斜面崩壊――基岩部の“地層風化”は想定内か
市街地のがけ崩れ、土砂災害、さらには液状化
逗子市の「日常性の悲劇」は大規模災害で広域同時多発化する?
日常性に潜む災害リスクが突然、露出した。2020年2月5日午前7時58分、神奈川県逗子市池子2丁目に建つマンション「ライオンズグローベル逗子の丘」の東側斜面が崩壊、側面の市道を通学のために歩いていた18歳の女子高校生が土砂に巻き込まれて死亡した。崩落した土砂量は約68t。この斜面は逗子市が、土砂災害警戒区域に指定していた。
私たちは日常生活のなかで、こうした市街地の急傾斜地の下の歩道を歩くことはよくある。そして、そこが擁壁などが施されていれば、“なんとなく安心”して通り過ぎる。しかし――
例えば東京都の土砂災害警戒区域は1万5千カ所以上にのぼる。そのうち、民家が近接し、住民の命に危険を及ぼすおそれがある場合に指定される「レッドゾーン」(特別警戒区域)は約1万3600カ所を占める。その多くは山間地の多い青梅市や八王子市などで指定されている。ところが、典型的な都心オフィス街で、文字通りコンクリートで固めたまちに見える港区でも、警戒区域は100カ所を超える。水が高きから低きに流れるように、急斜面は常に、崩落のおそれがあると 思わなければならない。
逗子の土砂災害がそうであったように、大雨や地震による予兆がなくても、である。現段階で、その崩落の原因として、「斜面基岩部の凝灰岩が風化」していた可能性が指摘されている。建物には経年劣化があり、中古住宅市場では築年がチェックポイントになるが、不動産評価において、土地の“風化”は査定対象になり得るのだろうか。
逗子市の現場は高さ約15mの急斜面で、斜面の上に建つマンションを下から見上げるとまさにがけの上に屹立する城である。斜面はマンションの敷地に含まれるため、民有地として住民の管理組合が管理しているという。
基本的に、警戒区域指定された場所の管理は所有者に委ねられるが、私有地の場合、どの程度の管理責任が問われているか、このような“災害(事故?)”の再発を防ぐための課題・対策が、改めて浮上する。
さらには、首都直下地震や相模トラフ地震で、こうした斜面は耐えられるのだろうか、と。
>>逗子市道の主要な道路に接する土砂災害警戒区域(イエローゾーン)の緊急調査
〈2020. 02. 16. by Bosai Plus〉