令和6年能登半島地震 災害対応の課題と改善点

関連死防止へ 被災者の避難環境整備が急務 「防災庁」への重要課題を提起

 令和6年能登半島地震は、高齢化の進んだ半島地域という地理的・社会的な制約のもとで発生し、これまでの災害対応と比較しても困難な状況が見られた。
 この地震における災害対応を振り返ることで課題・教訓を整理し、南海トラフ地震や首都直下地震をはじめとする今後のわが国の地震災害における応急対策・生活支援対策に活かしていくため、国は中央防災会議防災対策実行会議のもとに、「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応検討ワーキンググループ(WG)」(主査:福和伸夫・名古屋大名誉教授)を本年6月に立ち上げ、同WGは半年で10回に及ぶ精力的な検討を行い、去る11月26日、報告書をまとめ坂井学防災担当相に手交し、公表した。

■ WGの主な検討事項

 WGの主な検討事項は、「直接被害への対応」(孤立集落への対応、被災地へのアクセス・被害状況把握など)、「自治体支援」(被災自治体の事前準備・受援、周辺自治体からの応援など)、「避難所運営」(二次避難、要配慮者への対応、ボランティア・NPO・民間企業等との連携など)ほか、物資調達・輸送、その他分野横断的な対応(支援者への支援、住まいの確保、災害廃棄物処理など)と多岐にわたったが、本項ではとくに、高齢化地域における災害関連死を防止する観点からの被災者支援についてのとりまとめをリポートする。

P3 1 今後の災害対応の基本⽅針(主な「実施すべき取組」)より - 能登半島地震・災害対応WG<br>「報告書」
「令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について (報告書 概要より)今後の災害対応の基本方針(主な「実施すべき取組」)「被災者支援」(内閣府資料より)

■ 課題の分析と今後の改善点

 報告書は、初期対応や被災地支援の状況、今後の災害対応の改善点について詳述――

▼ 初期対応の課題
 地震発生直後の初期対応において、情報収集とその共有が迅速に行われず、初動対応が遅れたケースが見られた。

P3 2 パーティション・段ボールベッド - 能登半島地震・災害対応WG<br>「報告書」

▼ 避難所運営の課題と改善点
 避難所の運営において、避難所の設置場所や運営方法についての事前準備が不十分。また、避難所内でのプライバシー確保や衛生管理が不十分。
 今後の改善点としては、段ボールベッドの準備、調理設備の設置などによる避難生活環境の改善。大型ガス設備や燃料を含め、炊き出しが可能な環境をつくること。携帯・簡易トイレの備蓄、マンホールトイレや仮設トイレの確保。キッチンカーやランドリーカーといった移動型車両を被災地へ迅速に提供できるよう登録制度の創設

P3 3 (左)炊き出しによる食事支援、キッチンカーによる食事支援 - 能登半島地震・災害対応WG<br>「報告書」
P3 4 (左)トイレトレーラー(七尾市)、トイレカー(志賀町) - 能登半島地震・災害対応WG<br>「報告書」
P3 5 ランドリーカー(輪島市) - 能登半島地震・災害対応WG<br>「報告書」

▼ 物資調達と配布の課題
 必要な物資が迅速に被災地に届かず、被災者の生活に支障をきたす場面が多々見られた。とくに、医療物資や食料の不足が深刻であり、これに対する対応が求められる。

▼ 自治体間の連携の課題
 自治体間の連携が十分に取れていなかった。複数の自治体間の情報共有や支援の調整がうまくいかず、支援活動が効率的に行われなかったケースがあった。

▼ 新技術の導入と活用の課題
 災害対応において新技術の導入と活用が進んでいないことも課題。例えば、ドローンやAIを活用した被災地の状況把握や、デジタルプラットフォームを利用した情報共有が十分に行われていなかったため、対応の効率化が図れなかった。

▼ 被災者支援の課題と改善点
 被災者の心理的支援や生活再建支援が不十分。二次避難について、被災者の希望を踏まえた宿泊先のマッチングや継続的支援の仕組みの検討、国によるマニュアルの整備

 これらの改善点を実施することで、今後の災害対応の質を向上させ、被災者の生活再建を支援することが期待される。

令和6年能登半島地震を踏まえた災害対応の在り方について(報告書)

〈2024. 12. 09. by Bosai Plus

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