地球温暖化で 将来の外水氾濫リスクも保険料も「増える」
損害保険料率算出機構の
「気候変動に関する影響分析およびリスク評価への反映」への取組み
損害保険料率算出機構が広報資料『地球温暖化で変わる洪水(外水氾濫)リスク』を同機構HPに公表した。同資料は、これまで発信した「身近なものとして考えてみよう 気候変動」(2021年度)、「地球温暖化で変わる台風リスク」(22年度)の続編・第3弾だ。
損害保険料率算出機構:身近なものとして考えてみよう 気候変動
火災保険は火災による損害だけではなく自然災害による損害も補償するが、火災保険で補償されるリスクのうち、洪水(外水氾濫)のリスクが地球温暖化によってどのように変化するのか、リスク評価の手法とともにその分析内容を紹介している。
その分析結果によると、地球温暖化が進んだ場合、将来の外水氾濫リスクは、同機構がシミュレーションを実施する5河川(利根川、荒川、鶴見川、庄内川、淀川)で豪雨時の降水量が増え、河川を流れる水量が増え、堤防決壊時の浸水域と浸水深のいずれも増える。また、上記以外の1級河川を国土交通省のシミュレーション結果を用いて分析しても、多くの河川で極端な豪雨が増え、治水に対する安全度が低下する。
その結果、損害の増加が見込まれ、火災保険は将来の保険支払いに必要となる金額を見込んだうえで、それに見合った保険料を設定することが重要としている。
損害保険料率算出機構:地球温暖化で変わる洪水(外水氾濫)リスク
いっぽう、先ごろ公表された気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第6次評価報告書(AR6)統合報告書の「政策決定者向け要約(SPM)」は、気候変動への対処に残された時間は限られているとした(本紙2023年4月1日号既報)ものの、気候目標達成のための実行可能かつ効果的な手段=テクノロジーやノウハウはすでに存在していると明言もしている。その手段とは、「迅速、劇的かつ持続可能な排出量の削減」に尽きると。
報告書によれば、地球温暖化を1.5℃に抑えるには、2030年までに世界の年間温室効果ガス排出量をほぼ半減させる必要があるが、ただちに下記の4つの行動を起こせば、その成果は、世界の気温変化の傾向に今後20年以内に反映されるという。
- 風力発電設備と太陽光発電設備を大量に設置する
- 化石燃料生産や廃棄物によるメタン排出量を削減する
- 炭素を閉じ込める自然生態系を保護する
- 車両、家庭、産業でエネルギーを効率的に使用する 地球を“正しい軌道”に戻すために、これらを今日始められるかどうかだ……
〈2023. 04. 15. by Bosai Plus〉