「Terrasse Orange toi」―伊豆の観光・未来を“照らす”
平時は土肥(とい)の地場産品販売、食事、バーベキューで
市民や観光客の交流拠点に
静岡県伊豆市西側の土肥(とい)海岸(松原公園)に、日本で初めてとなる津波避難複合施設「Terrasse Orange toi」(テラッセ・オレンジ・トイ)が完成し、去る7月12日に開業した。平時は土肥の基幹産業である観光業に寄与し、有事の際には津波から命を守る避難施設だ。施設は地上高18.8mの4階建てで、災害時の一時避難スペースとして、約1200人の避難者数を想定し、3階、4階で備蓄非常食(パン)、保存水などを備蓄している。
いっぽう平常時は、土肥の地場産品販売、食事、バーベキューの各コーナーで、市民や観光客の交流拠点として活用されるというもの。
東日本大震災以降、日本各地の海岸線エリアで津波対策施設の建設が進むなか、静岡県伊豆市は、南海トラフ巨大地震などの巨大地震を想定し、2017年5月に津波防災地域づくり推進計画「伊豆市“海と共に生きる”観光防災まちづくり推進計画」を策定し「観光防災まちづくり」を推進してきた。「Terrasse Orange toi」はこの一環として進めてきたもので、津波対策と平時の有効利用を両立させた施設となる。
●「Terrasse Orange toi」(テラッセ・オレンジ・トイ)に込められた“期待”
施設名の「テラッセ」には、「絶景を楽しめるテラス(フランス語)」、災害時には灯台のように生命を守り「照らせ」る、伊豆市の観光や未来を「照らせ」る、また、ひらがな表記の「てらっせ」は土肥の方言の「こらっしゃー」(来なよ)に、「おれんじ」は「おらっち」(私の家)と響きが似ていて、「私たちの土肥にいらっしゃい」という意味も込められているという。「オレンジ」には、土肥の海に映る美しい夕陽、“全国初”の津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)にある施設、そして静岡名産のミカンからの暖かいイメージが込められている。さらに、「toi」はヨーロッパの「toi toi toi」というおまじないで、幸運を祈る、応援の意味がある。
施設は、津波避難困難地域である松原公園周辺において海水浴客、公園利用者、市民が安全に避難できる施設として整備された。
伊豆市は、土肥地域を支える産業である観光を生かしながら、この地域で暮らす市民の生活や産業につながる水産資源、豊かな景観やそれらをつくり出している生態系などの環境、地震・津波に対する地域の安全・安心となる「防災」とのバランスを図っていくために、伊豆市津波防災地域づくり推進協議会を中心に、ワークショップや市民集会など、延べ500人近い地域住民との意見交換の場を設け、今回の施設完成の運びとなったという。
静岡県伊豆市:日本初の津波避難複合施設 伊豆市「Terrasse Orange toi」開業
https://www.dreamnews.jp/press/0000301361/?m=media&u=
●伊豆市土肥(とい)、「海と共生するまちづくり」
全国初「特別警戒区域」指定を逆手に 観光防災を確立
静岡県は2018年、駿河湾に面する伊豆市西端の土肥(とい)地区沿岸部の一部を、東日本大震災を受けて2011年に成立した津波防災地域づくり法に基づく「津波災害特別警戒区域(オレンジゾーン)」に、全国で初めて指定した。
土肥地区は南海トラフ地震で大津波(最大波高10m)が想定されていた。市は指定に伴うマイナスイメージを払拭するため、2017年、市民から地区の愛称を募集し(下図●●部分)、その結果、特別警戒区域の愛称を「海のまち安全創出エリア」に、また警戒区域の愛称を「海のまち安全避難エリア」となった。
こうした対応をレジリエンスジャパン推進協議会が高く評価、第4回「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞) 2018」の最高位グランプリに「伊豆市”海と共に生きる”観光防災まちづくりをみんなで考える会」による「観光防災まちづくり推進に向けた地域主体の取組み」に与えた。観光と防災を両立させ、風評被害を恐れずに、防災力を高めながら海と共生するまちづくりをめざす取組みの先進事例だ。
「ジャパン・レジリエンス・アワード(強靭化大賞)2018」グランプリ受賞・伊豆市
https://www.city.izu.shizuoka.jp/soshiki/1006/1/4/3/312.html
〈2024. 08. 09. by Bosai Plus〉