県職員の大震災経験や教訓を次代に継承
南海トラフ想定エリアなど、
次の大規模災害に見舞われるかもしれない広域自治体に
『伝わる』ことが狙い
宮城県は、2019年度(令和元年度)から22年度にかけて実施した「東日本大震災復興検証事業」において、震災の復旧・復興事業に携わった職員及び関係者へのインタビュー調査を行うとともに、テーマごとにとりまとめた冊子『みやぎの3.11〜「現場編」・「回顧編」』を先ごろ完成させ、去る4月21日に公開した。
東日本大震災からの復旧・復興過程で得られた同県職員などの経験や教訓を次代に継承するとともに、今後わが国で発生が予想される様々な災害対応等において、復興事業・復興支援において参考になる内容が多く含まれていることから、広く活用してもらうことを目的としている。冊子は、次の2部に分かれている。
(1) みやぎの3.11「 現場編」
・ 4年間で約600人の職員・関係者に実施したインタビューを、10分野62テーマに分類・構成し、ドキュメンタリー形式にまとめたもの
・A4フルカラー、512ページ
(2) みやぎの3.11「 回顧編」
・ 発災および復旧対応時の幹部職員12人に実施したインタビューを聞き書きによりまとめたもの
・ A5モノクロ、208ページ
配布先は県庁内各課室、県内自治体、各都道府県、国の関係省庁、図書館等の公共施設、県内学校、関係団体など約300箇所に配布予定で、同県ウェブサイトのポータルサイト「東日本大震災 宮城の災害対応記録」を作成、「みやぎの3.11 『現場編』」についても掲載(PDFで閲覧可)。あわせて、インタビュー時に「後輩へのメッセージ」として収録した映像を、テーマごとにとりまとめたもの(1テーマ当たり約3分)も掲載する。
●10分野62テーマに分かれた「現場編」
震災当時から現在までの復興の歴史や実態を知る
「現場編」は、震災当時から現在までの復興の歴史や実態を、10分野62テーマに分けて紹介している。各テーマでは、現場で活動した職員や関係者のインタビューを中心に、事業の概要や経緯、困難や工夫、感想や反省などを紹介している。
●5分野18テーマに分かれた「回顧編」
復興事業の成果や課題、今後の展望を知る
「回顧編」は、復興事業の成果や課題、今後の展望を、5分野18テーマに分けて紹介。各テーマでは、復興事業に関わった職員や関係者のインタビューを中心に、事業の目的や背景、効果や評価、課題や提言などを紹介している。
「みやぎの3.11」制作監修を担当した佐藤翔輔・東北大学災害科学国際研究所准教授は、「東日本大震災の発災時に、兵庫県で阪神・淡路大震災に関する記録誌として作成・発行された『翔べフェニックス』と『伝える』が、宮城県庁職員にとって「バイブル」、「拠り所」になったことから、宮城県でも同様の資料を残すべき、と編纂された」とする。
「行政からの記録誌は事業記録になっているものがほとんどですが、対応のきっかけ、経緯、実現したこと・しなかったことなどが証言をベースに、かつ長期間にわたって記録されているものは大変めずらしい。南海トラフ想定エリアなど、次の大規模災害に見舞われるかもしれない広域自治体に『伝わる』ことが狙いです」と語っている。
〈2023. 05. 18. by Bosai Plus〉