「Evacuation Site seeing 防災観光地」
観光→光(文化)を観る→防災を観る
津波避難タワー、避難場所・施設の“機能美”を通じて
観光デスティネーションを盛り上げる !

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美しい大自然の環境のさなかに、自然の猛威を想像させる施設
景観を愛で、かつ大災害という不条理をイメージし、味わう“旅”
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
全国のホテルや旅館にリゾートバイトという形で人材派遣する株式会社グッドマンサービス(東京都千代田区)では、観光地の新たな魅力を発信しながら災害時の助けとなる情報を提供するため、全国の「観光」と「防災」の二面性を持つ「防災観光地」を紹介するサイト、 「Evacuation Site seeing 防災観光地」を昨年(2024年)12月に公開した(サイトの言語は、日本語と英語)。
観光地の魅力を楽しみながら防災への意識を高め、日本の観光振興と防災啓発の両面から地域振興につなげるという趣旨で、全国の宿泊施設にポスターも掲出する予定だ。
「Evacuation Site seeing 防災観光地」
グッドマンサービス社によると、昨今、地震や津波などの自然災害が頻発し、とくに東日本大震災や熊本地震の際には、多くの観光客が避難方法を知らず、困難な状況に直面したことに衝撃を受けたという。そして、「Evacuation Site seeing 防災観光地」(以下、「防災観光地」)の紹介・推進によって日本の観光振興と防災啓発を同時に進められ、国内外の旅行者が観光地を盛り上げながら、もしもの時の訪問地での緊急避難場所も知ってもらうこと、そして、その地域を安心して訪れることができる環境づくりと、日本のさらなる観光的魅力を感じてもらうことが趣旨だとしている。
「防災観光地」サイトを散見すると、避難場所・施設に“観光的魅力”を見い出そうという趣旨とあって、一見、機能本位・無機的に見える津波避難タワーや避難場所がハッとするほど美しい写真で紹介されていることに驚く。このサイトのプロデューサー、フォトグラファーの力量が感じられるのはもちろんだが、いっぽう、津波避難タワーや避難場所は当然のことながら、海岸や河川近くなどに位置しており、多くは、平時には自然の眺望・景観が楽しめるという意味での機能美にもあふれていることに気づかされる。
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
つまりは、このようにすばらしい大自然の環境が、ときには“荒れ狂う脅威”ともなり得ることを問わず語りに、訪れる私たちに警告してくれてもいるとも言えるのだ。
この二面性は、「防災観光地」のデスティネーションとなる自治体も意識するところだ。グッドマンサービス社のプレスリリースによると、「中土佐町第1号津波避難タワー」を管理する高知県中土佐町総務課危機管理室・山岡さんは、「『防災観光地』では、防災情報だけでは啓発しきれない部分を、観光を通じて災害時における避難先を把握できるすばらしい取組み。中土佐町第1号津波避難タワーは、太平洋がすぐ目の前にある立地に建てられた津波避難タワーで、普段は展望台として開放、災害時には命を守る最前線の役割を果たします。この二面性こそ防災と観光をつなぐ大きな魅力で、観光で訪れた人に、自然の美しさとともに、施設の防災としての力を意識してもらうきっかけとなれば」と語る。
また、「静岡県磐田市津波避難タワー」を管理する同経済観光課管轄商業観光グループ 大石さんは、「磐田市渚の交流館に隣接している津波避難タワーは、土日祝日は施設を開放、防災教育・減災意識定着を図っています。『防災観光地』企画で渚の交流館と津波避難タワーを多くの方に知ってほしい」と。
防災士で、24時間地震情報をライブ配信するティーファイブプロジェクトのYouTubeチャンネルでアナウンサーを務める塩地美澄さんは、「観光×防災」の魅力について、「『防災観光地』プロジェクトでは、国内外から訪れる観光客の方がたが、いざという時も冷静な行動ができるように安全な避難場所などの情報を受け取れます。観光を楽しみながら自ずと防災意識を高められるのが最大の魅力。防災士として、私も発信に努めます」としている。

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伊豆市 市民・観光客の交流拠点としての津波避難複合施設も
高知市 観光ガイドボランティアの観光コースの津波避難ビル研修
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本紙は2024年8月9日付けで、静岡県伊豆市西側の土肥(とい)海岸(松原公園)に、日本で初めてとなる津波避難複合施設「Terrasse Orange toi」(テラッセ・オレンジ・トイ。左下写真参照)が完成・開業したことを報じた。平時は土肥の基幹産業である観光業に寄与し、有事の際には津波から命を守る避難施設。地上高18.8mの4階建てで、災害時の一時避難スペースとして約1200人の避難者数を想定し、3階、4階で備蓄非常食(パン)、保存水などを備蓄する。平常時は、土肥の地場産品販売、食事、バーベキューの各コーナーで、市民や観光客の交流拠点として活用されるというものだ。
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本紙 2024年8月9日付け:伊豆・土肥に“観光・津波避難複合施設”
この施設は津波避難困難地域である松原公園周辺において海水浴客、公園利用者、市民が安全に避難できる施設として整備された。当初から観光施設を兼ねた津波避難複合施設として先進的な事例と言える。
ちなみに土肥地区沿岸部の一部は2018年、静岡県により、津波防災地域づくり法(2011年制定)に基づく「津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)」に、全国で初めて指定されている。

いっぽう、南海トラフ巨大地震が想定される高知市では、「土佐観光ガイドボランティア協会」が昨年末(12月20日)、津波避難ビル確認研修会を開催し、南海トラフ地震時に観光客を迅速に避難誘導しようと、高知市内の観光コースにある津波避難ビルを確認した。
同協会による津波避難ビル確認研修会には昨年4月に入会した8名を含む17名の会員が参加。研修では、まず「龍馬の生まれたまち記念館」で行われた座学で市の地域防災推進課職員から市街地の被害想定などの説明を受けたあと、高知城歴史博物館に至る約2.6kmの観光コースの11カ所の津波避難ビルを確認して回り、県民文化ホールでは避難ビルにのぼって屋上の避難スペースや水や簡易トイレなどの備蓄品の確認をした。
〈2025. 02. 04. by Bosai Plus〉