“最貧国化”対策に 要15年から
タイムリミット10年を切った?
超高齢化社会と“防災不可能性都市”が続出する近未来。
巨大災害「国難」をどう乗り切るか。
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●巨大災害の被害推計と経済被害(間接被害)の軽減に向けて
脆弱性評価・防災インフラ投資の減災効果を評価・推計する
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公益社団法人土木学会の土木計画学研究委員会は2022年度から「国土強靱化定量的脆弱性評価委員会(小委員長:藤井聡・京都大学大学院教授)」を設置し、首都直下地震や三大港湾の巨大高潮、全国の河川における巨大洪水が生じた場合にどれだけの経済被害を受けるのかを推計(「脆弱性評価」)、同時に、防災インフラ投資がどれほどの減災効果を持つのかを、最新データと技術を用いて「定量的」に評価・推計する研究を進めている。
同小委員会の評価は2018年に土木学会「レジリエンス確保に関する技術検討委員会」が公表した「「国難」をもたらす巨大災害対策についての技術検討報告書」での評価技術を基本としたもの。このとき「国難」とされる巨大災害では、
①「南海トラフ地震」で、経済被害1410兆円(20年間累計被害1240兆円+内閣府推計による建物などの資産直接被害170兆円)
②「首都直下地震」で、経済被害778兆円(20年間累計被害731兆円+内閣府推計による建物などの資産直接被害47兆円)
③「東京湾巨大高潮」で経済被害110兆円(14カ月間累計被害46兆円+資産被害64兆円)
――などの被害推計値を公表。本紙はこれを「『国難⇒最貧国化』の衝撃 巨大災害の被害推計」と題してリポートした。
防災情報新聞:「国難⇒最貧国化」 巨大災害の被害推計(*旧サイト:2018. 06. 17.)
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●国難をもたらす破壊力を秘めた巨大災害
対処可能な「強靱性」(レジリエンス)に“タイムリミット”?
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2018年の「技術検討報告書」は、防災・減災対策の実行(投資)による被害軽減効果も試算し、一定規模の事業費を支出することで大幅に経済被害が軽減できるとした。これは近年国際的に推し進められる「1ドルの投資で7ドルの減災効果」を図る防災の主流化=事前防災の考え方と呼応し、今後、防災・減災に向けたインフラ投資を行うことで、経済被害は南海トラフで509兆円(事業費支出額38兆円以上)、首都直下で247兆円(同10兆円以上)縮小できると試算した。
また、首都直下地震のさらなる被害軽減には、交通インフラ投資をはじめとした「東京一極集中緩和策」の展開を提言、あわせて、リスクコミュニケーションや防災教育などの「ソフト対策」が効果的であることを指摘した。そして、巨大災害発生時までに各対策が「間に合う」ためにも、それぞれの災害発生確率を踏まえて、当面の対策は「15年程度で完了」することを求めた。
それには「長期プラン」の策定と、長期プランを着実に進めるための「制度・組織・人材育成」、長期プランを実施可能な「財源」の確保が必要としている。すなわち、「防災庁、危機管理庁」といった専門組織の創設の可能性を見据えることや、PF(I 民間資金等を活用した社会資本整備)の活用、建設国債を中心とした「公債」や特定財源債の発行などを講じることを提言した。
本紙はこのリポートのまとめとして、「超高齢化社会を迎えたわが国は、“消滅可能性都市”ならぬ“防災不可能性都市”の続出をおそれる状況でもある。技術検討報告書の危機意識――現状のままでは『国難』級の巨大被害で最貧国化は避けられない――を、公的な防災関係機関や、私たち地域防災にかかわる者はもとより、経済強国をめざす国の為政者、経済界にこそ、肝に銘じてもらいたい」とした。
当時の当面の対策を「15年程度で完了すべし」からさらに6年を経たいま、土木学会が設定した“タイムリミット”は、あと10年を切ったことになる。
土木学会「国土強靱化定量的脆弱性評価委員会」が本年度(2023年度)にとりまとめた「首都直下地震」、「巨大高潮」、「巨大洪水」の脆弱性評価結果の第1弾「報告書」(「南海トラフ地震」の脆弱性評価を除いた「中間とりまとめ」)は、3月14日に記者会見で公表された。
同「報告書(中間とりまとめ)」は、2018年の被害推計を基本としながら、最新データや最新技術を活用して改めて「首都直下地震」や「巨大高潮」、「巨大洪水」などについて再計算を行ったという。同時に、2018年当時は十分に評価していなかった「財政収支に及ぼす被害」を改めて包括的に推計したのが大きな特徴になっているという。
本紙は近刊号で改めてこれを取り上げる予定だ。
土木学会:『2023年度 国土強靱化定量的脆弱性評価・報告書』第1弾の報告書(南海トラフ地震の脆弱性評価を除いた「中間とりまとめ」) 記者発表お知らせ
〈2024. 03. 14. by Bosai Plus〉