伊香保温泉で「防災エキスポ」――分散避難の「宿泊施設版」 要援護者向けに温泉旅館を借り上げ
近年、台風などによる風水害のように事前に災害リスクがわかる場合、「分散避難」が呼びかけられるようになってきた。これまでは避難と言えば市区町村が定める「指定避難所」への避難だったが、災害報道などでの指定避難所の混雑状況や悪環境への懸念もあって、自宅の被災リスクが少ない場合は「在宅避難」、被災リスクがある場合は「親戚宅」や「知人宅」、さらには「遠方」への避難などが選択肢に入るようになった。
さらには新型コロナウイルス対策の一環で、国が災害時の避難所として民間宿泊施設を活用するため、日本ホテル協会と日本旅館協会に受け入れ可能な施設のリストの作成、共有を要請。併せて都道府県などにも宿泊施設の利用へ準備をするよう通知があり、より多くの避難所を設置することなども自治体に求めている。
このような動きのなか、とくに災害時要配慮者の事前避難に有効と思われる民間宿泊施設の活用の一環として、「要配慮者と考える〜温泉防災EXPO in 伊香保」が去る9月27日、伊香保温泉で知られる群馬県渋川市伊香保町で開催された。主催は温泉防災EXPOコンソーシアムで、構成団体は渋川伊香保温泉観光協会、伊香保温泉旅館協同組合、日本環境保健機構、後援は群馬県、渋川市ほか同地方の報道メディアなど。
宿泊施設をとくに要援護者の有効な避難先の一つとして活用することについて日本環境保健機構は2020年9月、誰もが福祉避難所として開設・運営できるようなスキルを習得できることを目的として「借り上げ福祉避難所(宿泊施設避難所)推進プログラム」を開設し、その初の研修を行った。このとき群馬県伊香保温泉の「いかほ秀水園」が推進プログラム第1号となっている。
「いかほ秀水園」は2021年9月に「みんなで考えるミニ防災EXPO」を開き、今回のイベント開催にも力を注いでいる。同旅館は「私たちは地域と共に存在し、地域に活かされて運営しております。“その時”に地域に恩返しがしたい。私たちの保有する「場所」がひとときでも皆さんの安心できる「居場所」になれたらと思います」としている。
〈2023. 10. 16. by Bosai Plus〉