私たちは相互に連関した危機に直面――
いま行動を起こさなければ何世代にも影響……
世界経済フォーラム年次総会が、2025年1月20日から24日までスイスのダボス・クロスタースで開催された。「インテリジェント時代における連携」をテーマに、世界有数のリーダーたちを招集した同会合は、テクノロジーが急速に進歩する時代における5つのサブテーマ「成長の再構築」、「インテリジェント時代における産業」、「人材投資」、「地球環境保全」、「信頼の再構築」に焦点を絞り、より持続可能かつ包摂的な未来をめざすための新たなパートナーシップと洞察を促進することを趣旨とした。
これに合わせ、20回目となる世界経済フォーラム年次報告書「Global Risks Report 2025」が発行された。「Global Risks Report」とは、900人以上のグローバルリスクの専門家、政策立案者、業界リーダーたちを対象として調査を行ってその見解をまとめたもので、グローバルなリスクの現状と将来予測を分析し、政策立案者、企業、国際機関、研究者に向けて重要な洞察の素材を提供するものだ。
●2025年の差し迫った最大のリスク――「国家間の武力紛争」
「Global Risks Report 2025」によれば、地政学、環境、社会、テクノロジーのそれぞれのリスクへの課題が深刻化し、安定性と進歩が脅かされ、分断の進みつつある世界情勢が明らかになったとしている。経済リスクはさほど顕著ではなくなったものの、社会や地政学的な緊張と相互に連関する懸念事項であることに変わりはないとした。2025年の差し迫った最大のリスクとして、調査回答者のほぼ4分の1が「国家間の武力紛争」をあげた。これは、グローバルな地政学的緊張の高まりと分断を反映したものだ。
短期的なリスクの筆頭には「誤報と偽情報」があげられた。これらは不安定化を煽（あお）り、ガバナンスへの信頼を損ない、共有する危機に対処するために喫緊に必要な協力体制を複雑化させる可能性があるとしている。
●10年先を見据えたリスクは――環境リスク
10年先を見据えると環境リスクが最も大きな懸念材料であり、「異常気象」、「生物多様性の喪失と生態系の崩壊」、「地球システムの危機的変化」、「天然資源不足」がリスクランキングで上位を占める。トップ10の中で5つ目の環境リスクである「汚染」は、短期的にも主要なリスクと認識されている。短期のランキングで6位となったことは、大気、水、陸地にわたる広範囲の汚染物質が健康や生態系に深刻な影響を及ぼすという認識が強まっていることを反映している。全体としては、「異常気象」が際立っていて、直近、短期、長期のリスクとして認識されている。
回答者の3分の2近くは、特に環境、テクノロジー、社会のそれぞれのリスクへの課題が深刻化することによって、2035年までに世界情勢が激変する、または不穏になるだろうと予測。また、回答者の半数以上は、国際協調が広範に崩壊しつつあることを反映して、2年以内に何らかの混乱が生じると予想する。
●長期的な展望では―― 深刻度スコア 上昇
長期的な展望では、連携の仕組みがますます圧力にさらされることが予想されるため、さらに大きな課題が待ち受けていることを示唆している。「不平等」や「社会の二極化」などの社会リスクは、短期および長期のリスクランキングの両方で際立っており、「不正な経済活動」に対する懸念の高まり、「債務負担の増大」、「戦略的資源の集中」が今後数年間で世界経済を不安定にしかねない脆弱性を浮き彫りにしている。さらに、今後10年間でリスクの頻度や重要度が高まることに対する回答者の懸念を反映し、このランキングで挙げられた33のリスクすべてにおいて長期的な深刻度スコアが上昇している。
同フォーラムのグローバル・リスク・イニシアチブを率いるマーク・エルズナーは、「紛争から気候変動まで、私たちは相互に連関した危機に直面しており、一致団結した行動が求められています」と述べている。「今、喫緊に求められているのは、信頼回復と協調を促進するための新たな取り組み。行動を起こさなければ、それによって今後何世代にもわたって影響が及ぶ可能性がある」と。
Global Risks Report 2025： 紛争、環境、偽情報が最大の脅威に
〈2025. 03. 01. by Bosai Plus〉