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文・料理:大塚 環(本紙特約ライター/防災士)
石川県は4,186.05平方㎞の面積を持ち、金沢市を含む11市8町から成っています。県で最も高い山、白山(標高2702m)には日本最大級の猛禽類で県鳥でもあるイヌワシが生息し、白山を中心とする白山国立公園は石川、福井、岐阜、富山の4県にまたがり2000m級の山々が連なる雄大な山岳自然公園です(一般社団法人白山観光協会ホームページ、以下HP参照)。海では春にサヨリやカレイ、夏はイカ、秋には甘エビ、冬はズワイガニやコウバコガニ、ブリが旬を迎え、土壌も肥沃でブランド米のコシヒカリの産地でもあります(石川県HP「石川県の概要」参照)。
そんな石川県の過去の自然災害として真っ先に挙がるのが地震です。金沢地方気象台の「石川県に影響を及ぼした過去地震」には当県と近隣で発生した主な地震が掲載されています。1729年(享保14年)8月1日の能登・佐渡で発生したマグニチュード(以下、M)6.6~7.0の地震により珠洲郡・凰至郡では破損したり潰れたりした家791軒、潰れた蔵16軒、山崩れ31ヵ所計1733間(1けん=1.8m。1733間は約3119m)の他、犠牲者が5名出たと記録されています。また輪島村は593軒中28軒が潰れ、半潰も86軒となり能登半島の先端で大きな被害が報告されています。
1799年(寛政11年)6月29日の加賀の地震(「金沢地震」とも呼ばれる。M6.0)は金沢で揺れが上下に激しく起こり、石灯籠の竿石が6尺(1.8m)も飛び上がり、地割れが発生しました。金沢城では石垣の孕みが22ヵ所、崩れは6ヵ所見られ、城下町でも潰れた家26軒、破損した家4169軒、土蔵損潰992軒と甚大な被害を出しています。城下町周辺の河北潟の砂丘は崩れ、粟崎筋では砂地が割れて水が噴出した場所もありました。この地震は「煙草を3服吸う間続いた」と伝わっているほど長かったようです。
近年では2007年(平成19年)3月25日に能登半島沖で発生した「能登半島地震」(M6.9)が記憶に新しく、震源は深さ11㎞、七尾市、輪島市、穴水町で最大震度6強、志賀町、中能登町、能登町で震度6弱を観測しました。古い木造家屋や土蔵の全壊、アスファルトやコンクリートの沈下が起こり、石川県の犠牲者は1名、重症88名、軽傷250名、住家全壊686棟、半壊1740棟、一部損壊2万6956棟と家屋被害が顕著な地震でした。
金沢地方気象台によれば、当県で発生する地震は能登半島地震のように地上からの深さが20kmより浅い場所で発生する「陸域の浅い地震」が多く、規模が小さくても震源地周辺では大きな被害が出るとのことです。
能登半島地震をきっかけに石川県は①初動対応に不可欠な情報の収集と共有化、②避難所、仮設住宅等での二次災害防止対策、③現地等での調整機能の確保とコーディネーターの配置、④公共インフラ・ライフライン、防災拠点の耐震化・早期応急復旧、⑤共助による災害時要援護者支援等、⑥平素の防災教育と訓練など6つの分野について石川県地域防災計画の見直しが行われました(石川県HP「平成19年能登半島地震災害記録誌」参照)。
●料理名:なすのオランダ煮(石川県)
金沢は、もともとは農民による一向一揆の拠点として建てられた寺院「金沢御堂」(1546年、天文15年創建)を中心に発展した寺町です。1580年(天正8年)に織田軍の柴田勝家と甥の佐久間盛政らが金沢御堂を攻め落としてここに金沢城を築城します。しかし盛政が入城した直後に賤ヶ岳(しずがたけ)の戦いで勝家らは破れて羽柴秀吉側が勝利し、戦いの最後に秀吉側についた前田利家が1583年に能登国から移り金沢城の城主となりました。
以降、加賀藩前田家が14代続き、長い繁栄を誇るのです(石川県HP「金沢城と兼六園」参照)。金沢城の天守は落雷で焼失していますが、石川門(焼失し1788年に再建)や三十間長屋、鶴丸倉庫は昔のままに残り、国の重要文化財に指定されています。金沢城は今も石川県の人々に愛されるシンボルとして健在です。
ところで金沢は「加賀百万石」というフレーズが有名ですが、利家が金沢城主になった頃には百万石の大名ではありませんでした。関ヶ原の戦いなどで領地が増え、石高が増加したのです。将軍である徳川家康は四百万石、前田家はそれに次ぐ石高で大名の中で1位の大大名でした。ちなみに石はお米の単位で百万石は米が約15万トン、現在のお金で換算すると約600億円相当だとも言われています。
財政が豊かで、米、野菜、魚と食糧にも困ることのない加賀では様々な独自の文化が花開きます。藩政時代から現在に伝わっているものの一つが目にも鮮やかな加賀野菜です。加賀太きゅうり、源助だいこん、赤ずいき、金時草、甘栗かぼちゃ、へた紫なすといった15品目がブランド認定されています。特になすは昔から余るほどに収穫できたため石川県ではよく食卓に上りました。
そこで今回の郷土料理はなすが主役の「なすのオランダ煮」です。(農林水産省HP うちの郷土料理「なすのオランダ煮」参照)。加賀野菜のへた紫なすを使うと煮くずれがしにくいそうですが、今回は入手しやすい中長なすで調理しています(農林水産省HP ナス 「こんなにいろいろあるんだ!」参照)。
★長崎から伝わったオランダ煮
「オランダ煮」は長崎から伝わった調理方法で「西洋風の煮物」という意味です。油で揚げた、あるいは油で炒めた食材を甘辛く煮る料理全般をそう呼びます。
今回は上記にリンクした農林水産省HP うちの郷土料理「なすのオランダ煮」のレシピを参考にしました。材料も少なくて済み、とても簡単に作ることができます。おかずがもう一品欲しい時に便利な料理です。
ポイントは、①なすを水に浸けてアク抜きする、②それを沸騰した湯に入れ、茹でてザルにあけて水にとるという2点です。この手順を守ればアクがとれて特有のえぐみがなくなり、上品な味わいになります。辛めが好きな方は赤唐辛子を多めに入れるとピリッと大人の味になります。また出来上がりにごま油をたらしてみたり、すりおろした生姜を乗せたりとアレンジが利くのも嬉しい一品。
金沢ではどの家庭も冷やして食べています。なすの皮の紫紺色には抗酸化作用のあるポリフェノールが含まれていますし、体を冷やす野菜なので夏にぴったり。ここ数年は5月や6月にも真夏日があるほど暑いため、体の余分な熱をとり、夏バテを防ぐなす料理が活躍しそうです。ビールやハイボールにも合いますよ。
〈2020. 06. 07.〉
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