P4 5 家具固定・防災相談(松山市HPより) - 愛媛県防災士数、日本一に

愛媛県の防災への”志”
 知事防災士が防災士に共鳴

東京上回り初の全国最多・2万4000人余り
松山市の防災士活用にも注目

■ 愛媛県・中村時広知事はなぜ防災士養成に熱心か

P4 1 中村時弘愛媛県知事(2016年3月、機構主宰・防災士功労者表彰で) - 愛媛県防災士数、日本一に
2016年3月、機構主宰・防災士功労者表彰で挨拶する中村時弘愛媛県知事

 愛媛県で防災士の資格を取得した人の数は10月末時点で2万4835人で、これまで最も多かった東京都(2万4742人)を上回り、全国最多となった。また、人口10万人あたりで見ても愛媛県が1861人、次いで大分県が1229人、高知県が948人と愛媛県が最も多い。
 愛媛県はそのホームページで、「防災士数全国1位達成に関する中村時広・知事 記者発表」(防災危機管理課)を公開。元松山市長を務めた中村知事は――

 「防災士については(松山市長だったときに)、大きな災害が起こったときに、人数や装備が限られている消防等では、全体を速やかにバックアップすることができない。初期段階・初動段階で最大の力を発揮するのは、自助と共助。共助といっても隣近所の助け合い、これがほとんど。その観点から、ある程度の(防災の)知識を持った方がたを増やしていくということは市民の命を守るために必須というふうに考えまして、防災士の資格取得に対して公費を投入するという決断をいたしました」と、冒頭で答えている。

愛媛県:防災士数全国1位達成に関する中村時広・知事 記者発表(要旨)

 愛媛県は、防災士数全国1位達成の記念大会として愛媛県久万高原町で12月22日、「令和6年度えひめ自主防災フォーラム~地域の安全を守る力 防災士数全国1位達成記念大会~」(会場:久万高原町産業文化会館研修室)を開催し、日本防災士会参与・甘中繁雄さんを講師に迎え「防災士に期待される役割」をテーマとした講演を行う予定だ。

愛媛県久万高原町 12月22日:「令和6年度えひめ自主防災フォーラム~地域の安全を守る力 防災士数全国1位達成記念大会~」

 阪神・淡路大震災を機に行政や消防、警察によるいわゆる「公助」の限界が指摘され始めたことから、きわめて少数の人びとの志から「防災士制度」構想は20数年前に芽生えたという(日本防災士機構刊『防災士20年の歩み』参照)。その限界は、東日本大震災で改めて露わになった。防災士の理念は、災害状況下で自らを守る「自助」、市民が助け合う「共助・協働」の取組みの推進であり、地域で防災リーダーの役割を果たす「防災士」の養成は、自治体の地域防災の強化方針と合致するところとなった。

P4 2 都道府県別 防災士認証登録者数 - 愛媛県防災士数、日本一に
都道府県別 防災士認証登録者数(日本防災士機構HPより)

 地域防災は自主防災組織(自治会、町内会など)の強化を基盤とするが、少子高齢化や“消滅可能性都市”が増えたこともあって、その活性化がむずかしいとされてきた。しかし近年、防災士の養成によってその二重苦・三重苦を克服しようという解決策が、自治体自身による防災士養成事業への参画に結びついているという。
 つまり、自主防災の高齢化に対しては、自治体が公費(税金)を投じて、地域の現役・壮年層、女性層、さらには大学生・高校生など若年層に「防災士資格」を取得してもらうことで、若返りと防災意識向上を同時に実現させる。そして、自主防災組織の活動が有名無実化している地区や組織自体がない地区では、やはり「防災士資格」取得による意識改革で、防災士が率先するかたちで自主防災を立ち上げてもらう、という両面作戦である。

 ここでのキーワードは「公費で資格取得」であって、単に防災意識啓発ではないことだ。人は「資格取得」によって、ある分野について専門性を持つことを対外的・社会的にアピールできる。ここでは「防災」について、社会貢献でき得る「防災士」であるという自分のアイデンティティから、具体的な行動へのモチベーションが促されるのだ。

■ 愛媛県と「防災士日本一」を競う松山市 「新たな備えサポート隊」に注目

 防災士認証者数は、南海トラフ地震への危機感から愛媛県、大分県など四国・九州が先行する。愛媛県内では、中村知事が市長時代から防災士養成に力を入れた松山市がとくに防災士養成に取り組んでいて、本年8月には全国の市区町村で初めて1万人を超え、県より一足早く全国区市町村で日本一の防災士数(約1万人。2024年8月末時点))となった。
 松山市は2005年から防災士養成機関(県は2011年9月から)となり、民間資格の防災士養成費用を全額公費負担とする標準的方式を確立した先駆者としても知られる。

P4 5 家具固定・防災相談(松山市HPより) - 愛媛県防災士数、日本一に
「新たな備えサポート隊 in 松山」による家具固定・防災相談(松山市HPより)

 その松山市が2022年7月に発足させた「新たな備えサポート隊 in 松山」は、民間が中心となって地域防災活動を実践する組織で、産官学民協働で地域の防災強化にのぞむ取組みとしては全国でも初めての試みだ(本紙はその発足を2022年8月1日号で既報)。
 サポート隊は、原則として「社会福祉士」「防災士」「学生」の3人で1チームを構成し、幅広い支援に対応することとしている。「新たな備えサポート隊 in 松山」は、地域防災において防災意識の高さを活動で裏づける“ファクト”となっている。

P4 3 「新たな備えサポート隊 in 松山」とは - 愛媛県防災士数、日本一に
P4 4 今後の活動内容 - 愛媛県防災士数、日本一に
「新たな備えサポート隊 in 松山」の活動内容より(松山市HPより)

愛媛県松山市:松山市の防災士

〈2024. 12. 01. by Bosai Plus

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