平時は防災教育の場、災害時は避難場所 西日本豪雨の教訓

隈研吾さんが設計デザイン

 2018年7月の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)による河川氾濫で甚大な被害に見舞われた岡山県倉敷市真備地区に計画された復興を象徴する復興防災公園「まびふれあい公園」が、災害から6年を迎えようという去る7月3日、開園した。

 西日本豪雨で真備地区では、小田川と高馬川の合流点付近で本流の急激な水位上昇で支流の水が逆流するバックウオーター現象が発生して堤防が決壊、浸水の深さは南北1km・東西3.5kmの範囲で5mを超え、最大で5.4mに達し、被害は、死者52人、関連死23人、全壊4646棟など住宅被害5977棟にのぼる甚大なものとなった。

P6 1a まびふれあい公園(復興防災公園)の計画段階での完成イメージより「平常時」 - 復興防災「まびふれあい公園」オープン
P6 1b まびふれあい公園(復興防災公園)の計画段階での完成イメージより「災害時」 - 復興防災「まびふれあい公園」オープン
上画像:まびふれあい公園(復興防災公園)の計画段階での完成イメージより「平常時」。下は「災害時」のイメージ

 倉敷市は、2018年秋に復興5カ年計画に、復興防災公園を防災教育の場として、また災害時の住民の避難場所として活用することを盛り込み、20年3月に基本計画を策定、名称は公募で決定した。
 設計デザインには世界的に知られる建築家で、木材を使うなど「和(日本)」をイメージしたデザインを旨とする隈研吾さんが携わった。そのデザインのコンセプトは「町と川をつなぐ」で、竹のゲートの中央通路が堤防と町並みの双方向に延びていて、「真備特産の竹で曲線美を表現、職人たちの細かい仕事が施され、自然と調和するひとつの工芸品のようなもの」になっている。

 公園内施設には、被害の大きさや状況、その後の復興の経緯など、災害教訓をパネルや映像で伝えるとともに、各地からの防災関連団体の視察や市民の防災学習などに利用できる多目的室「まなびのへや」と、防災備蓄倉庫・事務所の2棟を屋根で連結。その建屋は「竹のゲート」と名付けられ、備蓄倉庫には約300人の1日分の食料や資材を備えて避難所としての機能を確保している。
 また、災害時に駐車場やヘリポートにもなる芝生広場にはマンホールトイレやかまどベンチ、ソーラーWi-Fiなどが備え付けられている。

 天皇、皇后両陛下は遡って開園前の5月、全国植樹祭ご臨席の際に、造営中の公園を訪問され、被災の様子や復興復旧の経緯などの説明を受けられた。その訪問を伝えるパネルも展示されている。倉敷市では、「まびふれあい公園」が地震や水害発生時の避難場所となることはもちろん、平時は子どもたちが自然とふれあい元気に遊び、住民がイベントなどで交流する場となることで、復興を力強く進めるまちの魅力を発信したいとしている。

倉敷市:まびふれあい公園(復興防災公園)整備概要資料より

P6 2 2018年西日本豪雨で甚大な被害を受けた真備地区(Wikipediaより) - 復興防災「まびふれあい公園」オープン
2018年西日本豪雨で甚大な被害を受けた真備地区(Wikipediaより)

〈2024. 08. 20. by Bosai Plus

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