地域防災に欠かせない防災士 自治体が養成・活用に積極的
「地区防災計画」、「国土強靭化地域計画」でも防災士活用が必須に
日本防災士機構によれば、「防災士とは”自助”“共助”“協働”を原則として、社会の様々な場で防災力を高める活動が期待され、そのための十分な意識と一定の知識・技能を修得したことを日本防災士機構が認証した人」とされる。
防災士制度は、阪神・淡路大震災の教訓の伝承と市民による新しい防災への取組みを推進し、わが国の地域防災に寄与することを目的に2002(平成14)年に創設された。純然たる民間自律の発想によって地域防災力の向上に貢献しようというその「志」は、20年を経た今日も変わることはない。
初めて防災士資格を得た216名が誕生したのが2003年。それから21年、防災士は累計で29万6214名(2024年9月末日時点)で、本年末には30万名を超えると見込まれている。
●自治体が公費を投じて民間資格=「防災士」の取得を推進
現在、全国の地方自治体や国立大学・私立大学等の教育機関、民間研修機関において積極的な防災士の養成の取組みが進められ、それぞれの地域の自主防災組織や学校、福祉施設、事業所等で防災士の配置・活用の動きが広がっていることは周知のとおりだ。
近年、全国各地の自治体が、地域住民の防災士資格取得に要する費用の総額を公費(税金)をもって賄い、かつ防災士養成事業に養成機関として参加するようになってきている。住民が一民間資格である防災士の資格を取得するのに自治体が公費(税金)を投入するという“公”を超えた対応をするようになったのはなぜか――
それは、近年の自然災害の多発・激甚化が背景にある。各地の自治体は災害対応における「公助」の限界を意識せざるを得なくなったのだ。それは阪神・淡路大震災で明らかになったことだったが、その後、同教訓の風化傾向が明らかになり、その風化傾向が東日本大震災で一挙に吹き飛んだのである。
自治体が防災士養成に関わる費用負担方針の変化の契機は、住民に防災教育を勧め、防災士を養成して活用することが地域防災力の向上に有効だという認識が高まったことにある。また、自主防災組織にあっては、「指導者階層の高齢化」などから生ずる課題があり、組織の活性に向けて若手幹部や女性に防災士資格付与が有効だとする考え方が広まるようになった。
いっぽう、自主防災組織率が低い地域では、地域住民の防災士資格取得を機会に新しい市民防災力の活性化が図れる。こうしたことから、自治体が積極的に防災士養成機関になって防災士を養成しようとする機運が生れてきたのだ。
●国土強靱化地域計画での防災士の活用が目立ってきた
国は、2013年12月に公布・施行された「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法」は、各自治体における国土強靱化に関する施策の指針となる計画として「国土強靱化地域計画」の策定を地方公共団体(都道府県・市区町村)に求めている。
国土強靭化基本計画は国の計画、国土強靭化地域計画は、地方公共団体の地域のための計画だ。国土強靭化地域計画は、その地域における地域防災計画や国土利用計画などの指針となる最上位の計画で、地域の根幹をなす計画となる。
その国土強靭化地域計画に、「防災士の活用」記述が近年目立ってきており、現時点で47都道府県の計画のうち、16県にその記述が認められる(防災士研修センター調べ)。
一例をあげると、石川県「金沢市国土強靭化地域計画」では、【脆弱性の評価】として、「地域防災力の向上を狙いとして、地域住民の自助・共助の防災知識の普及をめざすことを目的にかなざわコミュニティ防災士を育成、青年層を取り込むことで幅広い年齢構成とし、かつ女性の視点からの防災対策を行う必要」。また【推進方針】として、「地域防災力の向上を狙いとして、地域住民の自助・共助の知識の普及をめざすことを目的に、幅広い年齢構成かつ女性を含めたかなざわコミュニティ防災士の育成を推進」とある。
このように、国レベルでは総務省消防庁や国土交通省の諸施策文書に、また国が推進する地区防災計画づくりにおいて、防災士はいまや欠かせない存在となってきている。
〈2024. 10. 17. by Bosai Plus〉