P1a 徳島県 能登半島地震「被災者支援チーム(第17陣)」派遣 出発式の様子(徳島県HPより) 800x350 - 能登半島地震と<br>「対口(たいこう)支援」

「対口」は中国語で“ペア”の意
 被災自治体を“伴走支援”する

「対口支援方式(カウンターパート方式)」を国が制度化、
「応急対策職員派遣制度」を活かせ

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●災害復旧・復興、被災者の生活再建を一貫支援
 「対口支援(カウンターパート支援)」(=応急対策職員派遣制度)
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 令和6年能登半島地震は、まさに“高齢過疎半島大震災”の様相を呈している。半島市町の脆弱性を突いた災害で、家屋耐震化や上下水道耐震化の遅れを突き、液状化・地盤の崩壊が救援路啓開を困難にし、さらには人手・物資不足が重なった。元日の発災から2カ月を経て、やっと全国からの官民支援の救援体制が本格化しつつある。

 そんななか、被災者の避難生活、生活再建を支える“公助”として注目されるのが、他県・市町から派遣される自治体職員の支援だ。物資輸送から避難所運営、上下水道修繕・復旧まで幅広く担い、さらには被災住宅の危険度調査、罹災証明書の発行など、復旧・復興の局面が進むにつれて増える業務を粛々と遂行する。この支援の中核となるのが、被災側自治体と支援側自治体でペアを組む「対口(たいこう)支援(カウンターパート方式)」だ。

P1 徳島県 能登半島地震「被災者支援チーム(第17陣)」派遣 出発式の様子(徳島県HPより) - 能登半島地震と<br>「対口(たいこう)支援」
徳島県による能登半島地震・被災地石川県輪島市への「被災者支援チーム(第17陣)」派遣 出発式の様子(徳島県HPより)。この被災者支援チーム派遣は、「対口(たいこう)支援(カウンターパート支援)」と呼ばれるもので、徳島県は関西広域連合の調整のもと、美馬市、那賀町と連携し、同県のカウンターパート支援先である「石川県輪島市」の避難所運営や罹災証明書交付支援などに従事する「被災者支援チーム」8名を派遣

 総務省によると、2月25日までに、石川県内14市町、富山県内3市、新潟県内1市に対し、60都道府県市から「対口支援方式(カウンターパート方式)」による支援チームの派遣(避難所の運営・罹災証明書の交付等の災害対応業務を担うマンパワーの派遣)が決定され、同日(2月25日)は1089名程度が現地で活動、その他の応援職員も順次現地入りし活動開始しているという(2月26日13:30現在、警察・消防などを除く)。また、東京都は輪島市の住家被害認定調査の一部を東京都庁舎でリモートで実施しているとも。

P2 1 これまでの応援職員の派遣実績(総務省資料より) - 能登半島地震と<br>「対口(たいこう)支援」
これまでの応援(対口支援)職員の派遣実績(総務省資料より)

 「対口支援方式(カウンターパート方式)」という被災地支援の手法は、中国が1970年代末から採用(中国語で「対口」は「ペア」を意味)していたという。中国政府は災害復興にあたり、被災した市町村と被災せず経済発展を進める市や省などをペア(カウンターパート=対応する相手)に設定して支援の責任を負わせることで大きな成果を出していた。

 2008年四川大地震での中国政府の「対口支援」手法を参考に、わが国の関西広域連合が阪神・淡路大震災の際の“受援体制”の不備という反省から、東日本大震災の被災地支援にこの方式を採り入れ、岩手、宮城、福島の被災3県に連合構成自治体を割り振り、担当制にして支援したのが普及の始まり。2018年西日本豪雨からは国が主導(「応急対策職員派遣制度」として制度化)して支援が特定の自治体に偏らないように調整している。また、関西広域連合(現在2府6県4政令市で構成)も独自に「対口支援」を続けている。

P2 2a カウンターパート支援を行う自治体2月2日現在 - 能登半島地震と<br>「対口(たいこう)支援」
P2 2b カウンターパート支援を行う自治体2月2日現在 - 能登半島地震と<br>「対口(たいこう)支援」
カウンターパート支援(対口支援)を行う自治体(2月2日現在/関西広域連合資料より)

関西広域連合:令和6年能登半島地震被災地への関西広域連合の支援

 なお、国(総務省)が主導する「応急対策職員派遣制度」では、短期派遣の場合の目的を、(1)被災市区町村が行う「災害マネジメントの支援」(「総括支援チーム」の派遣)、(2)避難所の運営、罹災証明書の交付等の「災害対応業務の支援」(「対口支援チーム」の派遣)としている。
 また、「災害マネジメント総括支援員等」の登録・派遣の仕組みとして、①都道府県・指定都市等の推薦を受け、総務省・消防庁で実施する研修を受講 ⇒ 名簿に登録/②災害マネジメント総括支援員を含む「総括支援チーム」を、対口支援に先立ち都道府県・指定都市が派遣することが基本、としている。

総務省:応急対策職員派遣制度に関する要綱

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●被災自治体側の受援体制の整備を平時に
 広域大規模災害への全国的な支援体制の整備を急げ
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 令和6年能登半島地震では、甚大な被害を受けた奥能登の市町では業務量が地元の対応能力をはるかに超えている。被災しながらも業務をこなし、疲弊している職員も多いことから、負担を少しでも軽くするために、他自治体からの応援の数・期間は過去の事例を上回る支援が求められている。能登半島地震におけるこれまでの「対口支援」の具体的な事例と実績の概要は、各カウンターパートとなる自治体が公式ウェブサイトで報告しているが、とくに被災経験のある自治体の知見を生かした支援の取組みが注目されるところだ。

 阪神・淡路大震災の経験を活かそうと、神戸市はカウンターパートの珠洲市を中心に、延べ700人以上を送り込んでいる。阪神大震災を知る元職員も動員して被災者の困りごとの把握と課題解決を図り、避難所での健康管理や支援情報のネット発信を手がける。
 宮城県は能登町の支援にあたり、東日本大震災の津波被害からの復旧で注目された災害廃棄物の「東松島方式」の活用(東松島市の手法にならって分別、資源の再利用を進めて処理費も抑える策)に向けて支援している。
 熊本県は、熊本地震や豪雨災害で人口の流出に直面したことから、木造の仮設住宅を温かみを感じながら恒久的に暮らせる場にする「熊本モデル」を石川県に提案して採用され、その整備が待ち望まれている。

P2 3 関西広域連合の被災地支援活動(同HPより) - 能登半島地震と<br>「対口(たいこう)支援」
関西広域連合の被災地支援活動(同HPより)

 今後の「対口支援」のあり方については、「被災自治体側の受援体制の整備が整っておらず、支援事務を本格始動するまでに調整に時間を要することから、平時から「対口支援」(「応急対策職員派遣制度」)への基本的な理解も含めた受援計画の早急な策定が全国的に必要との声があがっている。

 こうした「対口支援」活動は、被災地の復興を支える重要な取組みではあるが、南海トラフ巨大地震のような広域大規模災害への全国的な支援体制の整備も急がれるところだ。

首相官邸:令和6年能登半島地震 被災者支援情報

〈2024. 03. 01. by Bosai Plus

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