P4 3 東京都多摩市の「避難所混雑状況確認システム」(「VACAN Maps」より) 640x350 - 《 2023特別構成 第2弾 防災DX-3 》<br>人の命を守るために

国民レベル=「自助・共助」の「防災DX」

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●『防災×テクノロジー』タスクフォースの問題意識
 避難行動などをサポートする仕組みの社会実装
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 改めて、防災の「DX」とはなにか――近年、防災情報システムやアプリを活用した防災ソリューションなど「防災のデジタル化・ITC化」は進んでいるが、それらはあくまで「DX」のための手段であり、「DX」がめざすところは「防災・減災=災害から人の命を守り、財産を保全する」ことにあるはずだ。
 2020年の内閣府における「『防災×テクノロジー』タスクフォースのとりまとめについて」によれば、大規模災害時には、膨大な災害対応業務が発生するが、自治体等の人的資源には限界があり、迅速・的確な対応のためには、業務の効率化、省力化、それらに資する標準化が重要としている。その災害対応業務としては、「災害リスク、避難情報の提供」、「被害状況の把握」、「被災者支援制度のデジタル化」、「共助による避難施設の確保」、「通信の冗長化」(冗長化=システムに余裕があり安定した状態のこと。英語ではredundancy)があげられ、それぞれ将来像が述べられている。

P4 1 『防災×テクノロジー』タスクフォースのとりまとめ - 《 2023特別構成 第2弾 防災DX-3 》<br>人の命を守るために
内閣府、内閣官房の防災対策、科学技術・イノベーション政策、IT戦略、宇宙政策等を担当する部局が連携、防災対策におけるテクノロジーの活用を進めるための施策を検討するタスクフォースにより、2020年にとりまとめられたもの

▶災害リスク、避難情報の提供
 AIを活用した防災チャットボットによりスマートフォンを通じて
 ・ 一人一人の状況を考慮して、適切な避難行動を促す情報を提供
 ・ 住民等から現地の災害情報を収集
▶被害状況の把握
 衛星により広域的な被災画像を迅速に収集・共有
▶被災者支援制度のデジタル化
 各種被災者支援制度を簡易に検索できるデータベースの構築
 各種被災者支援制度(罹災証明書、被災者台帳等)の手続きのデジタル化
▶共助による避難施設の確保
 シェアリングエコノミー活用で避難場所、食料等の災害支援サービスの提供
▶通信の冗長化
 準天頂衛星の通信機能を活用した安否確認や緊急情報の発信
 基地局を搭載して高高度を飛ぶ無人航空機(HAPS)による通信ネットワークの提供

 「とりまとめ」では、それぞれの将来像の実現に向けて、今後自治体の現場での活用を促進するため、関係部局が連携して各取組みの推進を図る、としている。

内閣府(防災担当):「『防災×テクノロジー』タスクフォースのとりまとめについて」

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●防災DX―「自助・共助」のDX
 適切な避難行動などをサポートする仕組みの社会実装
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 これまで見てきた「防災DX」は国・自治体レベル=「公助」としての展望だが、前段の「災害リスク、避難情報の提供」は、国民レベル=「自助・共助」の「防災DX」として注目されるところだ。とくに、AIを活用した防災チャットボットが実効性のある対策として注目されるが、AI防災協議会が、国民一人ひとりの避難と災害対応機関の意思決定を支援する防災チャットボット『SOCDA』(ソクダ)の開発、社会実装に取り組んでいる。

P4 2 「防災チャットボット『SOCDA(ソクダ)』」の避難支援機能のイメージ図説より - 《 2023特別構成 第2弾 防災DX-3 》<br>人の命を守るために
「防災チャットボット『SOCDA(ソクダ)』」の避難支援機能のイメージ図説より

 AI防災協議会は2019年6月に研究機関、有識者、自治体が参加して設立された。2021年2月、同協議会が『SOCDA』を全国共通の基盤として活用するためのインターフェイスとして、コミュニケーションアプリ「LINE」のインフラ力を活かし、LINE公式アカウント「AI防災支援システム」を開設すると発表。
 これにより住民と災害対応を担う行政機関の間で情報の“収集”と“提供”のやりとりが可能になるとし、災害時に適切な避難行動などをサポートする仕組みの全国レベルでの社会実装をめざす。

AI防災協議会:SOCDA活用のためのLINE公式アカウント「AI防災支援システム」

 なお、「『防災×テクノロジー』タスクフォースのとりまとめについて」(2020年6月)の段階ですでに新型コロナ感染症(COVID-19)は世界的に感染拡大していたが、「共助による避難施設の確保」においてではとくに触れられていない。しかし、変異株・インフルエンザも含めて感染まん延が3年以上続くいまでは、感染症対策を考慮した避難所運営も必須となっており、防災科研ほか、感染症蔓延下での災害時避難対策の促進に向けて関連した公開情報を集約して発信を続ける研究機関は各種ある。

 避難所運営支援システムの「DX」も進んでいる。ITC(情報通信技術)を活用した避難所の混雑状況を知らせる各種サービスや、モビリティ(移動性)を活かしたコンテナ型宿泊施設や診療所(簡易ホテル、医療関連の簡易診療所、休息所など)の検索・ガイドなど、平時利用も含めてイノベーションが起こっている観がある。

P4 3 東京都多摩市の「避難所混雑状況確認システム」(「VACAN Maps」より) - 《 2023特別構成 第2弾 防災DX-3 》<br>人の命を守るために
東京都多摩市がニューノーマルとしての「分散避難」をめざして導入したVACANの「避難所混雑状況確認システム」(「VACANMaps」より)

株式会社VACAN:避難所の混雑状況配信

〈2023. 01. 18. by Bosai Plus

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