タリバン暫定政権下での被災地支援、
救助・復旧・復興は難航か――問われる“人道的支援”
アフガニスタン西部のヘラート州で10月7日午前11時ごろ、マグニチュード(M)6.3、震源の深さは約10kmの地震(米国地質研究所:USGS 速報値)が発生した。イスラム主義勢力タリバンの暫定政権下にある政府発表によると、10月9日までに死者2445人、負傷者9240人、損壊家屋2000棟という大きな被害が生じている。震源は西部の主要都市ヘラートから北西に約35km離れた地域で、イラン国境に近い。余震(後続地震)も活発で、被害は拡大の様相を見せている。
ユニセフ(UNICEF:国連児童基金)の直近の発表によれば、犠牲者のうち90%以上が女性や子どもとされる。男性は仕事に出て家を空けていて、女性・子どもが家事作業のなかで耐震不足家屋(多くは泥や岩などでつくられた家屋)がつぶれて犠牲になったと推定されている。これに加え、今回の地震は、長年にわたる紛争や干ばつ等により深刻な人道的ニーズがあるなかで発生し、国際的な救助・救援、被災地復旧・復興に向けた支援活動の困難さも指摘されている。昨年末以降はタリバンがNGOや国連で働く現地の女性の出勤を禁じており、救助・支援活動に支障が出るおそれもあるという。
日本政府は10月10日、アフガニスタン西部地震被害に対し、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)からの要請を受け、被災者を支援すべく緊急援助を行うこととし、国際協力機構(JICA)を通じ、緊急援助物資(テント、毛布など)を供与することを決定している。
アフガニスタンでは昨年(2022年)6月22日午前1時半頃(現地時間)にも、同東部ホースト州でM5・9の地震があり、周辺地域で1千人以上が犠牲になっている。アラビアプレート、インドプレート、ユーラシアプレートという広範で複雑な地殻(プレート)衝突ゾーン内に位置していることから、アフガニスタンは地震多発国として知られ、歴史的にも大地震が頻繁に起こっている。1991年にヒンドゥークシュ山脈でM6.9が起こったのをはじめ、今回の地震まで直近約30年間で被害地震が17件(最大地震規模は2015年10月のヒンドゥークシュ山脈でのM7.5)起こり、ほぼ2年に1回の割合となっている。
そのような災害環境でありながら家屋・建物の耐震化や災害対策が遅れている背景には、同国経済規模が世界的に最下位レベルにあることや、近年はテロリズム、貧困、子どもの栄養失調、汚職の蔓延のほか、政権が国際社会で孤立化していることがある。
●トルコ・シリア地震、モロッコ中部地震、リビア洪水、アフガン地震
自然災害の脅威に、驚愕する世界
前段でアフガニスタンで直近30年間に起こった地震被害件数に触れたが、わが国で、この期間、気象庁が名称を定めた地震(気象庁は、顕著な災害を起こした自然現象について名称を定めている)は、地震現象だけで1993年釧路沖地震から2018年北海道胆振東部地震までの15件となり、ほぼ2年に1回となる。しかもこれは、気象庁が名称を定めた気象・地震・火山現象のうち、地震についてのみであり、気象現象、火山現象を加えると、その数はまさに世界を凌駕する“災害大国”であることを否定できない。
本年は、2月6日にトルコ・シリア北部地震が発生、両国の死者数は計5万6000人以上(2023年3月20日現在)ともされ、救援・復旧・復興活動はいまも続いている。そして9月8日夜には北アフリカのモロッコ中部で大地震、死者は約3000人を超えたとされる。
いっぽう、北アフリカ・リビア東部で9月10日夜から11日にかけて発生した洪水で、確認された死者は13日までに約9000人に達したという。リビアは内紛で1国2政府状態にあり、10月に入っても死者数・行方不明者数について錯綜しているという。
モロッコ地震に始まり、9月のほぼ同時期に北アフリカで発生した大地震と大洪水、そして10月のアフガニスタン地震――自然災害の脅威に、世界は驚愕している。
〈2023. 10. 12. by Bosai Plus〉