image 秋田県大館市「田園地帯が広がるハチ公のふるさとでワーホリ体験はいかが?」 640x350 - 防災で「関係人口」拡大=地方創生へ

「関係人口」とは――復興プロセスで「関係人口」拡大も

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「石川県創造的復興プラン」に見る「関係人口」拡大作戦
「二地域居住モデル」「能登国定公園」のリ・デザインなど
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 令和6年(2024年)能登半島地震からの創造的復興に向けた道筋を示すため、石川県は昨年(2024年)5月、「石川県創造的復興プラン(案)」をとりまとめ公表した(本紙既報/同プランは同年9月に確定している)。
 このなかで当時、とくに注目されたのは、13の取組みで構成する「創造的復興リーディングプロジェクト」で、地域の活力を維持向上させていくには、定住人口や交流人口の拡大に加え、“関係人口”の拡大を図ることが最重点課題と明記、「復興プロセスを活かした関係人口の拡大」において、「二地域居住モデル」を提起したことだった。

石川県:石川県創造的復興プラン

 その具体例をいくつかあげると、
▼復興プロセスを活かした関係人口の拡大
○能登地域の特性に対応した「二地域居住モデル」の検討
 平日は都市部で仕事、週末は地方部でゆっくり過ごし、定期的に能登復興の活動を行う
○官民連携の「連携復興センター」の設置
○能登農林水産業ボランティアの実施
○能登への移動時間の短縮など

▼能登サテライトキャンパス構想の推進
 今回の地震により、今後、能登が防災や復興などの教育・研究フィールドとして活用されることが見込まれるため、交流人口や関係人口の増加につながるよう取り組む。
○復興に関わる県内外の大学生等の受入促進
○金沢大学「能登里山里海未来創造センター」など高等教育機関との連携
○学生の祭りへの参加促進による伝統文化に触れる学びの場の創出など

▼能登の「祭り」の再興
 能登の各地域に存在する数多くの祭りは、地域の魅力を高めるとともに、地域への誇りや愛着を育み、能登の絆をつなぐ大きな役割を果たす。こうした祭りを絶やすことなく未来に継承していくことで、震災を乗り越え、地域コミュニティの再建につながるよう取り組む。

▼能登半島国定公園のリ・デザイン
 能登の最大の魅力ともいえる壮大な自然環境や農山漁村の原風景は、未来へと継承すべきかけがえのない財産。里山里海に育まれた多様な生物資源の適切な保全を図ることはもとより、地域資源としてその利活用を促進する。

 ほかに能登復興のシンボルとして、トキが半世紀ぶりに石川・能登の大空を舞う夢の実現に向けた取組みなどがある。
 ちなみに「石川県創造的復興プラン」は、石川県成長戦略の目標年次である2032年度末までの9年間の計画となっている。

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消滅可能性自治体を支える「関係人口」を増やせ
「防災で地方創生」――新しい視点
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 改めて、「関係人口」とはなにか――「関係人口」の推進を管掌する総務省は、「関係人口」の定義として、「移住した『定住人口』でもなく、観光に来た『交流人口』でもない、地域と多様に関わる人びとを指す言葉」であり、地方創生のキーワードとして近年急浮上している。
 総務省では「関係人口ポータルサイト」を設けてこれを推進しているので、参照のこと。

総務省:関係人口ポータルサイト

 2014年、日本創成会議「増田(寛也)レポート」が、少子高齢化や人口流出で2040年までに消滅する可能性のある自治体が全自治体の約半数にあたる896にのぼるとした。これに触発された強い危機感から地方創生のかけ声が高まった。そのなかで、2018年頃から「東京一極集中の是正」に向けた取組みの一つとして自治体で注目されてきている概念が「関係人口」だ。消滅可能性自治体を支える「関係人口」を増やそうという取組みである。

P2 1 三大都市圏、政令市を除く地域ブロック別総人口の減少率 - 防災で「関係人口」拡大=地方創生へ
三大都市圏、政令市を除く地域ブロック別総人口の減少率
P2 2 地域の維持・向上に必要な活動力(地方部のイメージ) - 防災で「関係人口」拡大=地方創生へ
地域の維持・向上に必要な活動力(地方部のイメージ)

 「関係人口」は大別すると『仕事ベース』、『ファンベース』に分類が可能なほか、その形態は直接関与、就労などによる直接関与、イベント・サークルなどへの参加交流、趣味消費、地縁血縁、ふるさと納税やクラウドファンディングによる関与などがある。また、2拠点生活、多拠点居住をする人も「関係人口」となる。その地域との関わりの強さの関係から言えば、『定住人口』⇔『関係人口』⇔『交流人口』の順のイメージだ。

 地方圏は、人口減少・高齢化により、地域づくりの担い手不足という課題に直面しているが、変化を生み出す人材が地域に入り始めている例も多くあり、「関係人口」と呼ばれる地域外の人材が、地域づくりの担い手となることが期待されているのだ。

P2 3 関係人口の多面的機能①(都市部の住民が地方に関わりを持っている場合) - 防災で「関係人口」拡大=地方創生へ
関係人口の多面的機能①(都市部の住民が地方に関わりを持っている場合)
P2 4 関係人口の多面的機能②(都市部の住民が地方に関わりを持っている場合) - 防災で「関係人口」拡大=地方創生へ
関係人口の多面的機能②(都市部の住民が地方に関わりを持っている場合)

 一般論としては、「防災の関係人口」とは、地域防災活動に関わる関係者を指す。これには、自治体や企業の職員、災害ボランティア、福祉専門家、さらには防災士など自主防災活動家などが含まれ、防災の知識やスキルを活かして各地域の災害特性に合わせた防災力向上のために活動する人たちだ。防災関係人口が増えることで、災害時の対応が迅速かつ効果的になり、訓練を受けた「関係人口」が多ければ多いほど、初動対応がスムーズに行われ、被害の拡大を防ぐことができる。

 「防災の関係人口」ではとくに、命・身の安全を守る助け合いの連携などを通じて地域内のつながりを強化でき、防災活動を通じて交流が深まることで、災害時の協力体制の確立が期待できるということになる。「防災で地方創生」――新しい視点だろう。

P1 秋田県大館市「田園地帯が広がるハチ公のふるさとでワーホリ体験はいかが?」 - 防災で「関係人口」拡大=地方創生へ
総務省「ふるさとワーキングホリデーポータルサイト」より「秋田県大館市『田園地帯が広がるハチ公のふるさとでワーホリ体験はいかが?』」のイメージカットより転載。総務省では、「日本国内でもできるワーキングホリデーがある」として、「ふるさとワーキングホリデー制度」を2017年1月から始めている。日本中の故郷で地域の仕事をしながら、地域との交流や学びを通じてリアルに地域の暮らしを体験――「関係人口」拡大への仕掛けだ
P2 5 ぼうさいこくたい「全国防災関係人口ミートアップ@Facebook」より - 防災で「関係人口」拡大=地方創生へ
ぼうさいこくたい「全国防災関係人口ミートアップ@Facebook」より

〈2025. 02. 16. by Bosai Plus

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