関西大学・永松伸吾ゼミ学生が
尼崎鉄工団地でインターン
 従業員100%の生存率をめざして創意工夫

“現場主義”で制作した中小企業むけ減災ツール

南海トラフ巨大地震に備えて――ほかの自治体の中小企業にも参考になる試み

 地域経済の持続的な発展に向け、自然災害から中小企業の経営資源を守り、事業の中断を防ぎ、被害を最小限にする減災の必要性が高まっている。とくに南海トラフ巨大地震の発生が確実視されることから、関西大学社会安全学部・減災政策研究室(永松伸吾ゼミ)は尼崎市と協働して、中小企業支援の減災対策ツール『企業のための減災ガイドBOOK』を制作した。同ガイドは、尼崎市内の企業および施設などで2月末から配布・配架されている。
 そのポイントは次の3つ。
・南海トラフ巨大地震を想定した、尼崎市内の中小企業向けに特化した減災ガイドBOOK
・尼崎市と社会安全学部・減災政策研究室(永松伸吾ゼミ)による共同制作
・書き込むことで事業所での減災対策を考え、共有することができる簡便で実用的な仕様

 今回、事業継続力強化支援の一環として制作されたガイドBOOKは、設問に沿って書き込みをし、事業所内で共有することで、事前の減災対策および被災後における早期の事業再開について、意思統一が図れるものとなっている。

P5 1 関西大学・永松ゼミと尼崎市が協働制作した「企業のための減災ガイドBOOK」(表紙) - 関西大学と尼崎市が連携「企業のための減災ガイドBOOK」
「企業のための減災ガイドBOOK」表紙。表紙からして、「いつ・どこへ逃げるか」を宣言する構成

 同ガイドの制作にあたって、ゼミの学生たちは、まずは中小企業の経営実態を知ろうと、2019年9月に市臨海部の尼崎鉄工団地でインターンを実施。そこで「災害に対する情報をどう活かせばいいかわからない」、「対策をしたいが時間がない」、「従業員間での共通認識が持てていない」といった現場の課題を確認。目標とする「鉄工団地の従業員の生存率100%」をめざすなかで、「置かれた状況の異なる各企業が、適切な災害対策の一連の流れを簡単に遂行できるようにしたい」という開発コンセプトを明確化した。

 ガイドBOOKを制作するにあたっては、「どうすれば”本当に”使ってもらえるものになるのか」をとくに意識して工夫を凝らし、行動方針を決定するまでの考える過程が重要、また、命を守り、被害を抑えるために、いま行動すべきことの発見を重視した。
 ガイドは、表紙の段階で「いつ」「どこに逃げるのか」を宣言する構成となっている。ただ指定された避難場所に逃げるのではなく、それぞれの企業が自分たちに合った避難計画を考えられるという点が最大の特長。与えられた時間内で、地震発生後でもできることとできないことに分類し、必要な対策や弱点を再確認できる内容となっている。
 ガイドは、対策をより実効性のあるものにするために定期的に見直したり、ガイドをもとに訓練を実施して、ブラッシュアップしていくことが必要ともしている。

>>関西大学:尼崎市減災対策ツール「企業のための減災ガイドBOOK」を発行 >>「企業のための減災ガイドBOOK」(PDFダウンロード用)

〈2020. 03. 04. by Bosai Plus

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