りになるとどう考えても出来上がりはフワフワなお菓子になるわけがない!と思いました。これを小分けにし、クッキングシートに乗せて蒸し器に入れて15分。ドキドキしながら蓋をあけるとそこには見るからに「もっちり」としたおまんじゅうが鎮座していました。「このもっちもちの食べ応え満点の食感・・・どこかで食べたことがあるぞ!?」と思ったら、あの「ういろう(ういろ)」の食感でした。鬼まんじゅうのレシピにも「鬼まんじゅう(芋ういろ)」と書いてあったのはこれか!と気がつきました。ポイントは粉気がなくなるまでひたすら具材を混ぜて滑らかな食感にすること。角切りリンゴを加えたり砂糖を黒砂糖にしたりと様々なレシピがあるようです。
〈2019. 01. 07.〉
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