地域の地球科学的な生い立ち、災害環境を知る
わが国の防災を主導する防災先進県の研究者が編著
静岡大学防災総合センターのセンター長・岩田孝仁教授、同理学部・北村晃寿教授、教育学部・小山真人教授が編者を務め、静岡大学教員が中心となって制作した『静岡の大規模自然災害の科学』(静岡新聞社・刊)が去る3月31日、出版された。
静岡県の海溝型地震、内陸・直下地震、津波、火山噴火、土砂災害に関する科学的知見とその防災対策についてまとめたもので、静岡県において大規模自然災害をもたらしうる現象の最先端の科学的知見を普及することをめざしている。
南海・駿河トラフで起きるマグニチュード8の巨大地震への防災対策として、1978年に大規模地震対策特別措置法(大震法)が制定され、この大震法に基づき、静岡県全域の市町村が地震防災対策強化地域に指定されてから40年が経過した。その間に、1995年1月17日に兵庫県南部地震(阪神・淡路大震災)が起き、さらに2011年3月11日には日本観測史上最大規模の東北地方太平洋沖地震と巨大津波により、東北地方太平洋沿岸地域で激甚災害が発生した(東日本大震災)。
この災害を教訓に、国は南海トラフ巨大地震・津波に対する防災対策を大幅に変更している。これらの一連の大規模災害で静岡県の防災対策や県民の防災意識は大きく変わった。
こうした状況変化を踏まえ、同書は4部構成となっている。第1部では、東北地方太平洋沖地震と巨大津波を解説、第2部では、静岡県の地質、地震、活断層、過去4000年間の津波の発生履歴を解説している。第3部では、富士山と伊豆東部火山群の火山活動とそれらの活動に対する防災対策、第4部は1978年の大震法の制定の経緯からその後の防災対策、土砂災害について解説、さらに温泉メタンガスを利用した地域防災拠点を紹介。
静岡大学では、静岡県住民はもとより、県外の防災リーダーや地域防災活動家、行政で防災対策を企画する幅広い人びとに同書を手にとってもらいたいとしている。安全で安心して暮らせる持続可能な地域社会の実現に向けて、地域の地球科学的な生い立ちや災害環境をよく知り、過酷な事態に遭遇したときに身近な環境でなにが起きるのかを考えるヒントになることは確かだろう。
ちなみに同書は、2020年4月に静岡大学に発足する未来社会デザイン機構からの出版助成で手頃な価格での提供が可能となったという。
単行本:255ページ、本体定価:1600円、発売日:2020年3月31日
〈2020. 04. 18. by Bosai Plus〉