P4 1 防災科研「防災クロスビュー:令和5年梅雨前線による大雨及び台風2号~雨量のまれさ(6月1~3日)」より - 異常気象リスクマップ

「100年に一度より“まれ”」 その地域にとって想定外の大雨

「こんな大雨、経験したことがない」地域では、
災害リスクがより大きくなるという、“指標”「異常気象リスクマップ」

 去る6月2日深夜から3日にかけて、和歌山県北部の一部や愛知県東部、静岡県西部・東部で、また3日は茨城県南部で、100年に一度より“まれ”という大雨が降った。静岡県で降った雨は24時間雨量が500mmに達した地域もあり、100年に一度より頻度が低い「まれな雨」との分析もあった。停滞する梅雨前線に向かって台風2号からの湿った空気が流れ込み、「線状降水帯」が相次いで発生したためだ。この記録的な大雨で、静岡県浜松市と磐田市で2人が犠牲(災害関連死)と認定された。

 「100年に一度」とはどういう雨だろうか。国立研究開発法人防災科学技術研究所は、「防災クロスレビュー」で、「大雨のまれさ」を分析している。観測された降水量が平均してどのくらいの期間に一度起こるかを、「2〜5年に一度」、「5〜10年に一度」、「10〜30年に一度」、「30〜50年に一度」、「50〜100年に一度」、「100年以上に一度」の6段階で分析したもので、静岡県西部で3日午前3時までの24時間に降った雨は、その地域では、「100年以上に一度」と分析した。つまり、「100年に一度」よりも頻度がまれな雨ということになる(左図参照)。

P4 1 防災科研「防災クロスビュー:令和5年梅雨前線による大雨及び台風2号~雨量のまれさ(6月1~3日)」より - 異常気象リスクマップ
防災科研「防災クロスビュー:令和5年梅雨前線による大雨及び台風2号~雨量のまれさ(6月1~3日)」より

防災科研:「大雨の稀さ情報」

 「大雨のまれさ」とは、再現期間という表現を使って観測された降水量が平均して何年に一度くらいの確率で起こるかを表すもの。再現期間が長いということは、その地域にとって滅多にないまれな規模の大雨であることを意味する。このまれさは、過去約30年分における解析雨量に基づき推定される。
 通常、インフラの設計には、これまでを大きく上回るまれな大雨は想定されていないケースが多く、その施設の対応能力を超えてしまう可能性がある。いままであまり大雨が降っていない地域は、頻繁に大雨が降るような地域と比較すると、大雨に対する自然・社会環境の脆弱性があると考えられ、災害が起こる恐れ(危険度)の度合いは、雨量そのものよりもその地域にとってどれくらいまれな大雨であるかのほうがより重要な情報になると考えられるのだ。

P4 2 日降水量100mm以上(左)、200mm以上(右)の年間日数の長期変化傾向 - 異常気象リスクマップ
気象庁資料より、日降水量1 0 0 m m 以上(左)、200mm以上(右)の年間日数の長期変化傾向
P4 3 日降水量100mm以上の月別日数の長期変化傾向 - 異常気象リスクマップ
気象庁資料より、日降水量100mm以上の月別日数の長期変化傾向

 いっぽう、気象庁はそのホームページに、「異常気象リスクマップ〜100年に1回の大雨は何mmくらい?」のタイトルで解説ページを設けている。「異常気象リスクマップ」は、大雨や高温の発生頻度などに関する詳細な情報が求められていることから、気象庁が2006年度から提供を開始したもので、全国各地における極端な現象の発生頻度や長期変化傾向に関する情報をわかりやすい図表形式で示したものだ。

気象庁:異常気象リスクマップ「 100年に1回の大雨」は何mmくらい?

〈2023. 06. 20. by Bosai Plus

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