目標に迫るも地域差も 冷暖房も調査項目に追加
文部科学省は去る7月26日、避難所となる全国の公立学校施設の防災機能に関する調査の結果を公表した。避難所に指定されている公立学校2万9000校あまりを対象に、生命確保期(避難直後から数日程度)における避難所に必要な防災機能の保有状況を把握することが目的で、2022年12月時点での調査としている。
調査結果によると、避難所となる公立学校施設全体での防災機能の確保率は、飲料水が80.8%、非常用発電機などが73.2%、断水時のトイレが73.6%となっている。これらの防災機能は、東日本大震災や熊本地震など近年の災害から得られた教訓や緊急提言を踏まえて、文部科学省が推奨するものである。ただ、全国平均では目標値である80%に達しておらず、地域や施設によっては依然として大きな差がある。
調査項目は大きく、「備蓄倉庫等」、「非常用発電機等」、「飲料水」、「冷房機器」、「暖房機器」、「ガス設備等」、「通信設備」、「断水時のトイレ対策」に分けられている。
以下、その概要を紹介する。
○ 非常用発電機などの確保については、都道府県別で確保率が高いのが鳥取県(100%)、神奈川県(97.0%)、東京都(94.5%)、宮城県(94.2%)など、低いのが島根県(31.0%)、鹿児島県(33.8%)、香川県(34.7%)、長崎県(37.0%)、沖縄県(37.8%)などとなっている。
施設別では小中学校が74.0%、高等学校64.1%、特別支援学校85.4%となる。
○ 飲料水の確保については、都道府県別では鳥取県、山口県が100%で最も高く、次いで東京都(99.1%)、神奈川県(98.0%)、埼玉県(96.9%)など首都圏が高くなっている。いっぽう、沖縄県(47.2%)、長崎県(47.7%)、佐賀県(49.8%)など九州地方、西日本や内陸部の地域の低さが目立っている。
施設別では小中学校が82.1%、高等学校67.6%、特別支援学校79.9%となる。
○ 断水時のトイレ対策については、都道府県別では鳥取県(100.0%)、神奈川県(99.6%)、東京都(95.2%)、山口県(95.4%)などが高く、低いのは、秋田県(29.3%)、岩手県(33.3%)、沖縄県(38.7%)などとなる。
施設別では小中学校が76.2%、高等学校51.4%、特別支援学校64.4%となる。
ちなみに、猛暑が続くこの夏だが、冷房・暖房機器の確保について今回初めて調査していて、冷房機器については全体で64.9%、暖房機器は全体で79.3%の備えとなっている。冷房・暖房とも、南北に長い日本列島であれば地域差が当然あり得る。
都道府県別に見ると、冷房の確保は、鳥取県100%、東京都で93.6%と高いところがあるが、基本的にはあまり進んでいない。暖房については、鳥取県が100%であるほか、北海道・東北地方で80〜90%台が多くなっている。
文部科学省は、避難所となる公立学校施設の防災機能の保有率を向上させるために、以下のような対策を講じるとしている。
・ 避難所となる公立学校施設の防災機能調査を毎年実施し、保有状況や課題を把握
・ 防災対策事業の予算を拡充、飲料水や非常用発電機などの防災機能の整備を支援
・ 避難所となる公立学校施設の防災機能に関する事例集やガイドラインを作成し、自治体や学校に周知・啓発
・ 災害時における避難所運営に関する研修や訓練を実施し、職員や地域住民の防災意識や能力を高める
「避難所となる公立学校施設の防災機能は、児童生徒や職員だけでなく、地域住民にとっても重要なライフラインである」であることから、文部科学省は「今後も引き続き、関係者と連携しながら、避難所としての防災機能の強化に努めていく」としている。
文部科学省:避難所となる公立学校施設の防災機能に関する調査の結果(2022年12月1日時点)
〈2023. 08. 01. by Bosai Plus〉