府県単位で運用
1日前倒しも予測はハズレ―
でも、大雨災害の危険は変わらない、予測情報に警戒を!

 気象庁では、2022年6月から、線状降水帯による大雨の可能性がある程度高いと予測できた場合に、半日程度前から気象情報においてその旨を呼びかけている。
 この呼びかけについて気象庁は5月15日、これまでは全国11のブロックに分けた地域(地方単位)を対象としていたが、強化した気象庁スーパーコンピュータを用いて予報時間を10時間から18時間に延長した水平解像度2kmの局地モデル(LFM)の計算結果や、メソアンサンブル予報(MEPS=気象現象の発生を確率的に捉える手法)を用いた「危険度分布(キキクル)」も活用し、2024年5月28日9時から、府県単位を基本に、対象地域を絞り込んで呼びかけを行うとした。

P5 1 「線状降水帯情報」今年度の新たな運用 - 気象庁<br>「線状降水帯予測情報」の<br>新たな運用
線状降水帯発生情報を5月28日から府県単位で実施(実際には27日からに前倒し)
P5 2 「府県単位での呼びかけ」(全般気象情報)の発表例 - 気象庁<br>「線状降水帯予測情報」の<br>新たな運用
「府県単位での呼びかけ」(全般気象情報)の発表例

 しかし、5月28日の前日である5月27日から低気圧や前線に伴う大雨が予想されたため、急きょこの運用を1日前倒しして27日からの運用とし、この新たな運用で、鹿児島県と宮崎県、追加された奄美地方、高知県、徳島県、岐阜県、愛知県、静岡県の8つの県と地域に予測の情報が発表されたが、線状降水帯は発生しなかった。

 鹿児島県と宮崎県では12時間に降った雨の量が5月としては過去最多となったところもあったいっぽう線状降水帯は発生せず、高知県と徳島県では雨量や雨雲の広がりは基準を超えたものの、土砂災害や洪水の危険度などは基準を満たさなかった。また、岐阜県では記録的な大雨となったが、愛知県と静岡県では雨量がいずれも基準を下回った。

 気象庁は、今回、結果的に線状降水帯発生予測は外れたものの、大雨による災害の危険があったことに変わりはないとして、今後も予測の情報・呼びかけを見聞きしたら大雨に対する心構えを一段と高めて、地元気象台が段階的に発表する防災気象情報やキキクル等の情報に留意してほしいとしている。

 ちなみに気象庁では、呼びかけを一層活用してもらうための基礎調査として、本年2月に、住民と市町村を対象として、呼びかけの認知度や活用実態等を調査するアンケートを行っている。結果、呼びかけは大雨災害への危機感の高まりや市町村における防災体制の構築等に効果があったいっぽう、呼びかけを理解している住民は半数程度にとどまっていることが確認されたという。

P5 3 「呼びかけ」(全般気象情報)が行われたときの対応例 - 気象庁<br>「線状降水帯予測情報」の<br>新たな運用
「呼びかけ」(全般気象情報)への対応例

 気象庁では、夜間に線状降水帯による大雨の可能性が予想された場合などに、明るいうちから早めの避難につなげられるよう、引き続き大雨の観測・予測技術の向上及び情報の改善に努めるとし、また、呼びかけを適切に活用してもらえるよう、引き続き、周知・啓発にも取り組むとしている。

気象庁:線状降水帯による大雨の呼びかけの新たな運用について

〈2024. 06. 05. by Bosai Plus

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