「救助が間に合わない」 をなくせ!
重機を使いこなす市民を養成/派遣
重機設備と「市民の力」で被害拡大・集落孤立を防ぐ「VTC」が開所
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災害時の人命救助タイムリミット72時間の克服へ
消防士をはじめ 防災士・現役学生など 重機を扱える市民を養成&派遣
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公益財団法人日本財団ボランティアセンター(以下、「日本財団ボラセン」)は、技術系災害ボランティア人材の育成を行う専門施設の2年の整備期間を経て「日本財団災害ボランティアトレーニングセンター(VTC)」の開所式を3月7日、茨城県つくば市で開いた。
日本財団ボラセンによれば、「VTC」設立の背景は次のようだ――
「2011年東日本大震災の際に、土砂や瓦礫に緊急車両が阻まれ迅速な救出が進まなかった経験から、各都道府県から集まる「緊急消防援助隊」への重機配備が総務省によって進められた。しかし、昨年の能登半島地震では19都府県の援助隊のうち半数を超える大隊で、配備された重機が使用されていなかったことが判明、各地の報道や国会でも問題視された。背景には人手不足や消防の重機操作の技術不足などが挙げられ、実際の被災地では、専門技術を持つボランティアが道路復旧した後に消防・警察車両が通行している状況である」。
「いっぽう、災害時の人命救助タイムリミットは72時間とされている。捜索や支援物資の供給など救助の前にまず必要とされるのが瓦礫撤去と道路復旧の作業であり、それに欠かせない存在が重機だ」。


このような状況や自然災害が頻発する近年の状況を受けて、日本財団ボラセンが設立する「VTC」では、一般的なボランティア活動ではできない専門的な作業ができるように、ショベルカーやダンプカーなど15台の重機を配備。災害支援に関心のある市民や職場で十分な操縦訓練環境がない消防士など、個人が重機の操縦練習や災害支援の専門的な知識・ノウハウを学べるトレーニングセンターとなる。
さらに、人材育成のみならず、実際の災害発生時には、配備する重機・資機材の貸し出しなど、実働機能も有する国内初(同団体調べ)の施設になるという。
3月7日の開所式では、公益財団法人日本財団の笹川陽平会長、日本財団ボラセン・山脇 康会長らが参列・挨拶したほか、VTCの内覧・施設概要・今後の施設活用計画について説明が行われ、その後、配備された重機前でのテープカットと操縦デモを実施した。また、同施設の一般利用者として、災害ボランティア経験のある学生や、過去の震災時に災害ボランティアの一員として活躍している現役消防士も参加した。
災害支援・人材育成の拠点となる「日本財団災害ボランティアトレーニングセンター(VTC)」は茨城県つくば市南原2番地(国土交通省国土技術政策総合研究所前)にあり、都心や関東からでもアクセスがよく、様々な訓練ができる広大な土地を擁する。災害現場など特殊な環境での重機操縦のトレーニングが可能な訓練フィールドに加え、座学を行う研修棟、復旧活動に必要な重機やダンプ・資機材を配備。小型重機から大型重機まであらゆる状況下でも対応できるように整備された環境のなかで、重機やチェーンソーなど、水害や震災などの復旧活動で必要となる専門的な技術を習得できる講習会を実施する。また災害時には、被災地で使う重機や資機材を、技術系災害ボランティア団体に貸し出す。

日本財団ボラセンではこれまでに、東日本大震災の被災地や地震や台風被害などで被災した全国各地の災害現場に延べ1万5千人以上(2025年2月末現在)の災害ボランティアを派遣してきたという。2024年は令和6年能登半島地震と奥能登豪雨の被災地である石川県珠洲市と輪島市、豪雨による水害被害のあった山形県酒田市にボランティアの派遣を行い、技術系災害ボランティア団体に重機の貸し出しを行った。
また、災害支援人材の育成にも積極的に取り組み、災害現場でのボランティア活動をしたことがない初心者向けの研修から、工具の使い方や被災者との接し方など、災害現場で必要な知識やスキルを学ぶ研修まで様々なレベルの研修を実施し、2021年から2025年2月末までに、延べ6千人以上が受講した実績を誇っている。

日本財団ボラセン:民間による災害支援拠点&養成所が3月7日に開所
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もうひとつの重機ボランティア育成の先行者―『nuovo』(ノーボ)
体験型アミューズメントパークの全国展開をめざす
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いっぽう本紙は、2024年5月2日付けで体験型アミューズメントパーク『nuovo(ノーボ)』を紹介した。『nuovo』は、2019年台風19号での長野県被災地支援からアイデアが生まれ、平時を楽しみつつ、有事に備えるという日本初の施設。『nuovo』とは「農業」+「防災」=「農防」の造語で、『nuovo』はイタリア語では「新しい」を意味し、この語に「21世紀型の新アミューズメント」の思いも込められているのだそうだ。

『nuovo』のアイデアは、一般財団法人「日本笑顔プロジェクト」(長野県上小布施)の発案によるもので、災害復旧・復興の現場で欠かせない災害ボランティアのなかでもとくに重機を操縦できるボランティア人材、「災害時の重機オペレーターの育成」を課題に事業を展開する。「日本笑顔プロジェクト」では、47都道府県にこの体験型アミューズメントパークを展開し、有事の際には、その全国ネットワークを活用して最適な支援を行おうという大きな計画が打ち出されている。
ちなみに笑顔プロジェクト代表理事の林映寿氏は小布施町の真言宗豊山派浄光寺副住職で、スラックライン(細いベルト状のラインの上で綱渡りのようにバランスを楽しむ遊び)をわが国に本格的に導入した住職としても知られ(同W杯も同境内で開催)、寺院の社会的な貢献活動でも先進的な各種試みを行っているのだ。
WEB防災情報新聞 2024年5月2日付け:防災パークで重機ボランティアを養成
〈2025. 03. 13. by Bosai Plus〉