東京都 高所カメラで被害情報収集
佐賀県武雄市 人流データプラットフォーム開発
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東京都「高所カメラ被害情報収集システム」稼働
日立製作所 独自AIで都の災害対応の高度化を支援
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近年、都市化や地球規模での気候変動にともない大規模な自然災害の発生は増えつつあり、その被害規模も甚大なものとなっている。大災害の発生時には、例えば建物の倒壊による生き埋めなどの被災者の救助は発災後72時間までと言われるなど、初動期の行動が緊急かつ重要であり、初動対応が被害の拡大を左右すると言える。
東京都は、都民の生命を最大限守り、災害時における救出救助活動などの戦略決定に資する情報を収集するため、発災後の職員の初動や伝達体制などを定めており、迅速な初動対応の実施を図っているが、これまで発災直後は限られた人員が手動で高所カメラを操作しながら被害を確認し、発災地点を特定するなどしていたため、都内全域の詳細な情報を継続的に収集・把握し、対応に結びつけることに時間と労力を要していた。
このような背景を受け、東京都が推進する「未来の東京version up 2022」戦略の注力案件のひとつとして、株式会社日立製作所が東京都に向けて、災害発生直後の情報空白時間における情報収集を目的とした「高所カメラ被害情報収集システム」を開発、本年3月1日から本格稼働を開始している。
同システムは、東京都内で大規模な地震などが発生した場合に、東京都の防災担当職員が利用する。具体的には、都庁などに設置されている4台の高所カメラ(今後2台を追加し、全6台で運用予定)がそれぞれの高所カメラの視認範囲を自動で撮影し、その画像をリアルタイムで解析する日立独自の高精度AIが火災・煙・建物の倒壊を自動検知するとともに、発災地点を特定し一覧や地図上で分かりやすく表示する。
一覧では、発災地点が木造家屋の密集地帯=木密地域であるかなども表示されるため、職員が対応の優先度を検討する際にも役立つ。東京都は、被害情報の収集の自動化により、刻々と変化する被害状況を迅速かつ継続的に把握可能となる。
同システムから得られた情報をもとに、発災時の限られた人的リソースをより有効に配置し、都民への情報発信や警察・消防・自衛隊など関係機関への情報提供など、状況に応じた機動的な対応が可能となるなど、都の災害対応の高度化への貢献が期待されている。
日立製作所:東京都の高所カメラ被害情報収集システムが本格稼働
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●「デジタルツイン」 防災・減災の有力ツールに
武雄市は浸水避難に活用 各地で産官学の連携開発進む
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現実の街並みをデジタル空間に再現する「デジタルツイン」という技術を巡り、近年、防災・減災分野での産官学での開発・応用が進んでいる。リアルな街並みや空間・地形と、地震や津波、洪水などに関する複数のリスクデータをAIによる分析と組み合わせ、被害の大きさや範囲などを予測、図面で視覚的に示せるのが強みで、各地・地域の特性に合わせた災害対策に必要不可欠なテクノロジーになりつつある。
株式会社フォーラムエイト(東京都港区)は、佐賀県武雄市におけるデジタルツイン上の人流データプラットフォーム開発に取り組み、浸水・避難シミュレーションを提供している。武雄市では、国内外の観光客の増加やコロナ禍以降の状況変化を踏まえ、人気観光スポットへの集中や混雑、渋滞といった課題がある。このため、回遊性を高めるコンテンツを用意し、武雄市の魅力が体験できる施策として人流データプラットフォーム開発が採択された。
今後、同サービスで得られたデータをもとに、人流の増減を考慮した水害や避難所の分析、交通や地域の課題解決などへの活用が予定されている。
防災・減災へのデジタルツインの活用は各地で産官学連携で進む。神戸市は「富岳」を活用して人の流れをシミュレーションし、帰宅困難者の安全な誘導・退避をめざす取組みを開始したほか、岩手県もAI導入で防災・減災対策を強化している。
〈2024. 04. 02. by Bosai Plus〉