高齢者のスマホ利用の促進・支援で
防災QOL、スマートシティへ前進!
スマホ保有率は8割超―高齢者のスマホ活用度を高めて
防災力と「QOL(生活の質)」向上を
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■ 防災・減災、国土強靭化の取組みを飛躍的に加速するには――
■ デジタル防災技術のフル活用に向けて デジタルディバイド解消を
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国は2021年5月、「防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言」をとりまとめ、同年6月の「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」や「成長戦略実行計画」、「国土強靱化年次計画(2021年度)」に反映させた。この「提言」の背景となったものは、2020年年末に立ち上げられた5つの有識者会議(以下、「WG=ワーキンググループ」)――「デジタル・防災技術WG(未来構想チーム)」、「デジタル・防災技術WG(社会実装チーム)」、「事前防災・複合災害WG」、「防災教育・周知啓発WG(防災教育チーム)」、「防災教育・周知啓発WG(災害ボランティアチーム)」の「1WG+4チーム」によりわずか半年のあいだに精力的に検討を進められた報告書で、5月25日にそれぞれの報告書が同時公表されたものだ。
提言は各検討会座長(安宅和人、喜連川優、藤井聡、片田敏孝、栗田暢之)連名で、次のような書き出しの「提言前書き」があり、それが印象的であったので引用すると――
「100年以上の時を経てわれわれはいったいなにをしてきたのだろう? いまだに自然災害、とくに巨大自然災害で奪われる国民の生命が多過ぎる。少子高齢化、人口急減少、感染症の脅威を思うとき、次の巨大三陸沖地震・津波でむしろ約2万人を大幅に上回る犠牲者を出す恐れすらないか。防災・減災、国土強靭化の取組みを飛躍的に加速しなければならない――(以下省略)」
新“国土強靭化”に向けた5つの有識者会議(1WG+4チーム)に、「デジタル・防災技術WG(未来構想チーム)」、「デジタル・防災技術WG(社会実装チーム)」と、2つの“デジタル防災技術”が重視されていることに注目したい。
“デジタル防災技術”は、スマートフォン(以下、「スマホ」)やドローン、通信衛星など最新機器による情報収集とAIによる情報処理を組み合わせた情報収集の自動化(防災 IoT)の整備により、救助活動の迅速化や自治体の避難判断支援、住民の避難行動サポートなどの機能の飛躍的向上を想定したものだ。
内閣府(防災担当):防災・減災、国土強靱化新時代の実現のための提言(2021年5月)
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■ スマホ所有世帯は8割にのぼるが…高齢者のスマホ活用度は低い
■ 渋谷区の「高齢者デジタルデバイド解消事業」に注目 !
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いっぽう、一時流行語ともなった“情報格差=デジタルディバイド”だが、総務省が毎年実施している通信利用動向調査によると、情報通信機器の世帯保有率は、携帯電話やスマホなどのモバイル端末では、9割を超え、そのなかでも、スマホの普及が進んでおり、8割以上の世帯で保有しているという。
そこで課題となるのが、防災情報に関連するスマホの活用度合いだ。2022年12月公表の内閣府世論調査「防災に関する知識や情報を入手するために、今後、積極的に活用したいもの」によると、年齢別に見ると、60歳代、70歳以上は「テレビ」、「ラジオ」、「新聞」で、18~29歳から40歳代は「X(旧Twitter)、LINE、FacebookなどのSNSの情報」、「防災アプリなどの情報」、50歳代、60歳代で「防災情報のホームページなどの情報」の割合がそれぞれ高くなっている。つまり、8割の世帯でスマホは保有されているが、いわゆる高齢者(65歳以上)はスマホは持っていても電話や時計の機能の代替にとどまり、スマホの高機能の活用度が低い傾向にあると推定される。
ひるがえって東京都渋谷区によると、65歳以上の高齢者4万3000人のうち4人に1人がスマホを未保有だったという(2020年度渋谷区区民意識調査からの推計値)。そこで渋谷区では、高齢者のデジタル機器の利用を促進し支援することにより、デジタルディバイドを解消し、高齢者の安全安心の確保、健康増進につなげ、QOL(Quality of Life=『生活の質』)の向上をめざすとし、「渋谷区高齢者デジタルデバイド解消事業」に着手している。
対象者は65歳以上でスマホを保有していない区民で、支援内容は、専用コールセンター(遠隔サポート付き)の設置、必修講座や個別相談会の実施、「デジタル活用支援員」の募集・育成・活用(東海大学の学生によるサポートで多世代交流を図る)ほか、概ね60歳以上の一般高齢者に向けて、予約制個別相談「なんでもスマホ相談」、予約不要の相談コミュニティ「スマホサロン」設置、テーマ別スマートフォン講座などに参加可能としている。
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■「 スマートシティ」化が今後の安全・安心まちづくりの重要テーマ
■ 愛知県日進市の「デジタル防災サービス(LINE防災)」(仮称)
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愛知県もまた、急速な高齢化や環境問題など様々な地域課題の解決を図るため、県内の市町村においては「スマートシティ」(ICT=情報通信技術などの新技術を活用した行政の高度化によって都市や地域の抱える諸課題の解決を行い、また新たな価値を創造し続ける持続可能な都市や地域)の実現がこれからのまちづくりの重要なテーマだとして、今年度はモデル事業の公募を実施し、豊橋市、岡崎市、春日井市、刈谷市、蒲郡市、常滑市、日進市の7市を選定した。
そのうち日進市では、災害時(とくに地震災害)に備え、迅速な避難、避難所の開設、そして市民の防災意識の高揚のために、拠点避難所となる小中学校を会場に、2018年度から避難所開設運営訓練を実施していることから、2024年度は11月に相野山小学校、竹の山小・北中学校で実施しているので、参考事例として取り上げてみた。
日進市の今回の訓練は、日進市LINE公式アカウントに連携した「デジタル防災サービス(LINE防災)」(仮称)の今後の導入を検討するための実証実験とのことだ。
愛知県日進市:愛知県スマートシティモデル事業~パーソナライズ型避難支援実証実験
〈2024. 12. 25. by Bosai Plus〉