P4 2 絵本大変記 高知県立図書館蔵 640x350 - 「城博」企画展<br>「高知の地震災害史」、<br>2025年3月~5月に

高知県立高知城歴史博物館(通称:城博)
南海トラフ地震の被害と復興の歴史を学ぶ

 高知県立高知城歴史博物館が、2025年3月から「高知の地震災害史」と題した企画展を開催予定だ。同展では、江戸時代以降に発生した南海トラフ地震を中心に、多様な資料から過去の被害や復興に向けた人びとの営みを振り返る。

■企画展「高知の地震災害史~紡がれた記憶と記録~」
■開催期間:2025年3月20日(木・祝)~25年5月25日(日)
■観覧料:700円、高校生以下および高知県・高知市長寿手帳の所持者は無料
■会場・主催:高知県立高知城歴史博物館

高知県立高知城歴史博物館

P4 1 高知県立高知城歴史博物館(Wikipediaより) - 「城博」企画展<br>「高知の地震災害史」、<br>2025年3月~5月に
高知県立高知城歴史博物館の外観

 高知県立高知城歴史博物館(通称「城博」)は、高知市追手筋に位置する歴史博物館で2017年3月に開館している。主に高知県の歴史を展示し、とくに近世から近代にかけての歴史(幕末から明治維新、現代まで)に焦点を当てている。土佐藩主山内家伝来の資料や土佐・高知ゆかりの歴史資料、文化についての展示のほか、体験型展示や映像、メディア機器などで、大人から子どもまで楽しみながら歴史を学ぶことができる。

P4 2 絵本大変記 高知県立図書館蔵 - 「城博」企画展<br>「高知の地震災害史」、<br>2025年3月~5月に
上写真:「絵本大変記」より(高知県立図書館蔵)。企画展では南海トラフ地震を中心に過去の被害や復興に向けた人々の営みを振り返る

 ちなみに上図版カットの「絵本大変記」(作者不明「繪本大變記」)は1854年安政南海地震での被災を“洒落のめした絵本”で、作者はその序文に「地震でうちひしがれた人びとの心を勇気づけるため百人一首にならった狂歌で笑っていただく」としているという。
 左図で、坂上声々(詠み人)「あた呼ひに なるとも しらす 大汐と 麓の町へ ふれる高声」とあるが、これは『小倉百人一首』の坂上是則「朝ぼらけ ありあけの月と 見るまでに 吉野の里に ふれる白雪」をもじった戯れ歌(ざれうた)で、絵本にはこの手の絵が47枚綴じられているというのは興味深い。下記サイトですべて閲覧できるので、ぜひ。

オーテピア高知図書館:絵本大変記

 南海トラフでの地震活動の長期評価(2019年2月)によれば、マグニチュード(M)8~9クラスの大地震の今後30年以内の発生確率は、70~80%とされている。
 発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な被害をもたらす最大クラスの地震及び津波(L2)では、高知県では震度6弱~7の揺れを予測、地震発生後早いところで3分、遅くとも30分以内にすべての海岸線に津波が押し寄せ、その高さは10~20m、ところによっては30mを超えることが予測されている。

P4 3a 南海トラフ巨大地震の震度分布(高知県地域防災計画より) - 「城博」企画展<br>「高知の地震災害史」、<br>2025年3月~5月に
P4 3b 南海トラフ巨大地震の最大津波高(高知県地域防災計画より) - 「城博」企画展<br>「高知の地震災害史」、<br>2025年3月~5月に
高知県地域防災計画より、上図:南海トラフ地震の震度分布、下:最大津波高

 直近の南海トラフ地震での大被害の事例として、1946年南海地震があり、死者・行方不明者679人、負傷者1836人がある。近年(2000年以降)も日向灘、伊予灘、安芸灘などを震源とする地震で高知県内で震度5以上をたびたび観測しており、警戒を怠れない。

●寺田寅彦を高知県立文学館に訪ねる
  高知城周辺 地震防災“企画ツアー”のご提案

 高知市の高知城・城郭内に立地する「高知県立文学館」は、高知県ゆかりの文学者約40人の人となりと作品を紹介する文学館である。その館内に「寺田寅彦記念室」がある。寺田寅彦(1878年~1935年)は東京市麹町区(当時)で高知県士族(旧足軽)寺田利正・亀夫妻の長男として誕生、高知で育った。

P4 4 寺田寅彦 記念室(高知県立文学館HPより) - 「城博」企画展<br>「高知の地震災害史」、<br>2025年3月~5月に
高知市・高知城城郭内に立地する「高知県立文学館」の「寺田寅彦記念室」

 本紙は2015年08月26日付け(旧サイト)で、「防災科学”アウトリーチ”の先駆者・寺田寅彦」と題した特別企画を打ち出した。これは2015年が寺田寅彦没後80年となるのを機とする企画だった。前段の高知県立高知城歴史博物館とは徒歩圏内の高知県立文学館、市内には寺田ゆかりの見どころも多々ある。防災にかかわる人であればぜひ、2025年“城博”企画展を機に、両館を訪れてみてはいかがだろう。

防災情報新聞 2015年8月26日付け(旧サイト):防災科学アウトリーチの先駆者 寺田

〈2024. 08. 01. by Bosai Plus

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