茨城県・大洗町で AI 搭載の広域監視防災システム運用開始
消防庁、火災の早期覚知・情報収集のための
「高所監視カメラ」の整備を全国的に促進
全国火災予防運動実施中の11月14日、大洗町消防本部(茨城県大洗町)で、大洗町火災監視等AIカメラ運用開始記念式典が開催された。大洗町消防本部は、全国に先駆けて、AI搭載の広域監視防災システムとして、旧来の火の見櫓(ひのみやぐら)を彷彿とさせる「火の見櫓(ひのみやぐら)AI®」を、町内を一望できる消防本部敷地内訓練塔上部に設置、システムの概要をデモンストレーションとともに公開した。
昨今、能登半島地震での輪島市での大規模災害も踏まえた今後の消防防火対策のあり方として、総務省消防庁が火災の早期覚知、情報収集のための「高所監視カメラ」の整備を全国的に促進していく方針を打ち出し、これを先取りした先駆的な試みだ。
総務省消防庁:「輪島市大規模火災を踏まえた消防防災対策のあり方 報告書」
大洗町消防本部で採用したAI搭載の広域監視防災システムは、アースアイズ株式会社(東京都港区)が開発した広域監視防災システム「火の見櫓AI®」(登録商標)で、現代版の火の見櫓と言えるもの。AIを搭載したカメラで、500mから800m先までを見渡し、遠方のわずかな火や煙等も検知し、管理者に即時に通知することができるシステムだ。
大洗町消防本部には火災と煙を検知できるように特化してAIに学習させていて、煙や15㎝の火柱でも検知できる技術を備えており、早期発見が可能だという。一般的な防犯カメラとは異なり、24時間AIが360度見渡せるカメラで常時監視、異常があれば通知する。現代社会の大きな課題となっている自然災害と地域防犯――深刻化する災害対策や複雑化する街の防犯対策に有効で、早期対応を実現する。
火の見櫓とは上部に半鐘(はんしょう)がついた高い塔で火災を目視で発見、知らせるために使われ、一時は国内に多数設置されていたが、現代ではとくに都市部では高層の建物が増えて実用性はなくなり、文化遺産的な存在となっている。
記念式典記者会見に望んだ二階堂均・大洗町消防本部消防次長は、「ここ数年、夜間に空家などの無人建物からの出火の発見と通報の遅れが被害の拡大に及んでしまうことが消防本部としての大きな課題だった。そこで、AIを活用した火災監視システムに可能性を見い出し、調査の過程でアースアイズのAIシステムに出合い導入に至った。24時間火災を監視してくれるこのシステムは、大洗町の安心・安全の要になると考えている」と語った。
ちなみに東京都は、災害発生直後の情報空白時間における情報収集を目的とした株式会社日立製作所の「高所カメラ被害情報収集システム」を本年3月1日から稼働している。
アースアイズ:茨城県大洗町で「火の見櫓AI®」運用開始記念式典
〈2024. 12. 04. by Bosai Plus〉